editeur

検索
サービス終了のお知らせ
第9回 | トヨタの最新車デザイン・性能情報をお届け

蘇ったウィンダム──レクサスESが日本市場に初上陸

世界最大級の規模に成長した中国の自動車市場。それだけに、北京モーターショーは注目の的で、各社とも力を入れた新型車を惜しみなく投入している。レクサスでいえば、新型『ES』だろう。『ES』は、フラッグシップセダンの『LS』とともに、1989年のブランド誕生当初から歴史を紡いできたモデル。位置付けは『LS』に次ぐミドルクラスにあたり、販売の中核を成す。車名の「ES」は、ラグジュアリーセダンの『LS』に対し、『ES』はエクゼクティブセダンの頭文字とされており、走行性能よりも、乗り心地を重視した王道の一台。現行型は2012年にデビューした6代目となる。すでに8年が経過しており、フルモデルチェンジ間近とみられていたが、北京モーターショーでそのベールを脱いだ。

日本では『ウィンダム』として発売されていたレクサスのミドルセダン『ES』

「レクサス ES300、日本名ウィンダム」──。まだバブルの余韻が残る1991年、トヨタ『ウィンダム』が発売されたときのキャッチコピーだ。

筆者が初めて「レクサス」というブランドを知ったのはこのときだった。当時の『ES』は2代目にあたり、4代目までが日本でも『ウィンダム』として販売されていた。

しかし、LEXUSブランドが2005年に日本へと上陸し、『ウィンダム』も2006年に販売が終了。その後、『ウィンダム』の代わりとして『ES』が販売されることはなかった。新型『ES』は2018年秋に初の日本市場導入が予定されており、一部では『ウィンダム』の復活といった表現も用いられている。

当時のCMでは、アメリカのホワイトカラーアッパー層が『ウィンダム』に乗り込む姿が印象的だった。筆者は当時、まだクルマに詳しいわけではなかったが、高級感のあるワンランク上のクルマと感じたことを覚えている。そして、新型『ES』も、上質な世界観をしっかりと受け継いだ。

次世代プラットフォーム「GA-K」を採用した新型『ES』の低重心なフォルム

エクステリアは先代とまったく異なっており、まさに新世代レクサスの趣だ。トヨタグループが新しく取り入れた次世代プラットフォーム「GA-Kプラットフォーム」を採用することで、低重心を実現。エグゼクティブのためのセダンでありながら、走りを予感させるワイド&ローのプロポーションを実現した。

レクサスらしさを醸し出している最大の要因は、なんといってもフロントマスクだろう。

デザインアイコンであるスピンドルグリルが用いられているのは当然だが、鋭利に折り返すフレームと波紋のように連続する縦フィン形状のグリルメッシュを組み合わせることで、『ES』ならではのシャープなノーズを強調している。また、小型の3眼LEDヘッドランプによって、端整かつ鋭い表情が演出された。

リアも、タイヤがしっかりと地面をつかむ造形で、高い走行性能を予感させる。一方、3つのL字を層状に重ねた奥行きのあるデザインのリヤコンビネーションランプは、現代風ですっきりとした印象を与えてくれる。

レクサス独自の「すっきりと奥深い」走りを実現、「F SPORT」も登場する!?

高い走行性能を思わせるエクステリアだが、それは、走りの実力に裏打ちされている。パワートレインは3.5L のV型6気筒3、2.5L直列4気筒ハイブリッド、2.0L直列4気筒の3タイプ。特にハイブリッドは、圧倒的な燃費性能はそのままに、ダイレクトな加速フィーリングを実現したという。

また、「GA-Kプラットフォーム」の特徴である高剛性化・低重心化は、高い走行性能を実現するためには欠かせない要素だ。足回りにダブルウィッシュボーン式リヤサスペンションを採用したり、サスペンションの取り付け位置や角度を最適化したりすることで、高い操縦安定性を確保した。

ステアリングは、ラック平行式電動パワーステアリングで優れたレスポンスを得ることができる。実際に運転をすると、レクサス独自の「すっきりと奥深い」走りを堪能することができるだろう。

