モモンガ様ヒロイン化計画 作:ドロップ&キック
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モモンガ様がジョブチェンジするようですよ?
今、一世を風靡したVRMMO-RPGゲームが12年の歴史を閉じようとしていた。
ゲームの名は『ユグドラシル』。
あまりのプレイ自由度の高さがユーザーの度肝を抜くこと受け合いのファンタジーゲームだった。
そして2138年現在でもネトゲとしては異例な長さを誇ったサービス期間も、今日が最後……
まだこの剣と魔法の世界に愛着を持つ多くのプレーヤーが、感慨深くその最後の見届けようとしていたのだが……
「皆の者、世界が終焉を迎えようとしているこの時によく参ったな!!」
100年以上前の人気女性声優、種○梨沙にどこと無く似た声が響いたのは、非公式ラスボスと名高いとあるプレーヤーの居城、いやいや正確には大墳墓の入り口だった。
「なればこそ我は貴様らの愚かさに見合った歓待をしようではないか!」
まさに魔窟の入り口に集結した歴戦の廃人プライヤーの集団を前に、嬉々としていわゆる魔王ロールを行うその存在こそ、
「この”魔王モモンガ”の名を、ユグドラシルの最後の記憶と共にその魂に刻み付けるがよい!!」
しかし、その魔王ロールに答えたのは……
「「「「「「うおぉぉぉーーーーーっ!! ピーチ姫、萌えぇえぇーーーーーーっ!!」」」」」」
数十人入るだろう、居並ぶ猛者廃人達の野太い黄色い声だったりする。
☆☆☆
「ピーチ姫言うなぁぁぁーーーーーーっ!!」
豪奢な黄金のスタッフを握ったぷに感あふれる短い手をぶんぶん振り回し、そう絶叫するのは……
「貴様ら何度も言っておろうが! 私はモモではなくモモンガだと!!」
しかし、このリアクションも蛙の面になんとやら。
既に攻略常連組(笑)と呼ばれるまでに訓練されたプレーヤーにとっては、このリアクションとて既にお約束の領域であろう。
「いや、だってさぁ……」
「骸骨だった頃ならともかく」
「ぶっちゃけ今の姿だとモモンガ様ってよりモモちゃんって方が似合うし」
容赦も忌憚も無い口撃にSAN値をガリガリと削られ、がっくりと膝を折り、のの字をスタッフの石突きで書き始める魔王様がそこにいた。
アンデッドは精神攻撃無効化の種族特性があるはずだが、どうやら仕事を放棄しているようだ。
だが正当性を言うなら間違いなく攻略組のほうがあるだろう。
そう推定身長138cmの某ギルメン風の「ぷにっと萌え」感溢れる白い肢体に99cm(推定Hカップ)の胸部ツインドライブを組み合わせたサキュバスボディをゴスロリドレスに包み、整った顔立ちに切れ長の瞳は左右紅蒼のオッドアイ、髪はキューティクル輝く金髪ウェービーロングヘア。
あえて言うなら「やたらきょぬーに魔改造された小鳩ちゃん」と言ったところか?
そう、この愛らしくもアンバランス(特に胸の辺りが……)な姿こそが、今のモモンガ様の正体だったのだ!
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「では諸君、ユグドラシル最後の刻を存分に楽しもうではないか!」
そう言いながらモモンガは背中の小さな対の黒い翼をはためかせ、ストンと攻略者の群れの中に降り立った。
着地の瞬間、幼い容姿に見合わぬ不釣合いなぶるんと重量感たっぷりに揺れる二房……ガン見するプレーヤーは多くいるが、モモンガにしてみればもはやその視線は慣れたものだ。
いや、そもそもロリできょぬーなサキュバスを”
むしろ今は、この色欲にまみれた視線を浴びることこそサキュバスの本懐なのでは?とさえ思っているくらいだ。
無論、(本来なら)”彼”なはずの中の人がここまで割り切るに至ったのは、最も新しいギルメンであり、そして自分を除けば唯一の残存者となった存在の暗躍があったりもするのだが……まあ、それはそのうちに語られることもあるだろう。今日という日はもうないが。
妙にギラついた……しかし、不思議と殺気のない視線に囲まれながら、好戦的な余裕の笑みを浮かべ……てるつもりのモモンガ様。
そして普段より愛用してるギルド武器のプロトタイプ、正確にはそれをベースに攻防を問わず近接能力を重視して課金強化した黄金のスタッフをかかげ、
「さあ、来るがよい!」
そして、血気にはやる一人の騎士が、
「今日こそそのでかいオパーイをもみしだいてやるぜっ!!」
と飛び出したが……
”PAN!”
「「「「「あっ……」」」」」
モモンガを含め誰もまだ攻撃やそれに該当するアクションは起こしてない。
だが、騎士は煙のように姿を消したのだ。
場が固まり微妙な空気が流れる中、モモンガはコホン咳払いをすると……
「あー……皆さん」
先ほどの魔王ロールはどこへやら。
妙に丁寧な口調で、
「くれぐれも最終日に垢BANされるなんて語り継がれることが憚られる伝説にならないように気をつけて戦いましょう♪」
モモンガ様、ついでに種族も性別も変わってました。
ロリきょぬーは正義 by 通りすがりのバードマン