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第28回 | アウディの最新車デザイン・性能情報をお届け

アウディA6アヴァント──死角なしの万能プレイヤー

フラッグシップの『A8』にステーションワゴンが設定されていないアウディにおいて、もっとも大きいワゴンとなるのが『A6アヴァント』だ。『A6』シリーズでは、『A6セダン』が先行してフルモデルチェンジを受けていたが、オーナーのあらゆるライフスタイルに寄り添う知的なオールラウンドプレイヤーというべき『A6アヴァント』にも新型車が登場した。アウディの最新のデザイン言語と最新テクノロジーが採用され、「今欲しいEセグメントワゴン」としての魅力が詰まった一台となっている。

かつての旗艦モデル、アウディ『100』から始まった『A6アヴァント』の歴史

カーガイなら、アウディ『100』というクルマを覚えているかもしれない。デビューは1968年。幾度かのモデルチェンジを経て、1990年代の終わりまで生産された当時のフラッグシップモデルだ。『A6』という車名は、じつは『100』が4代目へとマイナーチェンジした際に与えられた名前である。

『100』には、3世代目から「アヴァント」が登場しており、1984年には日本にも導入された。アウディの代名詞である4WDシステム「クワトロ」も選ぶことができ、当時のCMではスキージャンプ台の急勾配を駆け上がってそのパフォーマンスをアピールした。2005年には、3代目『A6アヴァント』のキャンペーンでリバイバルCMが放送されたので、目にした人も多いだろう。

このときから『A6アヴァント』にはSUVテイストを盛り込んだ「オールロードクワトロ」が登場し、バラエティに飛んだラインナップを形成した。

Eセグメントのワゴンには、メルセデス・ベンツ『Eクラス ステーションワゴン』やBMW『5シリーズ ツーリング』などの強力なライバル車がひしめき合うが、5代目となる新型『A6アヴァント』もその魅力では一歩も引けを取らない。

ワゴンらしい流麗なフォルムを形成する『A6アヴァント』のスタイリング

エクステリアでは、オーソドックスなデザインのセダンとは対照的な流麗なスタイリングがさらに洗練された印象だ。

真横から見ると、クォーターガラスが後ろに向かって三角形に結ばれるようなデザインとなっており、スマートなDピラーで縁取られ、ツーリングワゴンらしいフォルムを形成している。スラントしたリアハッチのガラスは3代目モデルから続く『A6アヴァント』のアイデンティティだ。

シングルフレームグリルやLEDヘッドライトが採用されたフロントフェイスは先代モデルを踏襲しているようにも見えるが、グリルがワイド化され、より迫力を増している。

標準化されたLEDヘッドライトには、グレードによってバリエーションが与えられた。最上位モデルには高解像度ハイビーム搭載の「HDマトリクスLEDヘッドライト」を装備。さらに、ダイナミックターンシグナルとライトを連動させた「カミングホーム&リービングホーム」機能を搭載し、角張って野暮ったかったテールレンズのデザインも変更され、スポーティーなリアビューとなった。

ラゲッジスペースが拡大されて実用性が向上、インターフェイスも大きく進化

室内空間は先代モデルよりも拡大され、ワゴンならではの実用性が向上している。ラゲッジスペースは、リアシートを起こした標準時で565Lを確保。リアシートを倒すと1680Lもの広大なスペースが出現する。後席の足元もクラストップレベルのレッグスペースを実現し、移動時の快適性が向上した。

進化したインターフェイスも注目すべきポイントだ。ドライビング中は、10.1インチ(オプション)、あるいは8.6インチのディスプレイにナビゲートや車両情報が表示され、セレクターレバーに手を乗せた状態で操作を行える。

12.3インチのスクリーンで迫るアウディバーチャルコクピットはステアリングホイールのマルチファンクションボタンで操作可能。オプションのヘッドアップディスプレイを選べば、視線を極力動かすことなくさまざまな情報を得ることができる。

これらのインフォテインメントシステムの最上位モデルである「MMIナビゲーションプラス」は、LTEアドバンスト規格の通信モジュールを搭載。単独で外部とデータ通信が可能となるので、車内でスマートフォンにWi-Fi接続することも可能だ。

