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第60回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

最高級かつ最先端──これがマイバッハの超贅沢SUV

このクルマを、昨今流行りのプレミアムSUVにカテゴライズして良いのだろうか? 強いていえば「超プレミアムSUV」という表現のほうがしっくりくるだろう。メルセデス・ベンツの最高峰ブランド、メルセデス・マイバッハが北京モーターショーで発表したコンセプトカー、『ビジョン メルセデス マイバッハ アルティメット・ラグジュアリー』のことである。「アルティメット・ラグジュアリー」。このようなストレートなネーミングを納得させることができるのは、マイバッハだからこそ。最高級サルーンを中心にライナップするマイバッハが、あえてアルティメット・ラグジュアリーという表現を使ったSUV。カーガイなら興味が湧かないわけがない。

メルセデス・マイバッハが考える最高級で最先端の究極ラグジュアリーSUV

「ビジョン メルセデス マイバッハ 」と聞いて、すぐに思い浮かぶのは『ビジョン メルセデス・マイバッハ 6 カブリオレ』だ。

贅沢の粋を集めつつ、先進的なスタイリングや機能を搭載した2シーターのEVオープンモデルコンセプトで、マイバッハが本気を出して方向性を示した最高級で最先端のオープンカーである。

『ビジョン メルセデス マイバッハ アルティメット・ラグジュアリー』はそのSUVバージョンといってもいいだろう。


フロントマスクには『メルセデス・マイバッハSクラス』と同じ縦基調グリル

便宜上、SUVと表現したが、アンベールされた実車のエクステリアを目にすると、ハイエンドサルーンとSUVにもとづくクロスオーバーといった装いだ。設計責任者の言葉を意訳すると「SUVとサルーンDNAを組み合わせて、これまでにないSUVを作り出す」ということらしい。結果として、3ボックス型セダンとSUVが組み合わさった、個性的なデザインとなったわけだ。

デザインの特徴のひとつが、エッジのなさだ。ボディは滑らかな曲線で構成されており、力でねじ伏せるといったマッチョなイメージは微塵も感じさせない。エレガントながらスポーティな雰囲気は、余裕さえ感じさせる。

個人的に目がいったのは、フロントマスク。ジュネーブモーターショーで発表された『メルセデス・マイバッハSクラス』のマイナーチェンジモデルと同じく、縦基調のフロントグリルが採用されていた。これは『ビジョン メルセデス・マイバッハ 6 カブリオレ』にも取り入れられており、今後のメルセデスのデザインコンセプトを垣間見ることができる。

プライベート空間のような豪華な後部座席には、茶器一式と加熱トレイも装備

インテリアはコンセプトカーらしく、近未来的だ。ホワイトレザーを基調としており、随所に配された「ロゼゴールド」「パールグレー」などのカラーと相まって、豪華な印象を与えてくれる。

特筆すべきは、後席の贅沢さだ。SUVとはいえ、マイバッハの名を冠するだけに、ここは譲れない部分だろう。センターコンソールはリアまで伸びており、左右のシートを隔て、プライベートな空間を演出する。

また、このセンターコンソールには、ティーポットとカップを備えた一体型の加熱トレイが備えられている。「リラクゼーションモード」を選択すると、照明や音楽、香りを組み合わせたムードでお茶を楽しめるという。

マイバッハが提案する超ラグジュアリーSUVは、4つのモーターを使ったEV

気になるパワートレインは、4つのモーターだ。つまりは、『ビジョン メルセデス・マイバッハ 6 カブリオレ』と同じくEVということ。

出力は550kW(750hp)、最高速度は250km/hである。約80kWhのバッテリーは床下にあり、1回の充電による走行距離は500km以上(NEDC:新欧州ドライビング・サイクル基準)。また、350kWの直流充電器による超急速充電にも対応しており、この場合、5分間の充電で約100kmの走行が可能となる。

現状では、あくまでコンセプトモデルで、発売は未定だ。しかし、ロールスロイスでさえSUVモデルを手がける時代。マイバッハのSUVが出ても驚きはしない。むしろ、その日は遠くないだろう。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第77回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

