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第8回 | トヨタの最新車デザイン・性能情報をお届け

まるで開拓時代の黒馬──北米版ハイラックスTRDプロ

昔を知る大人の男性は、トヨタ『ハイラックス』『ハイラックスサーフ』と聞くと「おしゃれな四駆」をイメージするかもしれない。1980〜90年代には、リフトアップしたりワイドタイヤを履いたりして渋谷を流す若者がたくさんいた。しかし、この2車種の「TRDプロ仕様」を当時のイメージのまま見ると、度肝を抜かれるに違いない。アメリカ版『ハイラックス』は、なんともタフすぎるクルマなのだ。

岩場に砂漠に、道なき道を走破する北米版『ハイラックス』のTRDプロ仕様モデル

1990年代のRVブームを経験した40〜50代にとって、トヨタ『ハイラックス』『ハイラックスサーフ』は思い出深く、同時に今なお人気の高いモデルだ。

そんな根強い人気ぶりが後押ししたのか、2017年9月には『ハイラックス』の国内発売が13年ぶりに復活。『ハイラックス』は北米では販売されていたが、日本国内では2004年に販売が終了していたのだ。指をくわえて北米モデルを眺めるしかなかったファンは、感激の涙を流したことだろう。

北米では、ピックアップの『ハイラックス』は『TUNDRA(タンドラ)』『TACOMA(タコマ)』、SUVの『ハイラックスサーフ』は『4 Runner(4ランナー)』というペットネームでそれぞれ発売されている。

この3車種をベースに、オフロード性能を高め、トヨタの豊富なレース経験が注ぎ込まれたモデルが『TRDプロ』だ。「TRD」とは、「トヨタ レーシング ディベロップメント」の頭文字で、自動車メーカー直系のチューニングが施されていることを意味する。

2018年2月、このTRDプロ仕様の『タンドラ』『タコマ』『4ランナー』がシカゴオートショーで世界初公開された。その内容は、群を抜いたオフロード性能と装備で固められ、岩場に砂漠に、道なき道を走破する仕様となっている。

「Xゲーム」のマニア垂涎! TRDプロ仕様の3車種に装備されるFOXのショック

注目すべきは、新型のTRDプロにはFOXのショックが装着されていることだ。従来のTRDプロはビルシュタインのショックが採用されていた。

「FOXのショック」とは、狐のシッポのアイコンで知られ、おもにモトクロスバイクやマウンテンバイクにサスペンションを供給しているFOXレーシングのショックアブソーバーである。FOXがピックアップトラックやRVのショックを開発しているとは知らなかった。これはXゲーム(ESPNが主催するエクストリームスポーツの大会)のマニアにとっては垂涎の装備だろう。

また、『タンドラ』『タコマ』は、砂漠やデザート地帯での長距離走行に耐えられるように、空気取り入れ口として可動式の「TRDデザートエアインテーク」を装着。『4ランナー』には、新設計のルーフラック、地面の岩からスタビライザーを守る「TRD」のロゴ入りスキッドプレートが採用された。こちらはテキサスのカウボーイが拍車を鳴らし、ドバイの王族は膝を打つ装備だ。

さらに、『タンドラ』は、抜群の明るさで定評のあるリジッドインダストリー社製LEDフォグライトと18インチのBBS製アルミホイールも装備する。「TRD」のロゴの入ったマットが敷かれたインテリアも見逃せない。

カラーバリエーションは、3車種ともに「スーパーホワイト」「ミッドナイトブラックメタリック」「ブードゥーブルー(TRDプロ専用色)」の3色が用意される。北米での発売は2018年秋予定で、価格は未定だ。

アメリカでは岩場も沢もデザート地帯も走り抜く「タフすぎるクルマ」が憧れの的

こうしたクルマがなぜ北米で発売されるかというと、それは彼の地でRVやピックアップトラックが確固たる地位にあるからだ。

クルマは「走ってナンボ」であり、開拓時代の黒馬のように、アメリカでは岩場も沢もデザート地帯も走り抜くクルマが憧れの的となっている。なにせ、あのNASCAR(ストックカーレース)が主催するピックアップトラックだけのレースもあるくらいだから、その人気ぶりがわかろうというもの。

なんともタフすぎるアメリカ版『ハイラックス』。こんなすごいクルマに普通に乗れるなら、次はアメリカに生まれたい。そう感じた男性も少なくないのではないか。

Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) Toyota Motor Sales, U.S.A., Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第17回 | トヨタの最新車デザイン・性能情報をお届け

超屈強なフルサイズSUV──トヨタ セコイアTRDプロ

日本の自動車メーカーが作るクルマには「日本では買えない海外専用モデル」というものが存在する。とくにSUVやピックアップトラックには、北米専用モデルが多い。ホンダなら『パイロット』『リッジライン』、日産なら『タイタン』にインフィニティ『QX70』。トヨタのフルサイズSUV『セコイア』も、そのうちの一台だ。この巨大な北米専用SUVに、モータスポーツ直系のチューニングを施した「TRDプロ」が加わった。日本では見ることもその性能を堪能することもできない、アメリカならではフルサイズSUVである。

