ポルシェの完成車を鉄道で輸送することでCO2の排出量を年間6000トン削減
自動車メーカーの工場で生産された完成車は、まず工場から物流基地へと輸送され、そこから各地のディーラーへと運ばれる。その際にはキャリアカーと呼ばれる自動車運搬用の大型トラックが使われるのが一般的だ。
しかし、化石燃料で動くキャリアカーよりも、グリーンエネルギー(太陽光、風力、水力など)による鉄道輸送のほうが「責任ある持続可能な開発」という意味では正しい。それを2018年1月から実行し始めたのがポルシェである。
ポルシェはドイツ国内にいくつもの生産工場を持つが、そのうちツッフェンハウゼンの主力工場と旧東ドイツ地区のライプツィヒ工場で生産された完成車を、再生可能なグリーンエネルギーによって鉄道輸送している。
この取り組みによって、完成車の物流業務で発生するCO2排出量を年間3%削減することが可能となり、そのCO2は6000トン以上になるという。
2018年中には、さらにドイツ国内の完成車の積み込み駅と貿易港を連絡させる
輸送における「持続可能な開発」への取り組みはこれだけではない。ポルシェは鉄道輸送をさらに拡張する計画を立てている。
完成車は現在、コーンヴェストハイムとライプツィヒの2つの駅から貨物列車に積み込まれているが、2018年中にはコーンヴェストハイムとドイツ北部にある貿易港のブレーマーハーフェンを連絡させる。その結果、鉄道輸送される完成車の割合が約45%増加。従来のキャリアカーの輸送を上回り、CO2排出量がさらに削減されるとしている。
生産工場も同様だ。ポルシェでは2017年1月以降、すべての拠点でグリーンエネルギーを利用しているが、2020年からはツッフェンハウゼンの工場のエネルギー供給をバイオガスに転換し、年間CO2排出量を5000トン削減する。
シュトゥットガルトにある本社周辺の道路では、すでに天然ガスを動力源とする大型トラックが走行してCO2削減に寄与しているほどだ。
「持続可能な開発」への取り組みに見るポルシェの妥協なきスポーツカー作り
「持続可能な社会」への取り組みは、いまや自動車メーカーの命題だ。EV(電気自動車)の開発、ライドシェアへの進出などはその表れである。
カナダの金融情報誌『コーポレート・ナイツ(Corporate Knights)』が2018年1月のスイス・ダボス会議に合わせてまとめた「世界で最も持続可能な企業100社」の報告書には、BMWグループ、メルセデス・ベンツを擁するダイムラー、フランスのルノー、日本からはホンダや日産がランクインした。
そのなかでも、こうしたポルシェの取り組みは、スポーツカーブランドとしての責任感や義務感を強く感じさせる。この姿勢こそが、ポルシェファンから支持を集める「妥協のないクルマ作り」につながっているに違いない。
Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Porsche AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)