ミッドウェー海戦研究所

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自衛隊機開発秘話FSX編
FS-X(F-2)支援戦闘機の開発と教訓
2011.05.31(Tue)  松宮 廉
 
(2)からの続き

教訓

 さて、FS-Xという日米共同開発を経験して感じるこのような形の日米共同開発は、二度としてほしくはないということです。
 
 御案内の通り、共同開発というのは、将来両国の空軍が運用するであろう航空機を、互いに開発経費を持ち寄って両国の技術者がともに開発作業をするというものですが、FS-Xの場合はそうではありませんで、運用するのは航空自衛隊のみで、開発経費はすべて日本負担ですから、正確な意味での共同開発ではありません。
 
 今から振り返ってみると、プライムの三菱重工もそうであったのでしょうが、官側もFS-X開発室を開発官のもとに設けて開発作業に努力はしましたが、良い戦闘機を作り上げるために純粋に技術的な検討をする時間よりも、対米交渉のための準備に多大の労力を取られたというのが現実でした。
 
 正直に申し上げて、飛行試験で生じたような問題を予見できなかったばかりか、コストコントロールなどはとても推進できるような状態ではありませんでした。
 
 平成4(1992)年 Richard Armitage 国防次官補が国防総省を退官後、国務副長官に就任する前に、インタビューに答えて次のような発言をしています。
 
 「米国がFS-Xの国内開発に反対したのは、日本が防衛に十分な金をかけていないのに、戦闘機の開発に巨額の資金を投入するのは有益ではないと判断したからである」
 
 「航空宇宙・防衛分野は米国が世界のリーダーであり、日本が自前の産業として育てようとするのは友好的な態度とは言えない」
 
「(1)米国がすでに作ったものがあれば、それを買う。(2)日本独自の必要があるものについては、日本の企業が開発し、それを米国にも技術供与する。(3)新しい分野は日米共同で開発する」
 
 日本が航空宇宙産業を自前の産業として育てようとするのは「友好的態度」とは言えないとは随分な言い方ですが、FS-X開発から随分時間は経っているとはいえ、いまだに米国人の心の底にはこのような考えが存在していると考えて、我々航空工業関係者は対応せねばならないのではないかと思っております。
 
 また、トピックスの最後のところで御説明しました機体およびレーダー関係の不具合とその対応ですが、試作までを担当した開発の責任者としては、後輩諸君に誠に申し訳ないことをしたと思って深く反省しています。
 
 我々が基本設計から試作までにもっと技術的に詰めておけば、このような問題は生じなかったであろうとまでは申しませんが、もっと技術的に詰めておくべきであったのは事実です。
 
 特にレーダーについては、運用を想定した実環境下での技術的要求事項を明確にして製造会社に要求する必要がありましたし、製造会社はそれを踏まえた設計、試験、評価をすべきであったということも大きい反省点の1つです。
 
 いずれにしても、この貴重な経験を将来の「戦闘機用レーダー」なり「アビオ二クス」の研究開発に是非とも生かしてもらいたいものと強く念願するものです。
 
2.結び
 
 まとめの言葉を述べさせていただきたいと思います。
 
 平成2(1990)年12月14日の次期支援戦闘機FS-X設計(その1)の計画審査時の技術開発官(航空機担当)の挨拶として、次のように申し述べました。
 
 「開発に必要なものは人とカネと時間であるが、中でも大切なものは人である。人の技術的能力ももちろん重要であろうが、何にもまして必要なことは良い戦闘機を作り上げるのだという情熱であろうと思う」
 
~略~
 
 「部品1点1点にわたるまで心のこもった暖かいものにして、システムとして完成した時には、まさに血の通った傑作機にしたいと強く念願している」
 
 随分と非科学的な話ではありますが、戦前の「ゼロ戦」から今日の「F-2」に至るまで、技術者が情熱を傾けて、心血を注いだものは必ず「名機」になると私は確信しています。
 
