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第38回 | 大人ライダー向けのバイク

3気筒の咆哮を聞け──トライアンフSpeed Triple RS

トライアンフというと、英国車らしいバーチカルツインのボンネビルファミリーを思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし、現代トライアンフでは、看板モデルとなるのは『スピードトリプル』だろう。パフォーマンスネイキッドに「メーカー製ストリートファイター」というジャンルを確立した立役者である。その最上位機種『スピードトリプルRS』に最新モデルが登場した。

映画『M:I-2』でトム・クルーズが駆ってその名を高めた『スピードトリプル』

『スピードトリプル』は、3気筒エンジンを搭載するスポーツネイキッドモデルだ。初代は1994年に『デイトナ675』のカウルレス版として登場。675ccのミドルクラスエンジンと、街乗りで扱いやすい車体ディメンションとエンジン特性、そして、なによりも斬新で攻撃的なデザインが支持されてヨーロッパで人気となり、セールス的にも成功した。

その後、兄弟モデルの『デイトナ』の刷新に伴って855ccとなり、2002年にはフルモデルチェンジによって955ccへと排気量アップ。まさにストリートファイターと呼ぶにふさわしいパワフルなパフォーマンスを発揮するようになった。

『スピードトリプル』の名が世界に広まったのは、2000年に公開され、この年の興行収入で世界一を記録した映画『ミッションインポッシブル2』の影響が大きい。劇中では、主演のトム・クルーズが『スピードトリプル』を駆って派手なライディングを披露した(もちろんスタントの起用とCGを含めてのものだが…)。

モデルチェンジを受けた新型『スピードトリプルRS』は、シリーズの最上級モデルにあたる。歴代の『スピードトリプル』のなかで「最もパワフルでアグレッシブ」と謳われているマシンだ。

新型『スピードトリプルRS』のエンジンは、やりすぎなほどの最強スペック

トライアンフはひとつのモデルを長期にわたって熟成させ、進化させる伝統を持つ。

しかし、新型『スピードトリプルRS』は明らかに、名実ともにシリーズの頂点を目指して開発されたモデルだ。1050ccという限界近くまでスープアップされた排気量と、それをコントロールするための最新テクノロジーの導入がその事実を物語っている。

結果として、外観からは連想できない最高出力150ps/10500rpm、最大トルク117Nm/7015rpmという驚異的なパワーを獲得した。このスペックだけを見ると、熟練したライダーでなければ扱えない次元に達してしまったかのようで、正直いって“やりすぎ”にも思える。

ただし、その点の配慮はなされているようだ。単にパワフルなだけでなく、最大5種類が選択できるライディングモード、新設計の慣性計測ユニット、切り替え式のトラクションコントロールとコーナリングABSの採用、クルーズコントロールの搭載などによって懐の深さが与えられている。

エンジンの大幅改良によって、レッドゾーンが先代から1000回転上回り、レスポンス向上と高回転の維持時間を長くすることが可能になったという。これは単純に排気量アップによるものではなく、ピストンやクランクなど、多くのムービングパーツや冷却・潤滑においても十分な見直しが図られたことの証なのだ。

先端テクノロジーによって、ストリートでもコーナーでも高い操縦性を発揮

新たに搭載された先端技術のうち、コーナリングABSとコーナリングトラクションコントロールは、制動力の配分や、スリップ率を読み取るトルク制御を独自の技術によって解析し、ストレートでもコーナーでも高いコントロール性を発揮させる。

慣性計測ユニットが「ロール」「ピッチ」「ヨー」の3方向のリーンアングルと加速度を感知してくれる点も、スタビリティを高める重要ポイントだ。

『スピードトリプル』の特徴である片持ち式スイングアームとアルミニウム製ツインスパーフレームは先代から受け継いだものだが、剛性の見直しと軽量化が図られた。また、Arrow製マフラーのヒートガードとエンドキャップ、フロントマッドガード、ラジエターカウルにはカーボンファイバーを採用。これは軽量化というよりはデザイン的な演出だが、明らかに高級感が増している。

フロントブレーキには、先代と同様に4ピストン2パッドのブレンボ製ラジアルモノブロックキャリパーをダブルで装備。タイヤは内外で高い評価を受けるピレリのDiablo Supercorsa(ディアブロ スーパーコルサ)を装着した。

新設計となる5 インチフルカラーTFT ディスプレイには、新たにデザインされた「Speed Triple」のロゴがスタートアップ画面に表示され、搭載されるコンピューターの各種情報が確認できる。

具体的には、スピードメーター、タコメーター、ギアポジション、燃料計、時計、気温、水温、トリップ、燃費、航続可能距離、ライディングモード、メンテナンスインジケーター、警告表示などで、表示スタイルを選択してレイアウトを変更することも可能。もちろん、ラップタイムも選択でききる。

スイッチハウジングにはバックライト付きのボタンを採用しているが、これは小さいながらもオーナーに所有感を満たしてくれるだろう。

新型『スピードトリプルRS』の価格は185万円、デリバリーは2018年6月

カラーは「クリスタルホワイト」「マットジェットブラック」の2種類。いずれのカラーにも、マット仕上げのアルミニウム製リアサブフレーム、赤いピンストライプのホイール、赤いステッチ入りのシート、「RS」のシールが付属する。

『スピードトリプル』は、3気筒エンジン独特のエキゾーストサウンドも魅力のひとつだ。とりわけ、下のリンクのオフィシャルビデオを見ればわかるように、排気量が大きくなり、新しくなったサイレンサーを装着する最上級モデル『RS』が発するそれは、そのパワフルさにふさわしい咆哮といえる。

価格は185万7000円(税込み)。デリバリーは2018年6月初旬を予定している。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Triumph Motorcycles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
TRIUMPH Speed Triple RS オフィシャル動画
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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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