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第6回 | 世界の名車コレクション

ゼロウーノ Duerta──巨匠の精神が宿るスーパーカー

ジョルジョット・ジウジアーロは、ピニンファリーナと並ぶイタリアのインダストリアルデザイン界の巨匠である。とりわけカーデザインにおける功績は大きく、数多の名車を手がけてきた。たとえば、アルファロメオ『ジュリア スプリントGT』、フィアット『850スパイダー』、1970年代の日本車を代表する傑作、いすゞ『117クーペ』も彼の作品だ。このジウジアーロが設立した「イタルデザイン」の最新作がお披露目された。ランボルギーニ『ウラカン』をベースにした『ゼロウーノ』のオープントップバージョンとなる『ゼロウーノ ドゥエルタ』である。

ジウジアーロのイノベーティブな精神を受け継ぐスーパーカー『ゼロウーノ』

イタルデザインはちょうど50年前の1968年、ジウジアーロによってイタリア・トリノに設立された。1974年にデビューした初代フォルクスワーゲン『ゴルフ』は、初期のイタルデザインの代表作だ。自動車だけではなく、イタリア国鉄の車両、ニコンの一眼レフカメラのデザインなどでも知られる。

現在のイタルデザインはフォルクスワーゲン・グループの一員となり、元ランボルギーニのデザイナー、フィリッポ・ペリーニが率いている。

とはいえ、ジウジアーロのイノベーティブな精神はブランドに脈々と受け継がれてきた。イタルデザインは1968年以来、200台以上のコンセプトカーを手がけ、数千台の量産モデルを送り出している。

その新体制のイタルデザインが新しいプロジェクト「イタルデザイン・アウトモビリ・スペチアリ」の第一弾として送り出したのが、2017年のジュネーブモーターショーで発表されたスーパースポーツの『Zerouno(ゼロウーノ)』だ。

最高速度330km/h、タルガトップとなった最新作『ゼロウーノ ドゥエルタ』

ベースとなったのはランボルギーニ『ウラカン』。ミッドシップに搭載されるパワーユニットも『ウラカン』と同じ5.2LのV10自然吸気エンジンだ。

ここに7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を組み合わせ、最高出力は610PS、最大トルクは560Nmを発揮。0-100km/h加速は3.2秒、最高速度は330km/hに達するという。

2018年モデルとなる『ゼロウーノDuerta(ドゥエルタ)』は、この『ゼロウーノ』のタルガトップ仕様だ。発表前は「ゼロウーノ ロードスター」と呼ばれていた。

車名の「ドゥエルタ」はイタルデザインが本社を置くトリノを含むピエモンテ州の方言で、「オープン」を意味する。タルガトップとは、Bピラーを固定したままルーフパネルを取り外すことのできるオープンカーのことだ。

クーペと同様にボディは100 %カーボンファイバーで、タルガトップのルーフもカーボンファイバー製。このルーフは手動で着脱可能となっている。

世界限定わずか5台、厳選した上顧客に向けて少量を販売するビジネスモデル

『ゼロウーノ ドゥエルタ』は世界限定わずか5台しか生産されない。クーペモデルもやはり限定5台しか販売されず、正式に発表される前にすべて完売した。おそらく『ゼロウーノ ドゥエルタ』もすでに全台が売約済みに違いない。

なぜ5台しか生産しないのか。それは、「イタルデザイン・アウトモビリ・スペチアリ」というプロジェクトが、厳選した上顧客に向けて少量を販売するビジネスモデルだからだ。希少性を打ち出すことで、その価値を徐々に高めていく戦略である。

高付加価値の少量生産というビジネスモデルは、規模こそ違うものの、じつはフェラーリやランボルギーニも同じ。イタリアのスーパーカーは歴史的に少量生産が主流で、イタルデザインもそれも踏襲しているわけだ。

そのなかでも、『ゼロウーノ ドゥエルタ』はイタリアを代表するカーデザインの巨匠の精神を受け継ぐスーパーカーだ。いずれ、今以上に大きな価値を持つクルマとなるかもしれない。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Italdesign Giugiaro S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第10回 | 世界の名車コレクション

GT500スーパースネーク──伝説のマッスルカーを見よ

アメリカのカーガイにとって、おそらく「シェルビー・マスタング」は永遠に特別な存在である。登場したのは1964年。製作したのはキャロル・シェルビー率いるシェルビー・アメリカンだ。これはフォード『マスタング』をベースにしたチューニングカーの総称で、1967年に作られた一台限りの『GT500スーパースネーク』はアメ車ファンのあいだで今も語り継がれる。その伝説的なマッスルカーが当時の姿のまま現代に甦ることとなった。5月中旬、シェルビー・アメリカンが1967年型の『シェルビーGT500スーパースネーク』の復刻を発表したのだ。