日本国内での対応は未定だが、ドライバーの走行履歴などを分析し、インテリジェントな提案をしてくれる統合ナビゲーションシステムといえる。

新型『A6アヴァント』はマイルドハイブリッドシステムを全車に標準装備

パワートレインは、最高出力250kW(340ps)の3.0L V6ガソリンターボ、最高出力210kW(286ps)の3.0L V6ディーゼルターボなどが用意されるようだ。『A6セダン』と同様に、ヨーロッパでトレンドとなっているマイルドハイブリッドシステムが全車に標準装備される。

マイルドハイブリッドシステムは、48Vスターターとオルタネーターが一体化されたコンパクトなアシストモーターと考えればいい。ブレーキ回生時には12kWを発電してリチウムイオンバッテリーに電力を送り込み、55~160km/hの範囲でエンジンを停止させ、燃料の消費を抑えてくれる。22km/h以下ならスタート・ストップ機能が作動するEVモードが使え、早朝や深夜の住宅街でも気を使わずに済む静音走行が可能だ。

駆動方式はFFとAWDのクワトロモデルが設定されているが、日本に導入されるグレードは未発表となっている。

ドライビングについては、ステアリングの切れ角が増すほどにギア比がダイレクト方向に可変し、操作性と快適性が向上する「プログレッシブステアリング」を採用。オプションで、60km/h以下ならリアホイールを最大5度まで操舵可能なAWSシステム「ダイナミックオールホイールステアリング」が用意された。これらの機能により、けっしてコンパクトとはいえない『A6アヴァント』が小さく感じられるはずだ。

豊富なサスペンション設定も特徴のひとつだろう。ノーマルのスチールスプリングサスペンション、スポーツサスペンション、電子制御式ショックアブソーバーサスペンション、そしてアダプティブエアサスペンションの4種類が各グレードによって用意されている。

改良されたリアのスポーツディファレンシャルは電子制御で最適なトルク配分がなされるが、これらをエレクトロニックシャシープラットフォーム(ECP)がトータル制御。さらにドライビングアシスタンスシステムが連動することで、協調制御され、パフォーマンスと省燃費性能を両立する。

走り、快適性、実用性…すべてを併せ持つオールラウンドプレイヤーのワゴン

価格は未定だが、現行モデルが672万~935万円(税込)であることを考えると、700〜950万円あたりになるのではないだろうか。ヨーロッパでは2018年秋から各国の市場に順次導入される。

走りのパフォーマンスに関しては死角なし。さらに、実用性や燃費性能も向上した新型『A6アヴァント』は、あらゆるシーンで活躍してくれるオールラウンドプレイヤーといえるだろう。このクルマを日々のパートナーとすれば、過去には戻れない極上の体験が待っているに違いない。

Text by Taichi Akasaka
Photo by (C) AUDI AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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Audi A6 Avant オフィシャル動画
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第38回 | アウディの最新車デザイン・性能情報をお届け

アウディe-tron GT concept──怪物GTは市販されるのか

「電動化攻勢」。これは、これからのアウディが示した今後の進むべき方向性だ。簡単に言えば、電気自動車やプラグインハイブリッド車を増やしていくということ。具体的には、全世界の主要な市場において、2025年までに12の電気自動車を発売し、電動化モデルの販売台数を全体の約3分の1にすることを目指すという。その第一弾が2018年9月に生産が開始された『e-tron SUV』、第二弾が2019年に登場予定の『e-tron Sportback』。そして、第三弾がLAオートショーで華々しくデビューした『e-tron GT コンセプト』だ。

低い重心のグランツーリスモ。エクステリアに見て取れる次世代のアウディデザイン

『e-tron GTコンセプト』は、4ドアクーペのEV(電動自動車)である。全長4960mm×全幅1960mm×全高1380mmm。フラットでワイドなボディ、そして長いホイールベースといった特徴を備えた、典型的なグランツーリスモデザイン。EVにはめずしいフラットなフロアや低い重心も相まって、全体から受ける印象はアグレッシブでスポーティーだ。加えて、ホイールアーチとショルダー部分には立体的な造形が施され、ダイナミックなポテンシャルを強調している。

もちろん、アウディらしさはしっかりと踏襲。グリルの上部には、『RS』モデルのグリルに採用されたハニカムパターンを想起させるカバーをボディカラーに併せた塗装を施して装着。リヤエンドまで流れるような弧を描くルーフラインは、まごうことなきアウディのデザイン言語だ。

