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第22回 | フォルクスワーゲンの最新車デザイン・性能情報をお届け

こんなビートルは初めてだ──メミンガーRoadster 2.7

エディトゥール世代が少年だったころ、もっとも身近な輸入車で、アメリカのサブカルチャーを象徴するような存在だったのが「ビートル」だ。正式名称はフォルクスワーゲン『タイプ1』。累計生産台数の世界記録を持つ伝説的なコンパクトカーである。先日、この「ビートル」をフルレストアしたクールなカスタムカーが発表された。その名をメミンガー『Roadster 2.7』という。

70年代に日本でブームを起こした「ビートル」をベースにしたカスタムモデル

40〜50代の男性には、「ビートル」と聞くと、現行型の『ザ・ビートル』ではなく、いまだに1938年に登場した『タイプ1』を思い浮かべる人が多いのではないか。それは、1960年代から1970年代にかけて、もっとも日本人に愛された輸入車が初代「ビートル」だったからだ。

丸みを帯びたシェイプはかわいらしく、この個性的なデザインが「ビートル(=カブトムシ)」という愛称の由来となった。最大の特徴は、扱いやすい操作性と、頑丈かつ高い整備性を持っていたこと。そのため、「ビートル」は世界中で広く受け入れられ、1970年代には日本でもブームを巻き起こしている。

「ビートル」は大きなモデルチェンジがなかったので、1970年代当時、状態がよくて安価な中古車が大量に市場に出回った。同じ時期には雑誌『ポパイ』などを通じてアメリカのサーフカルチャーが日本で流行。そうしたことから、西海岸に憧れた日本の若者たちがこぞって「ビートル」に乗ったのだ。

とはいえ、『タイプ1』はけっしてパワフルなクルマではなく、もちろん速くもない。若者のニーズが高いエッジの効いたデザインを持っていたわけでもなかった。あくまでも、その本質は大衆向けのコンパクトカーだ。

この日本人になじみの深い大衆車をベースに、フルレストアを施したカスタムモデルがメミンガー『Roadster 2.7(ロードスター 2.7)』である。メミンガーは『タイプ1』のカスタムで知られるドイツのチューニングメーカーだ。

『ロードスター 2.7』は、初代「ビートル」の印象を巧みに、そして存分に生かした大胆なシルエットを持ち、「ビートル」のカスタムモデルと呼ぶことを躊躇してしまうほどのインパクトを放つ。その姿を目にした瞬間、これだけでひとつのニュースになると感じたくらいだ。

「ビートル」よりもロー&ロングに! 内装には70年代風タータンチェック

『タイプ1』との外観上のもっとも大きな違いは、張り出した前後のフェンダーや特徴的なリブの入ったフロントリッドなどを受け継ぎつつ、ロー&ロングの2シーターロードスターとなったことだろう。

18インチホイールを履き、レイザーバックとも呼びたくなるようなロールケージや低くされたフロントウインドウなども相まって、まるで新たなジャンルを開拓したかのような新鮮さがある。カスタムカーには、どこか挑戦的で攻撃的な印象を受けることもあるが、この『ロードスター 2.7』は、そうした性格がダークグレーのカラーと大きな曲線のなかに品良く収められた。設計者の意欲とセンスに感心するばかりだ。

ボディサイズは全長4037×全幅1725×全高1245mm。シャシーには鋼管フレームが組まれ、サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式、リアはトレーリングアーム式だ。タイヤはフロントが225/45R18、リアに255/40R18サイズを装着する。

オープン化されたことによりインテリアもエクステリアの一部となったが、室内はいたって簡素。唯一目を引くのはタータンチェックのシートで、これは初代『ゴルフGTI』に採用されるなど、VWではGTIモデルでおなじみの柄だ。

しかし、じつは1970年代初めのファッション界ではタータンチェックが流行し、同時期に作られたクルマにこの柄がよく採用されていたのである。

アウトバーンを200km/h超で走るのに十分な性能を持つ空冷ボクサーエンジン

中身もファンの期待に応えてくれるものだ。エンジンのベースとなったのはVW『タイプ4』やポルシェ『914』に搭載されていた空冷水平対向4気筒エンジン。排気量が2717ccに拡大されているが、いたずらにパワフルなエンジンを押し込むのではなく、空冷のボクサーエンジンを選択した点はさすが「ビートル」の専門チューナーである。

ミッドシップとなった点もトピックだろう。『タイプ1』はリアアクスルより後方に大きく張り出したリアエンジンで、1998年に復活した『ニュービートル』や現行型の『ザ・ビートル』はフロントエンジン。しかし、『ロードスター 2.7』ではシート後部にエンジンを置くミッドシップが採用された。