さらに、走りの快適さを追求するために、歴代『ES』のDNAである優れた静粛性をさらに進化させた。音源対策、吸音、遮音それぞれにおいて、徹底的な作りこみも行われた。風洞実験による車体形状の検証や吸音材・遮音材の最適配置のほか、ノイズリダクションホイールや遮音性の高いアコースティックガラスの採用など、フラッグシップセダン『LS』で培った技術を継承している。

より走行性能を重視するユーザーのために、スポーティなグレードである「F SPORT」も準備された(写真はすべて「F SPORT」)。

ドライバーの運転操作に忠実でよりスポーティな走行性能を実現するため、「F SPORT」ではきめ細かい減衰力の制御を行うリニアソレノイド式AVSを採用したほか、パフォーマンスダンパーを車体の前後に配置し、ボディ剛性のバランスを向上。それとともに、細かい振動を減衰吸収し、優れた操縦安定性と上質な乗り心地を実現している。

快適でドライビングの高揚感を高めてくれる「人間中心」がコンセプトの室内

快適な走りの工夫は、室内にも溢れている。運転席のコンセプトは「人間を中心とした空間」。ドライビングポジションは、ペダル配置、ステアリングの傾角や調整幅、シートのホールド性など、徹底的な走りこみやデータ解析に基づく細部にこだわったレイアウトで、ドライビングの高揚感を高めてくれる。

操作面では、ステアリング操作がしやすいショルダー形状としたほか、ディスプレイやスイッチ類を操作時の姿勢変化や視点移動が少ないレイアウトとすることで、運転に集中できる工夫がなされた。

後席は、広い足元の空間による開放感と、包み込まれるような安心感を両立。快適な座り心地と上質な仕上がりを追求したシートには、電動リクライニング機能が備わっている。

『ES』の発売は2018年秋、日本に導入されるのは2.5Lの直4ハイブリッド

日本導入が決まっているのは、3タイプのエンジンのうち、2.5Lの直列4気筒ハイブリッド。前述したように、発売は2018年秋の予定で、価格に関するアナウンスはまだない。

より『LS』に近づきつつ、原点である「乗り心地、静粛性、広い室内空間」といった「上質な快適性」をさらに進化させた『ES』。レクサスで最も売れているモデルでありながら、『ES』という名では未導入だった一台。今から発売が楽しみだ。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) LEXUS
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
LEXUS ES オフィシャル動画
ピックアップ
第17回 | トヨタの最新車デザイン・性能情報をお届け

超屈強なフルサイズSUV──トヨタ セコイアTRDプロ

日本の自動車メーカーが作るクルマには「日本では買えない海外専用モデル」というものが存在する。とくにSUVやピックアップトラックには、北米専用モデルが多い。ホンダなら『パイロット』『リッジライン』、日産なら『タイタン』にインフィニティ『QX70』。トヨタのフルサイズSUV『セコイア』も、そのうちの一台だ。この巨大な北米専用SUVに、モータスポーツ直系のチューニングを施した「TRDプロ」が加わった。日本では見ることもその性能を堪能することもできない、アメリカならではフルサイズSUVである。

全長5mの巨大なボディに豪華な装備。トヨタ『セコイア』は北米市場で人気のSUV

アメリカでは、フルサイズSUVを持つことがひとつのステータスになっている。多用途的とは言いがたいスポーツカーと違い、日常からレジャーまで幅広く利用でき、グレードによっては高級セダンに匹敵する乗り心地を実現し、さらに頑丈な車体は回避安全の意味でも頼りがいがあるためだ。VIPやセレブレティも移動にフルサイズSUVを使うことが多い。

フルサイズに明確な基準があるわけではないが、SUVをボディサイズでセグメントしたとき、もっとも大きなクラスを指し、コンパクトやミドルに対して「ラージサイズ」とも呼ばれる。全長は5m以上、全幅は2m以上かそれに近い車両がフルサイズにあたる。

トヨタの北米市場専用モデル『セコイア(Sequoia)』も、『ランドクルーザー200』以上の巨体をもつフルサイズSUVだ。トヨタ・インディアナ工場で製造され、初代は2000年にデビュー。その後、2008年と2018年にフルモデルチェンジを受けた。SUVを名乗っているが、どちらかというと『セコイア』は4WDとしてのヘビーさよりもオンロードでの快適性や利便性を重視したクルマで、充実したインテリアによってプレミアム感を演出している。それがユーザーの嗜好を捉えているのは、好調なセールスを見れば明らかだ。

