モモンガ様ヒロイン化計画   作:ドロップ&キック
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きっとユグドラシルの最後の日は、夏の終わりに違いない。


第06話:secret base

 

 

 

 

 

「これじゃあまるで大名行列ですよ」

 

「いいじゃない。最後の最後は玉座まで『魔王の凱旋パレード』なんて、魔王ロールプレイにこだわり抜いたモモちゃんさんらしい終幕だよ?」

 

そう、今モモンガとガフは竜人の執事セバス・チャンに戦闘メイドのプレアデスを引き連れて玉座へと向かっていた。

最もモモンガが大名行列と証したのは引き連れてる面子だけでなく、身を包む装備の豪奢さも含めてだろう。

例えばモモンガが手に持つのは先ほどまで使っていた試作モデルを近接戦アビリティメインに再改造した実戦仕様の”プロト・スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン・カスタム”ではなく、本物のギルド武器”スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン・ジ・オリジン”の方だ。

身にまとうドレス”ゴスロリオン”も回復させ黒を基調としたシックな第一形態に戻し、それ以外の身に着けるアイテムの数々も金糸の刺繍に擬態し、使用時には炎と雷による追加ダメージや麻痺効果/鎖による束縛という三重の効果がある六振りの投射型鎖短剣、《トリンケッツ・チェーンダガー/炎雷縛剣》をはじめとした神器級(ゴッズ)アイテムで閉められていた。

 

いわゆる一張羅、もしくは最終決戦モードで一体何と戦うやらといった感じではあるが、これもガフの提案で「最後なんだし一番豪華な最強装備を心置きなく装着しよう♪」というものだった。

無論、モモンガだけでなくガフも”ゲイ・ボウ・セラフィム”を筆頭に似たり寄ったりな装備だ。

 

 

 

「”ジ・オリジン”かぁー。そのパーツ集めをしてるときの冒険譚と、まさに漢としか言いようの無い課金武勇伝とか好きだなぁ」

 

「あはは」

 

何を思い出したのか苦笑を浮かべるモモンガ姫。「あの時はひもじかったなぁ……」と少し空ろな遠い目をしていた。

 

「俺はどちらかと言えばガブさんがワールドアイテムを二つも三つも個人所有してたことに驚きましたよ」

 

この広い電脳仮想世界(ユグドラシル)の中で200程度しかないといわれている超級レアアイテムだけに、普通はギルド規模で管理していたりするのだが……ワールドチャンピオンとか肩書きの無い、本人曰く「ちょっと強いだけの放浪者」が個人所有、それも複数もっていたとすれば、確かに驚きだろう。

よくPKされて奪われなかったものである。

 

「んー。ああいうのってあるとこにはあるもんだよ? 例えば誰もが当たり前すぎて見落としてるところに宝はあったりするんだなー、これが」

 

「そういうもんですか?」

 

「モモちゃんさんはメーテルリンクの『青い鳥』とか嫌い?」

 

「好きも嫌いも、読んだこと無いですね」

 

「ワタシとしては一読を薦めるよ。ピノキオと同じくらいモモちゃんさんにオススメかな?」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

そして、二人は玉座へとたどり着く。

 

「アルベドは今日も美人さんだねー」

 

「ですね。さすがはタブラさんの傑作だ」

 

そうモモンガとガフは”いつものように”守護者統括に話しかける。

もっとも話しかけるのはアルベドだけでなく、他の主だったNPCにはモモンガもガフも気が向いたら話しかけるようにしている。

当然、どんな言葉を投げかけたところでNPC達は表情を動かしたり、能動的なアクションをとったり、ましてやパラメーターの上下動なんて起こしはしない。

彼らは少なくともこの時点ではコマンドを忠実に実行するプログラムに過ぎず、命にはなりえてないのだから当然だろう。

仮に言葉に反応して感情が動くようなギミックがあったとしても、それは思考ルーチンでありどこまでいっても感情と呼ぶには至らない。

 

無論、モモンガとてそんなことは百も承知だ。

ただ、ガフがはじめた遊び……彼女いわく「大人のおままごと」に乗っかっただけだ。

モモンガに言わせれば、ガフは過疎り在りし日の賑わいを失ったユグドラシルという色褪せた世界の中で、楽しみをみつける天才だった。

 

「そういえばモモちゃんさん、アルベドの設定いじったの覚えてる?」

 

モモンガは苦笑しながら、

 

「オリジナル設定にあったビッチがパワーワード過ぎて忘れられませんて。でも、もっと驚いたのはガフさんがNPC製作者全員から改造許可を取り付けてきたことですよ」

 

「そう? だって”この城(ナザリック)”の城主はモモちゃんさんなんだから、王様特権があってもいいと思わない? まあ設定いじりに熱中するあまり、かなり悪乗りしたのも事実だけどさ」

 

「ビッチを消して”モモンガを愛してる”確かに悪乗りでしたねー」

 

「あれ、モモちゃんさんが妙に照れてたっけ。最後はたしか『モモンガ→LOVE、ガフ→LIKE』に落ち着いたんだよね?」

 

「うっ……今にしてみれば、ガフさんの悪乗りと大差ないような?」

 

「わははー。あとルプーの設定いじったり武器改造したり……」

 

「ガフさんが『せっかくでっかい十字架背負ってるんだから中にマギカ的なガン・デバイスとかカノン・デバイスしこもうぜー♪』と言い出したときは、るし☆ふぁーさんが乗り移ったかと思って心配しましたよ」

 

ちなみにルプスルギナの十字架型複合武器の名は”パニッシャー(処刑人)”というらしい。

 

「えー。だってルプーって人狼(ワーウルフ)でしょ? ウルフで十字架って言ったら、やっぱりウルフウッドさんじゃない? いや、天使を拘束できる銀鎖も捨てがたいけどさ……あれは銀狼でひんぬーだから映えるわけだし。やっぱり赤毛のグラマーにはこっちのが向いてる気がする」

 

「ウルフウッド……? だれです、それ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

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「二人で色々冒険もしたねー」

 

「ええ。色んなクエストこなしましたよねぇ。”幌馬車通商隊(キャラバン)”イベントとか懐かしいなぁ」

 

「ああ、あれだね。モモちゃんさんとはじめて組んで参加した大型イベントの……ガルガンチュアの強化外装ユニットの素材集めで参加したんだっけ?」

 

「そうですよ。るし☆ふぁーさんが残した謎の設計図を一目見たガフさんが、『これ作ってみたい♪』って言い出して。あの時は本当に『この人、大丈夫か?』って思ったし」

 

「ぶーぶー! 【でっかいメタルスライムに大砲をガン乗せ】ってぶっとんだコンセプトが面白かったんだもん!」

 

「確かにぶっとんだコンセプトでしたけどねー。でも結局、使う機会はなかったなぁー。シズをパイロットに乗っけて、シズとガルガンチュアの”完全同調相互拡張制御(シンクロナイズド・フラッター)”で最大の性能を引き出し、災厄級のパワーを発揮する……って無駄に凝った仕様にしたのに」

 

「でも、中二魂はずいぶんとくすぐられたんじゃない?」

 

「実はかなり」

 

モモンガとガフは笑いあう。

秘密基地の中で笑う二人の中で、思い出は途絶えることは無い。

だけど時は優しく残酷だ。

 

どれほどゆっくり歩いても、玉座の間も終わりのときも近づいていた。

だからだろうか?

 

ガフは問いかける……

 

 

 

「モモちゃんさん……楽しかった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ガフが来て、少しずつ原作と姿を変えてったナザリック。

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