モモンガ様ヒロイン化計画 作:ドロップ&キック
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「つーかーれーたー」
本来なら荘厳であり、静謐な空気で満たされているはずのナザリック地下大墳墓……その9層、通称ロイヤルスイートにある私室の床で大の字になってる骨、もといきょぬー幼女がいたりする。
「モモちゃんさん乙乙~♪」
このギルマスの部屋にひょっこり姿を現したのは……
「あー! ”ガフ”さんひどいですよー。ぎりぎりになるまで支援攻撃しないなんて」
「いやー、これが最後のモモちゃん様無双かと思うと感慨深いものがあってさー。ついつい見惚れちゃいました♪」
ごめんねとテヘペロする彼女(?)の名は”ガフのとびら”、そう前話にてちらちらと存在がほのめかされていた現在、ナザリックに残るモモンガ以外唯一のギルメンであった。
種族はなんと”
無論、どことは言わないががつるんとした縦スジであり、一部の大きなお友達には大うけだろう。
天使はもともと性別が無いとも言うしね。
見た目があれでも彼女が人間種ではなく天使であることを示すのは、頭上の”天使の光輪《エンジェル・ハイロウ》”と五対十翼からなる背中の翼だ。
伝承では熾天使は三対六翼とされてるが、彼女の場合はストック状態六枚の”光の翼”に、”炎の翼”双翼と”暗黒の翼”双翼を追加していた。
本人曰く「十翼は十次元、すなわち三次元空間における”絶対なる存在”をあらわしてるのだよ♪ もっとも世界創造するほどの力は無いよ? 十一次元からは高位次元の領域で、宇宙一つ生み出すのでさえ十五次元以上、全知全能に至るには三十次元以上を操る力がいるんからねー」とのこと。
どこの超ひも理論なんだか。意外とガフは中二病なのかもしれない。やさぐれ科学ヲタクという線も捨てがたいが。
「それで高みの見物(物理)ですか?」
「それにほら、最後はペロロンチーノさんが最後にはモモちゃんさんを守ってくれたわけだし」
とガフは手に持つ太陽落としの天弓、モモンガとはジャンル違いの属性の塊である”ゲイ・ボウ”をひらひらさせる。
実はガフ、モモンガを除くギルメンがナザリックを去ったしばらく後ににひょっこりとやってきたアインズ・ウール・ゴウンの”最後の新人”である。
というわけで本来は今は引退した他40名のギルメンとは面識が無いはずなのだが……どうやらモモンガの近況報告もかねて全員ではないが豆にメールのやりとりをしてるらしく、特にぶくぶく茶釜ら女性三人衆やモモンガに特に懐いていたペロロンチーノとは仲がよいらしく、リアルでも会ったらしい。
モモンガ的には複雑なのかもしれないが、だいぶ前に久々に顔を出したペロロンチーノから直接、ガフに手渡されたのがこの”ゲイ・ボウ”だった。
ペロロンチーノ曰く「リアルでは投資家、リアルでも超法規的合法ロリ」であるらしいガフ相手だけに、エロゲマスターのバードマンにはなにやら下心があるのかもしれないが……そこは言わぬが花だろう。姉も怖いしね。
ともかく、ガフに託されたゲイ・ボウは彼女が使いやすいように更に課金に糸目をつけないカスタムが加えられ、”ゲイ・ボウ・セラフィム”と呼んでも差し支えないものとなっていた。
「きっとペロロンチーノさんは今この時も、天の彼方からモモちゃんさんを見守っているのだよ☆」
「いやいや、ペロロンチーノさんはまだ天に召されてませんて。さっきも『アップデート時間かかりすぎ! 間に合わないかもしれん。モモンガさんスマヌ! 次はリアルで会いましょう! あっ、その時は是非にガフさんも一緒に三人で。姉貴はイラン』ってメールできてましたし」
「あははー。アプデを最終日まで後回しにしたツケだねー。これこそ因果応報?」
「それにしてもペロロンチーノさんが茶釜さんの恐怖に打ち勝ってまで執着するガフさんのリアルって、どんなんです?」
「リアルのこと聞くのはマナー違反だけど……まっ、最後だからいいか。ぶっちゃけこのアバターと大差ないよ?」
「えっ?」
「羽と輪っかが無いだけで、髪の色や瞳の色を除けばほぼこのまんま。あっ、ただし身長は心持ち低いかも……ともかく、リアルのワタシに可能な限り似るように作ったのがこのアバターだし」
「そ、そうだったんだ」
「そういえば、いい加減2年くらい一緒に遊んでるけど、モモちゃんさんとオフ会やったことなかったっけ?」
「ないですよ。基本、ブラックの社畜なんで休み少ないですし、休みがあったらあったでユグドラシルに文字通りフルダイブしてますし」
「廃人プレイヤーの見本だねー。んー……じゃあ、ユグドラシルが終わったらオフ会、ううん」
ガフはにへらっと緊張感の無い笑みで、
「二人っきりでデートしよっか♪」
「フアッ!?」
急な申し出に妙な奇声をあげるモモンガだったが……きっとその約束が守られることは無いだろう。
ただし、”リアルでは”という枕詞がつくが。
カルネ村どころか異世界が遠い……
天使の武器ならやっぱり弓矢でしょう。