フルサイズSUVで唯一セカンドシートにスライド機構をもち、じつのところ、それも人気を支えている要素になっている。さらにサードシートのリクライニングやフルフラットも電動(オプション)なので、家族の評判が高くなるのは道理なのだ。このほか、初代から運転席の8ウェイのパワーチルトやスライド式ムーンルーフを標準装備。トライゾーン・オートエアコンも備え、Apple CarPlay、Android Auto、Amazon Alexaにも対応する。もちろんBluetoothハンズフリー電話機能とミュージックストリーミングも可能だ。

しかし、2月にシカゴでお披露目された『セコイアTRDプロ』は、標準仕様とはかなり趣が異なる。その名のとおり、これは「TRD」のバッジを冠するモデルだからだ。

FOX製のショックアブソーバーを搭載。『セコイアTRDプロ』はTRDの最新モデル

TRDは「トヨタ・レーシング・ディベロップメント(Toyota Racing Development)の頭文字だ。トヨタのワークスファクトリースチームとしてレーシングカーを開発し、そこで培った経験や技術を生かしてトヨタ車用にチューニングパーツの製作と販売を行っている。国内外の多くのレースに参戦しているが、近年では『ヴィッツ』(輸出名『ヤリス』)をベースにしたマシンでWRC(世界ラリー選手権)に参戦して注目を集めた。前身は1970年代にさかのぼり、モータースポーツマニアならずともTRDの知名度は非常に高い。

「TRDプロ」は、2014年から北米でトヨタのオフロードモデルにラインナップされているシリーズで、ピックアップトラックの『TUNDRA(タンドラ)』と『TACOMA(タコマ)』、そして日本では『ハイラックスサーフ』としておなじみのSUV『4 Runner(フォー・ランナー)』に設定されている。このTRDプロの最新作が『セコイアTRDプロ』だ。

5.7L V型8気筒ガソリンエンジンを搭載し、トランスミッションは6速AT。55.4kg-mという図太いトルクを発揮し、しかもそのトルクの90%をわずか2200rpmという回転数で得ることができる。加えて、マルチモードの4WDシステム(ほかのグレードではオプション)やロッカブル・トルセン・リミテッド・センターデフ(トルク分配式デフ)を搭載したことで、従来の『セコイア』になかった高い走破性をもつのが特徴のひとつだ。

しかし、もっとも重要なチューニングポイントはサスペンションだろう。オフロード用のショックユニットメーカーとして知られるFOX社のアブソーバーは、アルミ製の本体にインターナル・バイパスを装備し、外力の大きさによって異なる減衰機構が働く。日常の走りでは柔軟に動き、ストローク量に応じて減衰力が高まるのでボトムしにくいのだ。数多くのオフロードコンペで優れた実績を残したメカニズムで、むろん専用にチューニングされている。しかもTRDの厳しい要求に応えるため、前後で異なるユニットが採用された。

「オンとオフ」「シティとカントリー」「マニアとファミリー」をまとめて愉しむSUV

外観で目立つのは、P275/55R20タイヤを装着した20インチx8インチのBBSブラック鍛造アルミホイールと、フィニッシュがブラッククローム仕上げの単管エキゾーストだ。誇らしげに「TRD」のロゴが入れられたフロント下部のスキッドプレートは、もちろんトレイル走行中にフロントサスペンションとオイルパンを保護するのに役立つもの。また、フロントグリルも「TOYOTA」のロゴを配した専用デザインとなっている。

面白いのは、TRDのエンジニアが乗員に配慮し、キャビンの音質を改善するために周波数調整したサウンドキャンセルデバイスを採用したこと。これによって低く心地よいエキゾーストノートを提供するという。走りとは関係ないものの、ぜひ体験したい機能だ。

かつての四輪駆動車愛好者は、それ以外の自動車ユーザーと求めるデザインや装備、機能が明らかに違っていたが、技術の進歩とセンスの変遷はさまざまな境界を取り払おうとしていると感じる。「オンとオフ」「シティとカントリー」「マニアとファミリー」をまとめて愉しもう、というのが『セコイアTRDプロ』の隠れたコンセプトなのかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) TOYOTA MOTOR CORPORATION.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

ピックアップ

editeur

検索