名門ブランドが送り出す「世界初のフルサイズ・ラグジュアリーSUVクーペ」
「砂漠のロールスロイス」。ランドローバーのフラッグシップモデルである『レンジローバー』を形容するときに多用される言葉だ。『レンジローバーSVクーペ』は、まさにその名に相応しい。
下世話な話になるが、価格からしてこれまでの『レンジローバー』を大きく上回る。その額、24万ポンド(約3529万円)。もちろん、ランドローバーのなかで最高級のモデルだ。
50年前にラクジュアリーSUVという新ジャンルを生み出した『レンジローバー』だが、『レンジローバーSVクーペ』は「世界初のフルサイズ・ラグジュアリーSUVクーペ」を謳っている。ひと昔前までSUVは武骨なイメージだったが、今ではスタイリッシュなクーペスタイルもめずらしくない。
しかし、王道である『レンジローバー』が本気で手がけると、均整のとれた美しさと力強い外観が見事に両立し、単にスタイリッシュなだけではない、気高い雰囲気でオーラとも呼べる存在感を醸し出す。象徴的なフローティングルーフ、途切れのないウエストラインと引き締まったテールといった『レンジローバー』のヘリテージが受け継がれていることも、気高い雰囲気でオーラをまとった理由のひとつだろう。
王室御用達らしい正統派の上質さが散りばめられた贅を尽くしたインテリア
インテリアは“贅”のひと言につきる。パノラミックルーフから車内に注ぎ込む光はゆったりとした上質な空間を演出。手作業で丁寧に仕上げられたウッドパネルはオーセンティックな雰囲気だ。
ステアリングホイール・リム、ドアケース、センターコンソール、インストルメントパネル、ラゲッジコンパートメントフロアは、「ノーティカ」「ノーティカ ブラック アッシュ」「サントス バリサンダー」の3種類から選択できる。なかでも、ウォルナットとシカモアを組み合わせた「ノーティカ」は、『レンジローバー』では初めての採用となる。
シートに使われている革は、柔らかなセミアニリンレザー。1905年から110年以上の歴史を誇るタンナリー(なめし工場)のみで作られており、 グレインと呼ばれる革本来の自然な風合いを活かしつつ、独自のダイヤモンドキルテッドデザインを施している。
王室御用達らしい正統派の上質さを散りばめる一方で、コンテンポラリーな要素も随所に取り入れられた。ロータリーシフターなどに施された細かい凹凸状のローレット加工は、モダンな雰囲気にひと役買っている。
パワーユニットは史上最もパワフルな5.0L V8スーパーチャージャーエンジン
クーペモデルだけに、走りのパフォーマンスも圧巻だ。
最低地上高は、スタンダードモデルより8mm低く、パフォーマンスと美しさを両立させている。ランドローバーは王室御用達ということもあり、「昔は、英国貴族が所領を馬で回っていた。今はそれがレンジローバーに変わった」と例えられることがある。馬に例えるなら、『レンジローバーSVクーペ』はサラブレッドのような走りも期待できそうだ。
パワートレインは、『レンジローバー』史上最もパワフルな5.0L V8スーパーチャージャーガソリンエンジン。組み合わされるトランスミッションは、8速ZFオートマチックだ。最高出力は565PS、最大トルクが700Nm。0-100km/h加速は5.3秒、最高速度は266km/hを誇る。
エアサスペンションは、走行速度が65mph(約106km/h)以上になると、自動的に車高を15mm低くし、走行安定性を高め、燃費を最小限に抑えてくれる。
それ以外にも5つの設定が可能だ。通常の車高より最大で50mm低い「アクセスハイト」、時速80km/hまでなら通常より最大40mm高い「オフロード1ライドハイト」、時速50km/hまでなら通常より最大で75mm高い「オフロード2ライドハイト」、そして、障害物が検知されたときには、自動または手動で車高を30〜40mm高くすることもできる。
もちろん、SUVとしての悪路走行性能も高い。ツインスピード・トランスファー・ボックスを搭載したフルタイム4WDシステムを採用し、アクティブ・ロッキング・リア・ディファレンシャル、さらに「ダイナミック」「エコ」「コンフォート」「草・砂利・雪」「泥・轍」「砂・石・徐行」から選べる走行モードによって、どのような路面でも高い走破性能を発揮してくれる。
価格は約3529万円〜、世界限定999台しか販売されない超プレミアムなモデル
24万ポンド(約3529万円)という金額もさることながら、世界限定999台しか販売されない超プレミアムモデルである点もその価値を高めている。
ロールスロイス、ランボルギーニ、ベントレーなど、名だたる高級車ブランドがしのぎを削るプレミアムSUV市場だが、「フルサイズ・ラグジュアリーSUVクーペ」という新しいジャンルを、王道にして本命の『レンジローバー』が切り拓いていきそうだ。
Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Jaguar Land Rover Automotive PLC
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)