エンスー垂涎の納屋物──メルセデス300SLガルウィング

ヒストリックカーの世界には、「バーン・ファウンド(Barn Found)」と呼ばれるジャンルが存在する。バーンは「納屋」、ファウンドは「見つかった」。つまり、納屋で見つかった古いクルマという意味だ。いわゆる「納屋モノ」。2年前の夏、岐阜県の納屋から発掘された1969年のフェラーリ『365GTB/4“デイトナ”』がオークションで高値落札され、世界中で大きなニュースとなったのは記憶に新しい。そして今年3月、やはり納屋で見つかった古いメルセデス・ベンツが、フロリダ州で開催されたコンクール・デレガンスに登場して注目を集めた。朽ち果てた姿で会場に展示されたそのクルマは、1954年に製造された『300SL“ガルウィング”』。名車中の名車とうたわれる、コレクター垂涎の一台である。

亡き石原裕次郎も愛車にしていたメルセデス・ベンツの名車『300SL“ガルウィング”』

『SLクラス』の「SL」は、ドイツ語でライトウェイトスポーツを意味する「Sport Leicht (シュポルト・ライヒト)」の頭文字からとったものだ。メルセデス・ベンツがラインナップする2シーターオープンカーの最高峰に位置づけられている。その初代モデルとなったのが『300SL』である。1954年のニューヨークモーターショーでデビューした。

通称は“ガルウィング”。特徴のひとつであるガルウィングドアに由来する。『300SL』はワークスレーサーのプロトタイプとして開発されたモデルで、当時のレーシングカーと同じ鋼管スペースフレーム構造をもっていた。それゆえに、ドアの下半分をフレームが通っており、また、開口部の敷居が高いうえに車高が低くて非常に乗り降りがしづらい。こうしたことから、やむを得ずガルウィングが採用されたというエピソードが残っている。

世界初の直噴エンジン搭載車としても知られ、車名の「300」はメルセデス・ベンツの排気量表記で3.0Lを意味する。直列6気筒エンジンは最高出力215psを発生し、最高速度は260km/h。当初は市販予定がなかったが、有力インポーターが北米市場に需要があるとメルセデス・ベンツを説得し、わずか1400台が生産・販売された。そのうちの一台は、あの昭和の大スター、石原裕次郎の愛車となり、現在も北海道小樽市の石原裕次郎記念館に展示されている。その『300SL』が、ご覧のような姿で納屋から発見されたのだ。

半世紀以上もガレージでホコリをかぶっていたが、ほぼオリジナルに近い状態を保持

シャシーナンバー「43」の『300SL』は、2018年末にフロリダ州のとあるガレージで見つかった。発掘したのはドイツ・シュツットガルト郊外に専用施設をもつ「メルセデス・ベンツ クラシックセンター」。同社のヒストリックカーのレストアのほか、レストア済み車両の販売も行う。施設内には真っ赤なボディカラーの『300SL』も展示されている。

この『300SL』は1954年にマイアミ在住のオーナーに出荷された個体で、走行距離計が示しているのは、たったの3万5000kmだ。Englebert社製のCompetition(コンペティション)タイヤにはまだ空気が少し残っていたという。車両自体もほぼ出荷時のままで、ボディパネル、ライト類、ガラスパーツ、グレーのレザーシート、ステアリングホイール、インテリアトリム、パワートレイン、ホイールにいたるまでオリジナルを保持している。

注目してほしいのは、「フロリダ植民400年」を記念した1965年のリアのナンバープレートだ。これを見ると、持ち主は少なくとも1954年から1965年までクルマを所有していたことがわかる。つまり半世紀以上を納屋で過ごしていた可能性が高いのである。

フロリダの国際コンクール・デレガンスには連番シャシーの二台の『300SL』が登場

ボロボロの『300SL』は発見したクラシックセンターの手にわたり、フロリダ州の高級リゾート地、アメリア・アイランドで毎年開催される「アメリア・アイランド・コンクール・デレガンス」(今年は3月7日から10日)にて旧車ファンたちにお披露目された。

その隣に並んでいたのは、見事に修復された鮮やかなブルーの『300SL』。驚いたのは、この個体のシャシーナンバーが「44」だったことだ。そう、納屋で発見された『300SL』の次に生産された個体なのである。『300SL』のような希少なヒストリックカーが連続するシャシーナンバーでコンクール・デレガンスに登場するのはかなりレアな出来事だろう。

『300SL“ガルウィング”』はメルセデス・ベンツのなかでも名車中の名車として知られ、自動車コレクターなら必ず所有したい一台といわれている。その価値は現在も上昇し続けているほどだ。そういう意味では、なんとも貴重で贅沢な光景といえるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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