ただし、このアウディのデザイン言語を、次世代へと進化させたと感じさせる部分もある。ひとつは、リヤに向かってキャビンが大きく絞り込まれた意匠だ。そして、アウディデザインを象徴するシングルフレームグリルだ。これまでに発表された『e-tron』シリーズのシングルフレームグリルと比べると、そのアーキテクチャーは、より水平基調で躍動感を漂わせている。

フロントマスクは、矢印形状のマトリクスLEDヘッドライトが印象的だ。ライトにはアニメーション機能が組み込まれ、水平方向に広がる波をイメージした短い点滅がドライバーを出迎える。これは、将来的には市販モデルに搭載される予定だという。

リヤスタイルでは、車幅全体を横切って延びるライトストリップが目につく。外側に向かうにつれてリヤライトユニットへと融合されるこの意匠は、『e-tron』シリーズ共通のもの。視覚的にアウディのEVであることを認識させる。

動物由来の素材を排除。植物由来にこだわったサスティナビリティ重視のインテリア

インテリアは、エクステリアの近未来的でスポーティーな雰囲気と打って変わり、上質さが印象的。そして、日常の使い勝手にも配慮がなされている。

車内水平基調のインテリアが強調された、広々として落ち着いた空間だ。コックピットを中心として、センターコンソール、トップセクションの大型タッチスクリーン、ドアレールとコックピットのラインがドライバーを取り囲むように設置されている。各種機能やインフォテインメントをはじめとする操作系は、人間工学的に最適化された。

インストルメントパネル中央のディスプレイとセンターコンソール上部のタッチスクリーンは、ブラックパネル調仕上げ。一見すると宙に浮いているような印象だ。バーチャルアナログ表示にしたり、航続距離とともにナビゲーションのマップを拡大したり、インフォテインメント機能のメニューを表示させたり、さまざまなレイアウトに変化させることが可能だ。

次世代を感じさせる試みは、目に見える部分だけではない。サスピナビリティ(持続可能性)を重視し、インテリアからは動物由来の素材をいっさい排除。シート地やトリム地には、合成皮革を使用するなど、すべて植物由来を貫いている。

フラッグシップスポーツの『R8』を凌駕する最高出力により暴力的な加速性能を実現

気になる走行性能だが、前後のアスクルに設置されたモーターの最高出力は434kW(590hp)。アウディのフラッグシップスポーツ『R8』が397kW(540hp)なので、どれほどのモンスターマシンかは想像に難くないだろう。数値で表すと、0〜100km/hの加速は約3.5秒、200km/hにはわずか12秒で到達する。ただし、最高速度は航続距離を最大化するために240km/hに制限されているという。

もちろんアウディ伝統の4輪駆動システム「quattro」も健在だ。モーターが発生したトルクは、4つのホイールを介して路面へと伝達。前後のアクスル間だけでなく、左右のホイール間の駆動力も調整する電子制御システムによって、最適なトラクションが得られる。

気になる走行可能距離は、容量90kWh以上のリチウムイオンバッテリーと最大30%以航続距離伸ばすことができる回生システムを採用することで、400kmオーバー(WLTPモード)を達成した。また、充電時間は800Vの充電システムに対応することで、最速20分でバッテリーを80%まで充電可能だ。80%の充電でも320km以上を走行できるという。

夏には映画『アベンジャーズ4』に登場。どこまで市販モデルに性能が継承されるか

『e-tron GT concept』のテクノロジーは、同じフォルクスワーゲン・グループに属するポルシェと密接に協力して開発されている。ポルシェは、開発を進めていた『ミッションE』をブランド初となるEVスポーツカーの『タイカン』として、2019年後半〜2020年に発売する予定だが、『e-tron GT concept』と同じプラットフォームを採用し、出力も『e-tron GT concept』を上回るといわれている。

『e-tron GT concept』はいわゆるショーモデル。今年夏公開予定の映画『アベンジャーズ4』に登場するとアナウンスされているが、このままの状態で市販化はされない。

現在はアウディスポーツによって量産化への移行作業が行われており、量産モデルは2020年後半に登場する予定とされている。デリバリー開始は2021年初頭。このポテンシャルがどこまで市販モデルに引き継がれるか、興味深いところだ。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) AUDI AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Audi e-tron GT concept オフィシャル動画
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