第5回 | キャデラックの最新車デザイン・性能情報をお届け

40代よ、キャデラックもいいぞ──XT4クロスオーバー

Drive

2018/06/23

キャデラックはGM（ゼネラル・モーターズ）の高級車ラインで、世界を代表するラグジュアリーブランド。アメリカ大統領専用車に最も多く採用されている。当然、プレミアムSUVも手がけており、フラッグシップは『エスカレード』だ。エッジが効いたマッチョスタイルは威風堂々、多くのセレブに愛されている。一方、稼ぎ頭の『XT5クロスオーバー』は、一転してヨーロッパで流行の流麗なデザインを取り入れ、新世代のキャデラックを感じさせた。この『XT5クロスオーバー』をさらに今風にしたのが、『XT4クロスオーバー』だ。各ブランドが力を入れるコンパクトプレミアムSUVカテゴリーに属する。

『XT4クロスオーバー』のターゲットは、都市部で生活する裕福な若年世代

キャデラックは「豊かで強いアメリカ」の象徴だった。イメージは、デカくてゴージャス、年齢を重ねた成功者が威張って乗るクルマ。しかし、それは過去の話だ。

まったくキャデラックらしくない『XT4クロスオーバー』をみれば、一目瞭然だろう。コンパクトプレミアムSUVはキャデラックが初めて参入するセグメントで、新たな拡大戦略を担う一台だ。それだけに力が入っている。

ターゲットは、おもに都市部で暮らす裕福な若年層。そのため、ターゲットと同世代の若手デザイナーチームが指揮を取ったという。見た目の印象は『XT5クロスオーバー』に近いが、より丸みを帯び、流麗でスタイリッシュなイメージだ。全長4599×全幅1881×全高1627mmという車高が低くワイドなボディも相まって、若々しさを感じさせる。

ただし、キャデラック独特の縦型のL字型ライトが水平方向に伸びるなど、DNAはしっかりと受け継ぎ、プレミアム感は損なわれていない。

室内も、若々しくスポーティな仕上がりだ。伸びやかな曲線とゆるやかなカーブを描くラインがゆったりとした感覚をさらに強め、落ち着いた雰囲気を生み出している。

なにより驚きなのは、コンパクトプレミアムSUVとは思えないゆとりのある室内空間である。特にリアシートの1004 mmのレッグルーム、最大容積1385 Lのラゲッジスペースは、セグメントでもトップクラスを誇る。

乗り心地が良く、スポーツドライビングまで愉しめる『XT4クロスオーバー』

これらの若々しさは、ドライビングにも反映された。心臓部には新世代の2.0L ターボ・エンジンを採用。最高出力は237hp（177kW）、最大トルクが258lb-ft（350 Nm）で、すべての回転域で高い応答性を発揮する。

このエンジンに組み合わされるトランスミッションは、9速オートマチック。また、直感的な操作でシフトチェンジを可能にする、次世代型の電子制御式のエレクトロニック・プレシジョン・シフトも備わっている。

足回りは、フロントにストラット、リアに5リンク・インディペンデントのサスペンションを採用。標準装備のドライブモードセレクターによって走行モードや路面状況に応じた車両特性を選ぶことができ、上質な乗り心地と素早いレスポンスのバランスが取れたドライビングが可能となっている。

上位グレードの「XT4 スポーツ」にはアクティブ・スポーツ・サスペンションが採用された。CDC（コンティニュアス・ダンピング・コントロール）が備わっており、電子センサーでリアルタイムに路面状態をモニターして2ミリ秒ごとに減衰力を調節することで、ドライビング・ダイナミクスと制御性を大きく向上させる。

キャデラックの「新たな稼ぎ頭」として期待されるプレミアムコンパクトSUV

キャデラックのヨハン・ダ・ネイシン社長は、「『XT4』はキャデラックの拡大戦略と製品価値をより高めていくためのスタートとなる一台であり、これを皮切りに、2021年まで半年ごとにニューモデルの情報を発信していく」と明言している。

その言葉通り、『XT4クロスオーバー』は、グローバル展開を見据えた「Y」トリム戦略が初めて採用された一台だ。個性的な「プレミアムラグジュアリー」と「スポーツ」の両モデルからなり、それぞれに合わせて用意されたコンテンツとスタイリングで、顧客の多様な嗜好に対応できるという。

2019年には、フラッグシップセダン『CT6』の新モデルにも「Y」トリムが採用されるという。

ジャーマン3、レクサスに並ぶプレミアムコンパクトSUVの新たな選択肢に

日本への導入時期や価格は未定だが、従来のキャデラックに比べると、コンパクトプレミアムSUVの『XT4クロスオーバー』は日本の道路事情にもマッチしやすい。

BMW、メルセデス・ベンツ、アウディ、レクサスと、このセグメントに力を入れる自動車メーカーは多いが、選択肢が広がるのはユーザーにとってうれしい話だ『XT5クロスオーバー』が売れていることを考えると、期待が持てる一台といえるだろう。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) General Motors
Edit by Takeshi Sogabe（Seidansha）

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Cadillac XT4 オフィシャル動画

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第6回 | キャデラックの最新車デザイン・性能情報をお届け

