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第27回 | アウディの最新車デザイン・性能情報をお届け

電脳化したアッパーミドルセダン──アウディA6セダン

2017年に『A8』と『A7スポーツバック』を相次いで発表したアウディ。「次は中核を成す『A6』」と誰もがそのデビューを待ちわびていたが、ついにジュネーブモーターショー2018で新型となる5代目が発表された。4代目のデビューが2011年なので、じつに7年目のフルモデルチェンジとなる。

アウディの中核車種『A6セダン』の最大のポイントは近未来的なデジタル化

アウディ『A6』は、いわゆるEセグメントに属するアッパーミドルセダン。メルセデス・ベンツ『Eクラス』やBMW『5シリーズ』がライバルとなることでわかるように、販売戦略の重責を担うモデルだ。これまでは、走行性能や快適性を追求し、そこを最大限訴求してきたのだが、今回の発表では、時代の変化を感じた。注目したのは、プレスリリースの記載順序である。

新車のプレスリリースは、前述の通りエクステリアのこだわりや走行性能など、「クルマとしての魅力」から解説が始まることが多い。しかし『A6』では、最初に先進的なデジタル化について触れられている。

特に強調されているのが、未来的かつ直感的な操作ができる「MMIタッチレスポンス操作システム」だ。すでに『A7スポーツバック』に搭載されており、上下に分かれた2つの大型高解像度タッチディスプレイでさまざまな機器を操作する。

上部のディスプレイでは、インフォテインメントシステムの操作。下部では空調システムの操作や文字入力を行う。タッチするとボタンを押したときと同じように、触覚と音によるフィードバックも発生し、ごく自然に操作ができるように工夫されている。また、ボイスコントロール機能も備えており、対話をしながらの操作も可能だ。

オプションになるが、「MMIナビゲーションプラス」は、過去に走行したルートの学習機能があり、オンラインのルートガイダンスや道路標識やハザード情報などを受け取ることができる。

また、ドライバーなら7人分、最大400のパラメーターを設定して自分のユーザープロファイルを記憶させることも可能だ。お気に入りボタンが設置され、乗員の好みの設定を簡単かつ素早く呼び出せるという。

デジタル化は駐車機能にも及んでいる。「パーキングパイロット」と「ガレージパイロット」は、スマホを利用した自動駐車機能で、パーキングスペースへの駐車などの操作を自動的に行ってくれる。ドライバーはクルマから降り、スマートフォンの「myAudiアプリ」を介して機能をスタート。あとは駐車プロセスを見守るだけでいい。

パワーユニットには省燃費を実現してくれる「マイルドハイブリッド」を搭載

これらの次世代装備も重要だが、カーガイにとってはドライビングエクスペリエンスも譲ることができないエッセンスだろう。もちろん、新型『A6セダン』はその点においても抜かりはない。

パワートレインはガソリンとディーゼルの2種類が用意される(ヨーロッパ導入時)。ガソリンは、ターボチャージャー付きV6エンジン「3.0 TFSI」。最高出力250kW(340PS)、最大トルク500Nmを発生し、0〜100km/hを5.1秒で加速する。最高速度は250km/hだ。

ディーゼルは「3.0 TDI」で、最高出力210kW(286PS)、最大トルクは620Nmに達する。これらのエンジンにはマイルドハイブリッドが組み込まれ、実際の走行条件では、100km走行あたり最大0.7Lの燃料消費が削減される。

走行性能では、ダイナミック オールステアリングホイール(4輪操舵)とプログレッシブステアリングを採用し、刷新された足回りも相まって、よりシーンに合わせて最適な走りが可能になった。市街地ではコンパクトカーのような小回りを実現し、ワインディングではスポーツカーのような俊敏な走り、高速道路では余裕ある快適な走りを提供してくれる。

