モモンガ様ヒロイン化計画   作:ドロップ&キック
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モモ姫は人気者。
魔王ポジだけどね。


第05話:ちょっと昔

 

 

 

モモンガに言わせるならギルドにふらりと現れた”ガフ”……”ガフのとびら”を名乗る”至高天の熾天使(セラフ・ジ・エンピリアン)”をアバターとする人物は、実に不思議だった。

 

彼女がやってきたのは今にして思えばユグドラシル末期と呼ばれる時期、運営の苦し紛れの足掻き感が出ていた最後の超大型アップデート【もう一つの可能性の彼方へ】、つまり「2()n()d()()()()()()()()()の導入」が始まる少し前の事だったと思う。

人気の無くなったナザリック地下大墳墓やってきた彼女は、出会いの開口一番……

 

『魔王様に捕まり配下にされてしまった駄目天使ロールプレイをやりにきた』

 

と告げた。

もはや41人のプレイヤーで1500人の攻略組を返り討ちにした武勇伝を誇る昔日の栄光はもはやナザリックにはなく、かと言って単身で攻略するのはたとえトッププレイヤーだろうがワールドチャンピオンでも未だ無理な陣営だった。

 

また、例えばかつて存在しAOGが41人の少数精鋭ギルドになってしまった原因でもある”燃え上がる三眼”のような組織が、警戒心を抱かせぬように単身で送り込んだスパイという可能性もあったが……

 

だが、リスクの割りにそのメリットが少ないという結論しかなかった。

元々、AOGは「運営非公認のラスボス」として専用の攻略wikiまで作られる超有名ギルドであり拠点だった。

今更、スパイを一人送り込んだところで得られる新情報などほとんど無いだろうし、何よりユグドラシルが既に衰退と過疎の波に飲み込まれていた現状、本気でナザリックを攻略しようとする者は絶えて久しい。

 

実際、1500人の攻略組が押し寄せたのもユグドラシル黄金期だったとき、それも一度きりの祭りだ。

今のユグドラシルには、たとえナザリックを攻略したくともそれだけの動員が可能なギルドも、音頭を取れるカリスマ指導者もいなかった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

モモンガがギルド長権限でガフを受け入れたのは、そんな打算よりももっと感情的、あるいは感傷的な……祭りの後の寂しさ、その静寂に耐えられなかったからかもしれない。

最初は客として迎え、程なく正式な4()2()()()のギルメンとして認めた。

 

しかし、AOGのギルメンとなったガフがとった行動は、モモンガとしても予想外だった。

彼女は時間を見つけては去った仲間たちに連絡を取り、在りし日のナザリックとAOG、そしてモモンガのことを聞いて回ったのだ。

ガフに言わせれば、

 

組織(ギルド)は人が作るもの。ナザリックはあくまでその入れ物。だから、ワタシは知りたかったんだよ。アインズ・ウール・ゴウンってギルドがかつて”どんな色”をしていたのか。そして……』

 

彼女は微笑み、

 

『今のアインズ・ウール・ゴウンって、モモンガさんその物でしょ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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23:50:08

 

 

 

「ねぇ、モモちゃんさん。そろそろ玉座の間に移動しない?」

 

「ああ、そうですね。もう10分を切ったんですね……」

 

実は『ユグドラシル・ラスト・イベント in ナザリック』、午後10時にはどんな結果であれ終わるように通達していた。

『最後の時間は、大好きな仲間と思い思いの場所で過ごして欲しい』というモモンガの願いによってだ。

自分にも大切な仲間(ギルメン)がいる。ユグドラシルにおける最後の逢瀬を邪魔されたくないし、邪魔したくも無い。

未だ残る多くのプレイヤーの中には、ユグドラシルが終わってしまえば二度と会えないメンバーも多いだろう。

 

だから今日は大サービス。死者蘇生はオーバーロードの力を未だコンバートし保持してるモモンガが、治癒系は種族特性から大得意のガフまで参加し、10時には全員元気いっぱいだった。

最後はモモンガを真ん中に記念撮影。気の利いたことに『We Love YGGDRASIL』と描かれた横断幕まで用意されていた。

もっとも、参加者を喜ばせたのはゴスロリオン第二形態、即ち『純白のノースリーブ&ミニスカ・ワンピのモモンガ姫』と一緒に画像に写ったことではないだろうか?

おそらく、この姿のモモンガが映像に残るものは最初で最後だろうから。

 

 

 

「盛り上がりましたね。イベント」

 

「お土産もいっぱい貰っちゃったね♪」

 

そうイベント終了後、予想外に大童になってしまい、戦闘以上にモモンガが疲れてしまったのは「最後のイベントを企画し、参加されてくれたお礼に」と称して参加者から送られた品々が山盛りになってしまったからだ。

 

「ヘロヘロさん達には悪いことをしちゃったかなぁ……」

 

その量は「どこの大手巨大ギルドの倉庫を移転してきたんだ?」と呼べるほどの分量になってしまい、結局、今日が最後ということで遊びに来た引退ギルメン達にも手伝わせてしまった。

 

「これも思い出だよ」

 

あっけらかんと返すガフ。

ただ、単純な分量だけではなく中にはレアアイテムどころかギルド武器やワールドアイテムなんかも混じっていて、さしものモモンガも恐縮してしまったものだが……

 

「それにしても……本当によかったんですかね? 受け取ってしまって」

 

「いいんじゃない? あと10分もすれば消えてなくなってしまうものだし。それにみんな感謝を形に残したかったんだよ。きっとね」

 

「感謝? なんの?」

 

ガフは満面の笑顔で、

 

「モモちゃんさんが最後まで魔王でいてくれたこと。そして、ユグドラシルを好きでいてくれたことに……じゃないかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




微妙にナザリックがアイテム的な意味で原作より強化。
モモ姫もだけどパンドラさん大喜び?


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