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第36回 | ポルシェの最新車デザイン・性能情報をお届け

トラック輸送はもう古い──ポルシェが鉄道に乗る理由

「持続可能な社会」という言葉をよく聞く。環境を壊すことなく人類の消費を支える社会のことだ。人間は資源がなければ生きていくことができない。将来の世代の需要を確保しつつ、現在の世代の需要をも充たすには、自然が再生する時間を考え、資源を使い切らないように配慮する必要がある。そこで提唱されたのが「持続可能な社会」という理念である。この理念への取り組みはさまざまな国や企業で行われているが、とりわけ熱心にならざるをえないのが自動車業界だ。そのなかでも、ポルシェは製造した車両の輸送にまでこの考え方を取り入れている。

ポルシェの完成車を鉄道で輸送することでCO2の排出量を年間6000トン削減

自動車メーカーの工場で生産された完成車は、まず工場から物流基地へと輸送され、そこから各地のディーラーへと運ばれる。その際にはキャリアカーと呼ばれる自動車運搬用の大型トラックが使われるのが一般的だ。

しかし、化石燃料で動くキャリアカーよりも、グリーンエネルギー(太陽光、風力、水力など)による鉄道輸送のほうが「責任ある持続可能な開発」という意味では正しい。それを2018年1月から実行し始めたのがポルシェである。

ポルシェはドイツ国内にいくつもの生産工場を持つが、そのうちツッフェンハウゼンの主力工場と旧東ドイツ地区のライプツィヒ工場で生産された完成車を、再生可能なグリーンエネルギーによって鉄道輸送している。

この取り組みによって、完成車の物流業務で発生するCO2排出量を年間3%削減することが可能となり、そのCO2は6000トン以上になるという。

2018年中には、さらにドイツ国内の完成車の積み込み駅と貿易港を連絡させる

輸送における「持続可能な開発」への取り組みはこれだけではない。ポルシェは鉄道輸送をさらに拡張する計画を立てている。

完成車は現在、コーンヴェストハイムとライプツィヒの2つの駅から貨物列車に積み込まれているが、2018年中にはコーンヴェストハイムとドイツ北部にある貿易港のブレーマーハーフェンを連絡させる。その結果、鉄道輸送される完成車の割合が約45%増加。従来のキャリアカーの輸送を上回り、CO2排出量がさらに削減されるとしている。

生産工場も同様だ。ポルシェでは2017年1月以降、すべての拠点でグリーンエネルギーを利用しているが、2020年からはツッフェンハウゼンの工場のエネルギー供給をバイオガスに転換し、年間CO2排出量を5000トン削減する。

シュトゥットガルトにある本社周辺の道路では、すでに天然ガスを動力源とする大型トラックが走行してCO2削減に寄与しているほどだ。

「持続可能な開発」への取り組みに見るポルシェの妥協なきスポーツカー作り

「持続可能な社会」への取り組みは、いまや自動車メーカーの命題だ。EV(電気自動車)の開発、ライドシェアへの進出などはその表れである。

カナダの金融情報誌『コーポレート・ナイツ(Corporate Knights)』が2018年1月のスイス・ダボス会議に合わせてまとめた「世界で最も持続可能な企業100社」の報告書には、BMWグループ、メルセデス・ベンツを擁するダイムラー、フランスのルノー、日本からはホンダや日産がランクインした。

そのなかでも、こうしたポルシェの取り組みは、スポーツカーブランドとしての責任感や義務感を強く感じさせる。この姿勢こそが、ポルシェファンから支持を集める「妥協のないクルマ作り」につながっているに違いない。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Porsche AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第53回 | ポルシェの最新車デザイン・性能情報をお届け

ポルシェ カイエンクーペ──SUVクーペに真打ちが参戦

世界の自動車市場を席巻するプレミアムSUVというジャンルは、2002年にポルシェ初のSUVとしてデビューした『カイエン』から始まった。スーパーカー並の性能を有するランボルギーニ『ウルス』やベントレー『ベンテイガ』も、『カイエン』の存在がなければ登場はもっと後だったかもしれない。その高級SUVの祖に、これまでクーペボディをもつ派生車種がラインナップされていなかったのが不思議なくらいだ。今年4月、ポルシェは上海で『カイエン クーペ』を初公開した。まさしく、満を持してのデビューである。

より低くスポーティなルックスになった『カイエン』。ライバルは『GLEクーペ』?