このため、全幅は『タイプ1』よりワイドになりながら、全長は短くなった。ミッドシップエンジンは、ドライビングを愉しむうえで格段の向上があると想像できるし、設計上のコンセプトにおいてスポーツ性が重要であったことを教えてくれる。

最高出力は210ps、最大トルクは247Nm。このスペックは「ビートル」のオーナーに向けて単体で販売しているエンジンと同じといわれるが、アウトバーンを走行するのに十分なパフォーマンスを見せるはずだ(ただし、幌の心配は別に考えたほうがよさそうだが…)。組み合わされるトランスミッションが5速MTのみという設定もファンには違和感がない。

『ロードスター 2.7』はワンオフ、メミンガーと直接交渉すれば購入も可能!?

このクルマで街中を流せば、それが世界のどこであろうと、必ず人々の注目を浴び、二度見される存在になるだろう。なにしろ記憶のなかにあった「小さなおじさん」が、目を見張るような「美しさと強靭さを兼ね備えた青年」に生まれ変わってしまったのだから。

価格と販売時期は公表されていない。このダークグレーの『ロードスター 2.7』は、おそらく一台限りのワンオフモデルだ。もし新たな一台がほしければ、メミンガーと直接交渉して金額の折り合いさえつけば購入は可能というのが大方の見方である。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Memminger
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Memminger Roadster 2.7 オフィシャル動画
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第29回 | フォルクスワーゲンの最新車デザイン・性能情報をお届け

ゴルフ誕生45周年──史上もっとも成功した欧州車の秘話

フォルクスワーゲンは、アウディやポルシェなどを含めたグループ全体の販売台数がおよそ1083万台に上る世界最大の自動車メーカーだ。「Volkswagen」という社名は、ドイツ語で「国民車」を意味する。その業績を支えているのは、「世界一の小型車」といってもいい『ゴルフ』。デザイン、エンジン、走り、あらゆる部分で完成度が高く、ヨーロッパのCセグメントの頂点に君臨し続けている。その『ゴルフ』が誕生45周年を迎えた。

もっとも成功した欧州車。世界中で誰かが40秒に1台、『ゴルフ』を購入している!

初代『ゴルフ』がドイツ・ヴォルフスブルク工場で量産を開始したのは、1974年3月のことだ。以来、今日までに販売した台数は3500万台以上。この数字を計算すると、世界中で誰かが40秒に一台、『ゴルフ』を購入していることになるという。ゆえに、「史上もっとも成功した欧州車」とされている。日本国内でも依然、高い人気を集めている。

メイン写真が初代の『ゴルフI』。50代以上には、いまだにこの初代モデルのイメージが強い人もいるのではないか。下の写真は1991年に発表された3代目『ゴルフIII』だ。

ナチス政権による「国民車計画」で生まれた『ビートル』の後継モデルとして誕生

フォルクスワーゲンは、戦前にナチス政権による事実上の国策企業として設立された自動車メーカーだ。アドルフ・ヒトラーは「国民車(フォルクスワーゲン)」計画を提唱し、それに従い、かの有名なフェルディナント・ポルシェが先進的なメカニズムをもつ流線型の小型車を開発した。そのクルマがのちの『タイプ1』、つまり『ビートル』である。

『ゴルフ』は、この『ビートル』の後継として開発されたハッチバック型のコンパクトカーだ。デザインを担当したのは、あのジョルジェット・ジウジアーロ。しかし、当時は『ゴルフ』が生産台数で『ビートル』を凌ぐほどの人気モデルになるとは、誰も考えていなかったに違いない。下の写真は、1997年に発表された4代目、『ゴルフIV』だ。

フォルクスワーゲンが明かしたビッグニュース。今年10月に新型『ゴルフ』が登場

フォルクスワーゲンは、5月にドイツで開催した年次株主総会において、ビッグニュースを明らかにした。今年10月に、8代目となる新型『ゴルフ』を初公開すると発表したのだ。同社が公開したティザースケッチを見ると、外観上は現行モデルと大きく変わっていないが、次期モデルは新開発の48Vマイルドハイブリッドシステムが搭載されるという。

『ゴルフ』のキャッチフレーズは、「『ゴルフ』を超えるのは、いつも『ゴルフ』」。モデルチェンジをしても、きっと『ゴルフ』は「世界一の小型車」であり続けることだろう。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Volkswagen AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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