モモンガ様ヒロイン化計画 作:ドロップ&キック
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おそらくそれは、この世界ではない”何処か”……
☆☆☆
「う~ん……どうやらこの”
宙に浮かんだ映像を見ながら、一体の天使がさして残念そうな表情も見せずにつぶやいた。
「どうしたの? ”ガブ”」
「んにゃ。また人間が物質文明の”負の螺旋”にはまりこんじゃって、滅びそうだなってるってだけで」
声をかけてきた顔馴染みの天使に、ガブと呼ばれた天使は返した。
「ふーん……
「そゆこと。んでお決まりの資源浪費と環境汚染で生態系と生存権破壊しまくってデッドエンド・コース確定」
だが、天使は愚かと断じもしなければ、蔑みもしない。
そもそも人間とはそういう生き物であるし、その無限の欲望があるからこそ時折、星の上で種族を終える知的生命体から、星星が瞬く
多くの生命体は、自ら生まれた環境に適応するように生まれつく……いや、そもそも環境に適応してなければ生命体として誕生することはかなわないだろう。
だが、人間種は自ら生まれた環境に適応する……それに応じた固体寿命から考えたら気が遠くなるような時間がかかる進化にゆだねるより、自らの生存環境の方を自分たちに適合させる手段を選択した。
それが文明である。
しかしそれは常に資源枯渇と生態系の破壊のリスクを伴う繁栄であり、そのバランスを間違え……あるいは、欲望を優先するあまり自ら滅びの道へと突き進んだ。
だが、別に天上人達はそれに悲観してはいない。
当然である。
その性質さえも”大いなる父”が与えた恩寵であり、気の利いた者ならそれを”原罪”と呼ぶべき種の特性なのだ。
それに何も人間は、彼らが地球と呼ぶありふれた惑星に住むホモサピエンスだけではない。
人間も地球も数多に存在していた。
おかしな言い方になってしまうが、今滅亡の瀬戸際にあるのは所詮、ガブと呼ばれた天使が役目の一つとして行っていた「無数にある人間が住む地球一つ」の出来事に過ぎない。
「それにしても中々、外に飛び出して生存圏を広げる人間って出てこないわね? 確率的には1%くらいかしら?」
「しょうがないよ。享楽的で刹那的なものって楽しいから。ワタシにも経験あるけど、人間の娯楽って非生産的なものほど楽しいし」
そう言うガブ、実は人間の時間感覚ではだいぶ前に今見てる地球とは別の地球に研修で降り立ちネトゲにはまるという、天使としてはレアな経験を持っていた。
そして、ふと(おそらく)彼女は……
「ねえ、この星の文明は現地時間であと100周期も持たないと思うんだよね」
「そうね」
「だったら……どうせ滅びるんだったら、」
何かを思いついたように、
「回収してリサイクルしてもいいと思わない?」
天使にしては悪い笑みを浮かべたのだった。
☆☆☆
「ガブ、具体的にはどうするの?」
「ほら、ワタシって今度、別の星の監視者を担当するじゃない?」
「ああ、確か複数の知的生命体が共存してるって星だっけ?」
天使的には共存に見えるのだろうが、人間の観点で言えばそれはきっと”弱肉強食”とか”生存競争”と呼ばれる現状ではないのだろうか?
「そうそう♪ その星だと人間って相対的弱者でさ、過去に何度かテコ入れされたんだけど……」
ガブは楽しくてしょうがないという表情で、
「でもうまくいかなかったんだよねー☆ いいとこまでは行ったみたいだけど」
「過去にテコ入れ? 自然淘汰の滅亡じゃマズイの?」
不思議そうな顔をする天使に、
「詳しい事情は知らないけど、テストケースとしてまだ『
「そうなんだ。で?」
「んで、ワタシにも中途半端なところで滅亡しないようにテコ入れ要請来てるんだよねー。これが」
「んー、でも過度なテコ入れは因果事象に影響が……あっ、わかった! 滅亡予定世界から回収して”平行転生”させるんだね? でも大丈夫?」
「何が?」
「物質文明の滅亡予定世界の住人ってことは、科学系の人間でしょ? たしかあの星って魔法文明じゃなかったかしら?」
「それに関しては心配要らないよー。魔法文明にアジャストできる人材の選抜は、もう出来上がってるし」
「そうなの?」
「うん。あるゲームを選抜触媒にするんだよ。過去に選抜されたテコ入れ要員も同じゲームから選抜されたって記録にあるし」
「いや、それって過去と同じ失敗を繰り返すんじゃ……」
「だいじょーぶ。過去の原因は解析済みだしねー。そ・れ・に」
ガブはウインクしながら、
「ワタシのつけた
(だから待っててね……)
「鈴木悟クン…」
きっとキミを幸せにしてあげるから♪
ガブさんは、某ドロップアウトの堕天しかけたネトゲ天使とは別人の模様。