キャデラックCT5──ブランド再生を担うミドルサルーン

Drive

2019/06/03

GM（ゼネラルモーターズ）の最高級レンジのキャデラックは、日本には大正時代から輸入され、皇族、華族、政治家、さらに力道山や石原裕次郎といったスターに愛用されてきた。歴代のアメリカ大統領専用車の大役も担うなど、世界中の富裕層が愛したブランドだ。巨大な車体、大排気量エンジン、豪華な内装というイメージがあるが、最先端技術の搭載でも知られ、各時代において、さまざまな「世界初」でブランドイメージを築いてきた。そうした企業姿勢を象徴する一台が、4月に発表された新型ミドルクラスセダン『CT5』だ。

フラッグシップ『CT6』とコンパクトセダン『ATS』の中間に位置するミドルセダン

かつてキャデラックの名は高級車の代名詞だった。「かつて」というのは、現在のキャデラックはアメリカ本国の高級車市場の販売台数においても、BMW、メルセデス・ベンツ、レクサス、アウディの後塵を拝しているからだ。そのため過去何度も「キャデラック復活」を試み、1年前からはマーケティング戦略の見直しなど新たな再生に取り組んでいる。

GMが4月のニューヨーク国際自動車ショーで初公開した『CT5』は、そうしたブランド再生へのアプローチのなかで誕生した一台だ。ミドルサイズのラグジュアリーセダン『CTS』の後継モデルにあたり、車格としては、フラッグシップサルーン『CT6』とコンパクトセダン『ATS』の中間に位置することになる。欧州車でいえば、メルセデス・ベンツ『Eクラス』、BMW『5シリーズ』、アウディ『A6』といったあたりがライバルとなるだろう。

オーナーの好みに応じてデザインやインテリアトリムを自由にカスタマイズできる

エクステリアは、キャデラックの新しいデザイン言語により、ファストバックデザインが採用された。具体的には、ルーフからリアウィンドウにかけてのなだらかなラインが特徴の4ドアクーペのフォルムをもつ。キャデラック独特のフロントのL字ライトは健在だが、より水平方向へと伸び、低くワイドなスタイルが強調されている。ホイールベースは『CTS』の2910mmから2947mmへと伸長され、ゆとりのある室内空間を実現した。

また、『CT5』には「ラグジュアリーモデル」「スポーツモデル」の2タイプが用意されており、オーナーの好みに合わせてデザインをカスタマイズすることが可能だ。「スポーツモデル」は専用のフロントマスクやスポイラー、19インチホイールなどを装備する。

インテリアは「ドライバー中心」という哲学のもと、高度な技術と優れた質感を組み合わせている。高精細な10インチタッチスクリーンモニターを採用し、近距離無線通信による電話ペアリングなど、コネクティビティも充実。エクステリアと同様に、ラグジュアリーとスポーツの2タイプごとに好みのデザインやインテリアトリムを選ぶことができる。

世界初となる半自動運転の高速道路支援システム「スーパークルーズ」を搭載予定

運転支援では「世界初」の最先端技術の採用がトピックだろう。『CT5』には世界初となる半自動運転の高速道路支援システム「スーパークルーズ」が2020年から設定される。

「スーパークルーズ」は、カメラとレーダーセンサーのネットワークを組み合わせ、最新の地図情報データベース、ライダー、高精度GPS、最新のドライバーアテンションシステムなどにより、アメリカとカナダのおよそ20万kmにおよぶ自動車専用高速道路をハンズフリーで走行することが可能となるという。「スーパークルーズ」の使用中に走行方向に注意を向ける必要があれば、警告を発してドライバーに教えてくれる機能も備える。

このほかオプションで選択すれば、フォワードコリジョン警告、自動緊急ブレーキ、前方歩行者ブレーキを標準装備し、アダプティブクルーズコントロール、エンハンストフォワード自動緊急ブレーキ、ブレーキ付き自動パーキングアシスト、レコーダー付きHDサラウンドビジョン、リバースオートブレーキなどの安全機能を装備することも可能だ。

メルセデス・ベンツ『Eクラス』やBMW『5シリーズ』を脅かすことができるか？

搭載されるパワーユニットは、2.0L直列4気筒ガソリンターボエンジンと3.0L V型6気筒ガソリンツインターボエンジンの2種類。トランスミッションには10速ATを組み合わせ、駆動方式はFRと四輪駆動から選択可能だ。

キャデラックのスティーブ・カーライル社長は、「『CT5』に採用した装備は、キャデラック独自の技術であるスーパークルーズをはじめ、そのすべてが比類のない体験をお届けすることに重点を置いて開発されました。スーパークルーズの搭載車種を『CT5』にまで拡大したのも、もっとも革新的な技術をお届けする、という自らに課したお客様との約束をより確実なものにすることにほかなりません」とコメントし、自信をのぞかせる。

復活を期す高級車ブランドは、メルセデス・ベンツ『Eクラス』やBMW『5シリーズ』、アウディ『A6』といったライバルを脅かすことができるのか。要注目だろう。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) General Motors
Edit by Takeshi Sogabe（Seidansha）

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