セダンの王道を継承しつつ、スポーティでエレガントな『A6セダン』の外観

エクステリアは、『A8』『A7スポーツバック』と続くデザイン言語を踏襲している。

長いボンネットとロングホイールベース、短いオーバーハングは、バランスの取れたプロポーションで、セダンの王道から外れていない。しかし、そのなかに『A6』が持つスポーティでエレガントなキャラクターが表現されている。特にスポーティさは、低くワイドなシングルフレームグリル、フラットなヘッドライト、パワフルな造形のエアインレットが圧巻だ。

3本のラインが印象的なサイドビューは、車高を実際よりも低く見せる効果を生み出す。そして忘れてはいけないのが、ホイール上のパワフルな膨らみだ。これこそ、『A6』が「quattro(クワトロ)」の遺伝子を受け継ぐクルマであることを示すアイコンなのだから。

インテリアもハイテク装備が充実、レッグルームはライバル車をしのぐ広さ

インテリアは、ハイテクで洗練された印象だ。ハイテクさは、まずセンターコンソールに見てとれる。ドライバーに向けて角度をつけて「MMIタッチレスポンス」のディスプレイを設置。このディスプレイは、イグニッションをオフにすると、まるで存在しないかのように姿を消してしまう。こういったこだわりも、高級感を醸し出す要素のひとつだ。

洗練された印象はブラックを基調としたインパネ周りにも滲み出る。水平ラインを採用することで広々とした感覚を生み出した。

もちろん、室内空間は広く“感じる”だけではない。先代モデルよりも拡大されたリヤシートのレッグルームは、ライバル車をしのぐ広さを確保した。ヘッドルームやショルダールームも、先代モデルより広くなっている。

ドイツでは2018年6月から販売が開始される予定で、『A6セダン50 TDI』のベース価格は、5万8050ユーロ(約766万円)となっている。日本へのデリバリーはアナウンスされていないが、上陸が待ち遠しい一台だ。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) AUDI AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第38回 | アウディの最新車デザイン・性能情報をお届け

アウディe-tron GT concept──怪物GTは市販されるのか

「電動化攻勢」。これは、これからのアウディが示した今後の進むべき方向性だ。簡単に言えば、電気自動車やプラグインハイブリッド車を増やしていくということ。具体的には、全世界の主要な市場において、2025年までに12の電気自動車を発売し、電動化モデルの販売台数を全体の約3分の1にすることを目指すという。その第一弾が2018年9月に生産が開始された『e-tron SUV』、第二弾が2019年に登場予定の『e-tron Sportback』。そして、第三弾がLAオートショーで華々しくデビューした『e-tron GT コンセプト』だ。

低い重心のグランツーリスモ。エクステリアに見て取れる次世代のアウディデザイン

『e-tron GTコンセプト』は、4ドアクーペのEV(電動自動車)である。全長4960mm×全幅1960mm×全高1380mmm。フラットでワイドなボディ、そして長いホイールベースといった特徴を備えた、典型的なグランツーリスモデザイン。EVにはめずしいフラットなフロアや低い重心も相まって、全体から受ける印象はアグレッシブでスポーティーだ。加えて、ホイールアーチとショルダー部分には立体的な造形が施され、ダイナミックなポテンシャルを強調している。

もちろん、アウディらしさはしっかりと踏襲。グリルの上部には、『RS』モデルのグリルに採用されたハニカムパターンを想起させるカバーをボディカラーに併せた塗装を施して装着。リヤエンドまで流れるような弧を描くルーフラインは、まごうことなきアウディのデザイン言語だ。

ただし、このアウディのデザイン言語を、次世代へと進化させたと感じさせる部分もある。ひとつは、リヤに向かってキャビンが大きく絞り込まれた意匠だ。そして、アウディデザインを象徴するシングルフレームグリルだ。これまでに発表された『e-tron』シリーズのシングルフレームグリルと比べると、そのアーキテクチャーは、より水平基調で躍動感を漂わせている。