プレミアムSUV市場には、すでにいくつかのSUVクーペが存在する。メルセデス・ベンツなら『GLCクーペ』『GLEクーペ』、BMWなら『X4』『X6』。高級車ブランドがこぞってSUVに注力した結果、市場は多様化し、多くの選択肢をユーザーに用意することが求められるようになった。そうしたなかで、元祖プレミアムSUVである『カイエン』にクーペモデルが加わるのは必然。むしろもっと早く市場に投入してもよかったかもしれない。

『カイエン クーペ』はその名のとおり、ボディ後部にいくほど傾斜していく流麗なルーフラインをもったクーペルックのSUVだ。横から見ると、フロントウィンドウとAピラーが通常モデルよりも低く、寝かされていることがわかる。ルーフエンドには、クーペスタイルを強調するかのようにルーフスポイラーが装着された。ボディサイズは全長4931×全幅1983×全高1676mm。通常モデルと比べて全長が13mm長くなり、全高は20mm低くなった。さらに、新設計の後部ドアとフェンダーにより形状が変わったことで、全幅も18mmワイドになっている。全体として、より低くスポーティになった印象だ。

ルーフは2種類。固定式パノラマガラスルーフが標準で、カーボンルーフをオプションで選択できる。0.92m2のガラスルーフはかつてない開放感を乗員に与え、統合されたローラーブラインドが直射日光や寒さを防いでくれる。カーボンルーフは『911 GT3 RS』と同様に中央に窪みを持つ形状で、いかにもスポーティカーといった雰囲気を醸し出す。

『カイエンターボ クーペ』は最高出力550馬力。0~100km/h加速はなんと3.9秒

クーペ化にともなって室内空間にも変更が加えられた。標準モデルとの大きな違いは、後席がそれぞれ独立して2座になり、4つのスポーツシートを備えるようになったことだ(ベンチシートもオプションで選べる)。とりわけ前席は、インテグレーテッドヘッドレストと8ウェイ電動調節を備えたスポーツシートを採用し、優れた快適性とホールド性でドライバーをサポートする。また、全高は低くなったものの、リアシートの着座位置を標準モデルより30mm低くしたことで、後席のヘッドスペースも十分な広さを確保した。

ラゲッジルームの容量は通常時で625L。後席を畳めば最大1540Lまで拡大することが可能だ(『カイエンターボ クーペ』では通常時600L、最大で1510Lとなる)。

パワーユニットはグレード別に2種類のガソリンエンジンが用意された。『カイエン クーペ』は3.0L V型6気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力は340ps(250kW)、最大トルクは450N・m。0~100km/h加速は5.9秒(オプションの「軽量パッケージ」)、最高速度は243km/hだ。『カイエンターボ クーペ』は4.0L V型8気筒ツインターボエンジンを搭載し、最高出力は550ps(404kW)、最大トルクは770N・m。こちらの動力性能はさらに強烈で、0~100km/h加速は3.9秒に短縮し、最高速度は286km/hに達する。

すでに日本国内で予約受注も開始。『ウルス』のエンジンを積む最強グレードも登場?

『カイエン クーペ』『カイエンターボ クーペ』ともに、すでに日本国内での予約受注を開始しているが、国内発売日はまだ未定。一方、ヨーロッパでは、この2台の中間グレードとなる『カイエンS クーペ』が5月15日に発表され、さらにランボルギーニ『ウルス』と同型のエンジンを搭載するハイパフォーマンスモデルが設定されるとの情報もある。実現すれば、最高出力640ps以上の最強モデルがシリーズに加わることになるだろう。

まさに、プレミアムSUVブームを牽引してきた『カイエン』による怒涛のニューモデル攻勢といった趣だ。高級SUV市場が今後ますます活性化していくのは間違いない。1000万円以上の高級SUVを買える裕福な人々にとっては、選択肢が広がるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Porsche AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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