外観も中身も1967年のまま再来する『シェルビーGT500スーパースネーク』

キャロル・シェルビーは、カウボーイハットとブーツがよく似合ったテキサス生まれの元レーシングドライバーだ。F1グランプリに参戦し、1959年のル・マン24時間レースではアストンマーチンを駆って優勝している。これによって母国のモータースポーツ界でヒーローとなった。

しかし、その名が知られるようになったのは、むしろ開発者となって以降だろう。1960年にドライバーを引退すると、アメリカに帰ってレーシングコンストラクターを設立。最初に手がけた『シェルビー・コブラ』は大人気となった。それがのちに数多の名車を生むことになるシェルビー・アメリカンである。

「シェルビー・マスタング」は、1964年に発売されたフォード『マスタング』をベースにシェルビーがチューニングしたレース用のマシンだ。フォードは『マスタング』を宣伝する目的で、SCCA(スポーツカークラブ・オブ・アメリカ)に参戦。そのホモロゲーション(規定認証)である「100台以上の販売実績のある車両」という規定をクリアするためのクルマだった。

ロードカーとして発売された『シェルビーGT350』は人気を集め、1967年には7.0Lエンジンを搭載してストリート向けに快適性を向上させた『シェルビーGT500』も登場。空力を見直されたボディはデザイン的にも魅力を高め、なにより"COBRA"のバッジがつけられた記念すべきモデルともなった。

しかし、今回「追加生産」として復刻されるのは、同じ1967年型の『GT500』でも、ワンオフの『GT500 Super Snake(スーパースネーク)』なのである。

『GT500スーパースネーク』は、グッドイヤーのハイパフォーマンスタイヤの開発と連携した高速走行試験用に作られたモデルで、さらにいえば、量産化を視野に入れながら実現することのなかった車両だ。

アメ車好きなら、2013年にシェルビー・アメリカンが6代目『マスタング』をベースにした「スーパースネーク」を製作したことを覚えているだろう。ただし、これはあくまで2013年モデルであり現代のクルマ。今回は、ルックスも中身も1967年当時のままの『GT500スーパースネーク』が再来するのだ。

復刻版『GT500スーパースネーク』に与えられるVINコードとシリアル番号

ファストバックスタイルのボディで目を引くのは、オリジナルモデルと同じ3本の青いラインだ。エンジンもオリジナルに敬意を払い、シェルビー・エンジンコーポレーションが製造するレース仕様の427ci(約7.0L)のV型8気筒を搭載する。マッスルカーと呼ぶにふさわしく、最大出力は1967年当時より30ps高められた550psを発揮する。

しかし、エンジンブロックはオリジナルのスチール製から100ポンド程度軽いアルミ製に変更された。あり余るトルクに対応するために、組み合わされるトランスミッションは4速MTだ。

大径のフロントディスクブレーキや大きなフライパンのようなエアクリーナーケースも当時のままである。とはいえ、ステアリングのアシストや排ガス対策といった現代に必要な手配はされている。

タイヤは当然のようにグッドイヤーの15インチ「サンダーボルト」。というのも、シェルビー・アメリカンは当時、西海岸でグッドイヤーのディストリビューターをつとめていたので、ほかのメーカーのタイヤを着けることはあり得ないのだ。ちなみに、1967年に行ったハイパフォーマンスタイヤの開発は見事に結果を出し、テキサスのテストコースでキャロル・シェルビー自身がドライブし、170マイル(274km/h)という同クラスの世界速度記録を樹立している。

うれしいことに、この復刻版『GT500スーパースネーク』には、1967年に販売された当時のVINコード(車両識別番号)に加え、シェルビーから公式なシリアルナンバーが与えられている。まさしくガレージモデルには真似のできない正しい血統を表しているようだ。

復刻モデルの価格は日本円にして約2700万円、生産されるのはわずか10台のみ

復刻版『GT500スーパースネーク』は顧客のオーダーに応じて生産される。予定の生産台数はわずかに10台。価格は24万9995ドル、日本円にすると約2700万円だ。

キャロル・シェルビーはビジネスの拡大にはあまり興味がなく、レースカーとして「とにかく速い車を」と望み、彼とシェルビー・アメリカンを創立したマネージャーのドン・マケインは、会社を成長させるために「50台は作りたい」と語っていたという。

しかし、残念なことに、ふたりともすでに亡くなってしまっている。この10台の復刻が彼らにとって「仕事の完了」になったことを願わずにはいられない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Carroll Shelby International
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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