フロントマスクは、矢印形状のマトリクスLEDヘッドライトが印象的だ。ライトにはアニメーション機能が組み込まれ、水平方向に広がる波をイメージした短い点滅がドライバーを出迎える。これは、将来的には市販モデルに搭載される予定だという。

リヤスタイルでは、車幅全体を横切って延びるライトストリップが目につく。外側に向かうにつれてリヤライトユニットへと融合されるこの意匠は、『e-tron』シリーズ共通のもの。視覚的にアウディのEVであることを認識させる。

動物由来の素材を排除。植物由来にこだわったサスティナビリティ重視のインテリア

インテリアは、エクステリアの近未来的でスポーティーな雰囲気と打って変わり、上質さが印象的。そして、日常の使い勝手にも配慮がなされている。

車内水平基調のインテリアが強調された、広々として落ち着いた空間だ。コックピットを中心として、センターコンソール、トップセクションの大型タッチスクリーン、ドアレールとコックピットのラインがドライバーを取り囲むように設置されている。各種機能やインフォテインメントをはじめとする操作系は、人間工学的に最適化された。

インストルメントパネル中央のディスプレイとセンターコンソール上部のタッチスクリーンは、ブラックパネル調仕上げ。一見すると宙に浮いているような印象だ。バーチャルアナログ表示にしたり、航続距離とともにナビゲーションのマップを拡大したり、インフォテインメント機能のメニューを表示させたり、さまざまなレイアウトに変化させることが可能だ。

次世代を感じさせる試みは、目に見える部分だけではない。サスピナビリティ(持続可能性)を重視し、インテリアからは動物由来の素材をいっさい排除。シート地やトリム地には、合成皮革を使用するなど、すべて植物由来を貫いている。

フラッグシップスポーツの『R8』を凌駕する最高出力により暴力的な加速性能を実現

気になる走行性能だが、前後のアスクルに設置されたモーターの最高出力は434kW(590hp)。アウディのフラッグシップスポーツ『R8』が397kW(540hp)なので、どれほどのモンスターマシンかは想像に難くないだろう。数値で表すと、0〜100km/hの加速は約3.5秒、200km/hにはわずか12秒で到達する。ただし、最高速度は航続距離を最大化するために240km/hに制限されているという。

もちろんアウディ伝統の4輪駆動システム「quattro」も健在だ。モーターが発生したトルクは、4つのホイールを介して路面へと伝達。前後のアクスル間だけでなく、左右のホイール間の駆動力も調整する電子制御システムによって、最適なトラクションが得られる。

気になる走行可能距離は、容量90kWh以上のリチウムイオンバッテリーと最大30%以航続距離伸ばすことができる回生システムを採用することで、400kmオーバー(WLTPモード)を達成した。また、充電時間は800Vの充電システムに対応することで、最速20分でバッテリーを80%まで充電可能だ。80%の充電でも320km以上を走行できるという。

夏には映画『アベンジャーズ4』に登場。どこまで市販モデルに性能が継承されるか

『e-tron GT concept』のテクノロジーは、同じフォルクスワーゲン・グループに属するポルシェと密接に協力して開発されている。ポルシェは、開発を進めていた『ミッションE』をブランド初となるEVスポーツカーの『タイカン』として、2019年後半〜2020年に発売する予定だが、『e-tron GT concept』と同じプラットフォームを採用し、出力も『e-tron GT concept』を上回るといわれている。

『e-tron GT concept』はいわゆるショーモデル。今年夏公開予定の映画『アベンジャーズ4』に登場するとアナウンスされているが、このままの状態で市販化はされない。

現在はアウディスポーツによって量産化への移行作業が行われており、量産モデルは2020年後半に登場する予定とされている。デリバリー開始は2021年初頭。このポテンシャルがどこまで市販モデルに引き継がれるか、興味深いところだ。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) AUDI AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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Audi e-tron GT concept オフィシャル動画
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