 精神論だけではどうしようもありませんが、次期輸送機の開発に伴うこの困難はどうしても乗り越えねばなりません。そうでなければ、明日の日本の航空工業はその存立さえ危ぶまれることとなりましょう。
 
 特に「老人の繰り言」になるかもしれませんが、私に言わせると、いまだに官民の一体感が得られていなくて、特に官側の「踏み込み」と言いますか、リーダーシップ不足が垣間見られてなりません。
 
 本当の「最後」に、官民の関係者の皆様に、故守屋富次郎防衛庁技術研究本部長が、昭和38(1963)年1月4日の年頭の辞で「技術者の心構え」を述べていますが、それをここに御示ししてかみしめたいと思います。
 
 これは防衛庁の技官や技術幹部に対して述べられた言葉ですが、官民を問わず技術者に共通の事柄だと思いますので掲げさせていただきます。
 
1. 使命を自覚すること
2. 努力を惜しまぬこと
3. 仕事に責任を持つ
4. 最高の権威者たれ
5. 自ら手を下すこと
6. 常にテーマを持て
7. 不満を克服せよ
8. 基礎学問を忘れるな
9. 孤立しないこと
10. 人間的であること
 

 まさに名言であろうと思います。


JBpress.ismedia.jpより引用

 
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傑作ランクリ(`・ω・´)

2011/6/19(日) 午後 11:54 [ banboo ] 返信する

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>技術者が情熱を傾けて、心血を注いだものは必ず「名機」になると私は確信しています

全然関係ないですが、我が社の引退した相談役が「自動空戦フラップ」は凄かったんだとか仰ってたのを思い出しました。

「心神」が未来の名機を生みだす母体になれば良いですね。

2011/6/22(水) 午後 9:49 [ banboo ] 返信する

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banbooさん、こんばんは!

>傑作ランクリ(`・ω・´)

ありがとうございます!

>「自動空戦フラップ」

この装置を解りやすく、言い換えると自動オーバーシュート阻止装置になりますね。(オーバーシュートとは、敵機の前に飛び出すことです)
でも、「自動空戦フラップ」の装置自体は精巧なものですが、そんな装置を付けるくらいならば高速ヨーヨーを仕掛けて方が良いと言う議論になり、必要性は"?"になってしまうのです。(高速ヨーヨーの空戦機動をご覧になりたければ、マクロス・ゼロの冒頭シーンでF-14が高速ヨーヨーやっています。因みにこの機動が流布したのは戦後ですけどね)

F-14 vs SV-51(3機目のMiG-29のケツに付く時に高速ヨーヨーをやっています)
http://www.youtube.com/watch?v=VjJCRXeWq08
【ヨーヨー】
http://mmsdf.sakura.ne.jp/public/glossary/pukiwiki.php?%A5%E8%A1%BC%A5%E8%A1%BC

2011/6/26(日) 午前 0:52 [ 小窪兼新 ] 返信する

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昨年のドイツ空軍第3位エースパイロット、ギュンター・ラル追悼記念特集でも触れましたBf109にも前縁スラットという似たような効果の装置がありますが、自動化されておらずGによって出し入れされるため、完全に使いこなせたのは、ハンス・ヨアヒム・マルセイユくらいですね。
「自動空戦フラップ」もGによって開閉されるわけですから、使いこなすのは非常に難しかったでしょう。
実戦では、新米パイロットが錐揉みに陥りそうな状態から、「自動空戦フラップ」で姿勢を回復したとの事例があるとされています。

2011/6/26(日) 午前 0:52 [ 小窪兼新 ] 返信する

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>「心神」が未来の名機を生みだす母体になれば良いですね。

記事内にある通り、米帝の意向如何でしょうね。
とにかく、日本国内の戦闘機の生産ラインと止めずに維持し続けることが、最大の課題ですね。
それを考えるとF-2を止めたのは、拙かった…。

2011/6/26(日) 午前 0:58 [ 小窪兼新 ] 返信する

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