【広州=川上尚志】中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)に対する米国の制裁を受け、電気情報通信分野の主要な学会である米電気電子学会(IEEE)は29日、「米国の規定や法律を順守する必要がある」との声明を出し、同社の活動を一部制限すると明らかにした。会員の間では、抗議のためにIEEEの役職を辞退すると表明する中国の大学教授もおり、波紋が今後広がる可能性がある。
IEEEは声明で、ファーウェイと同社社員に対し関係者向けの一部イベントに参加したり、一部出版物の編集に関わったりすることを制限すると明らかにした。会員資格は継続し、IEEEのデータ利用や論文の発表は引き続き可能という。
IEEEの声明に先立ち、会員である北京大学の張海霞教授は29日にコメントを公表し、ファーウェイが出版物の編集から外されることを「受け入れることはできない」と抗議した。張氏はIEEE内部の委員会の役職を辞退するという。
ファーウェイは400超の業界団体に加盟している。同社は26日付の声明で「一部の団体が政治的な圧力を受けて当社との協力の一部を留保したが、日々の業務運営に影響はない」としている。
一方、通信分野の規格団体では「ファーウェイ外し」を取りやめる動きが出ている。半導体分野で米国の規格策定を担う半導体技術協会(JEDEC)、メモリーカードの規格団体であるSDアソシエーションは30日までに、一時停止していたファーウェイの会員資格を復活させた。米メディアによると、無線LANの業界団体であるWi-Fiアライアンスも同社の活動の制限をやめた。
各団体は米商務省が16日にファーウェイに対する事実上の輸出禁止措置を発動させた後、同社の会員資格を停止したり、活動を制限したりしていた。団体内での活動は規制の対象外であると判断したとみられる。
米商務省による禁輸措置は、米企業がファーウェイに対し物品やソフトウエア、生産・開発に必要な技術を輸出することを禁じた。米国外の企業による取引も一部は規制の対象になる。規格団体や学会への参加は直接禁じられていないが、規制対象の線引きが曖昧で、ファーウェイと関係のある企業や関連団体は精査を進めている。