全長5mの巨大なボディに豪華な装備。トヨタ『セコイア』は北米市場で人気のSUV

アメリカでは、フルサイズSUVを持つことがひとつのステータスになっている。多用途的とは言いがたいスポーツカーと違い、日常からレジャーまで幅広く利用でき、グレードによっては高級セダンに匹敵する乗り心地を実現し、さらに頑丈な車体は回避安全の意味でも頼りがいがあるためだ。VIPやセレブレティも移動にフルサイズSUVを使うことが多い。

フルサイズに明確な基準があるわけではないが、SUVをボディサイズでセグメントしたとき、もっとも大きなクラスを指し、コンパクトやミドルに対して「ラージサイズ」とも呼ばれる。全長は5m以上、全幅は2m以上かそれに近い車両がフルサイズにあたる。

トヨタの北米市場専用モデル『セコイア(Sequoia)』も、『ランドクルーザー200』以上の巨体をもつフルサイズSUVだ。トヨタ・インディアナ工場で製造され、初代は2000年にデビュー。その後、2008年と2018年にフルモデルチェンジを受けた。SUVを名乗っているが、どちらかというと『セコイア』は4WDとしてのヘビーさよりもオンロードでの快適性や利便性を重視したクルマで、充実したインテリアによってプレミアム感を演出している。それがユーザーの嗜好を捉えているのは、好調なセールスを見れば明らかだ。

フルサイズSUVで唯一セカンドシートにスライド機構をもち、じつのところ、それも人気を支えている要素になっている。さらにサードシートのリクライニングやフルフラットも電動(オプション)なので、家族の評判が高くなるのは道理なのだ。このほか、初代から運転席の8ウェイのパワーチルトやスライド式ムーンルーフを標準装備。トライゾーン・オートエアコンも備え、Apple CarPlay、Android Auto、Amazon Alexaにも対応する。もちろんBluetoothハンズフリー電話機能とミュージックストリーミングも可能だ。

しかし、2月にシカゴでお披露目された『セコイアTRDプロ』は、標準仕様とはかなり趣が異なる。その名のとおり、これは「TRD」のバッジを冠するモデルだからだ。

FOX製のショックアブソーバーを搭載。『セコイアTRDプロ』はTRDの最新モデル

TRDは「トヨタ・レーシング・ディベロップメント(Toyota Racing Development)の頭文字だ。トヨタのワークスファクトリースチームとしてレーシングカーを開発し、そこで培った経験や技術を生かしてトヨタ車用にチューニングパーツの製作と販売を行っている。国内外の多くのレースに参戦しているが、近年では『ヴィッツ』(輸出名『ヤリス』)をベースにしたマシンでWRC(世界ラリー選手権)に参戦して注目を集めた。前身は1970年代にさかのぼり、モータースポーツマニアならずともTRDの知名度は非常に高い。

「TRDプロ」は、2014年から北米でトヨタのオフロードモデルにラインナップされているシリーズで、ピックアップトラックの『TUNDRA(タンドラ)』と『TACOMA(タコマ)』、そして日本では『ハイラックスサーフ』としておなじみのSUV『4 Runner(フォー・ランナー)』に設定されている。このTRDプロの最新作が『セコイアTRDプロ』だ。

5.7L V型8気筒ガソリンエンジンを搭載し、トランスミッションは6速AT。55.4kg-mという図太いトルクを発揮し、しかもそのトルクの90%をわずか2200rpmという回転数で得ることができる。加えて、マルチモードの4WDシステム(ほかのグレードではオプション)やロッカブル・トルセン・リミテッド・センターデフ(トルク分配式デフ)を搭載したことで、従来の『セコイア』になかった高い走破性をもつのが特徴のひとつだ。

しかし、もっとも重要なチューニングポイントはサスペンションだろう。オフロード用のショックユニットメーカーとして知られるFOX社のアブソーバーは、アルミ製の本体にインターナル・バイパスを装備し、外力の大きさによって異なる減衰機構が働く。日常の走りでは柔軟に動き、ストローク量に応じて減衰力が高まるのでボトムしにくいのだ。数多くのオフロードコンペで優れた実績を残したメカニズムで、むろん専用にチューニングされている。しかもTRDの厳しい要求に応えるため、前後で異なるユニットが採用された。

「オンとオフ」「シティとカントリー」「マニアとファミリー」をまとめて愉しむSUV

外観で目立つのは、P275/55R20タイヤを装着した20インチx8インチのBBSブラック鍛造アルミホイールと、フィニッシュがブラッククローム仕上げの単管エキゾーストだ。誇らしげに「TRD」のロゴが入れられたフロント下部のスキッドプレートは、もちろんトレイル走行中にフロントサスペンションとオイルパンを保護するのに役立つもの。また、フロントグリルも「TOYOTA」のロゴを配した専用デザインとなっている。

面白いのは、TRDのエンジニアが乗員に配慮し、キャビンの音質を改善するために周波数調整したサウンドキャンセルデバイスを採用したこと。これによって低く心地よいエキゾーストノートを提供するという。走りとは関係ないものの、ぜひ体験したい機能だ。

かつての四輪駆動車愛好者は、それ以外の自動車ユーザーと求めるデザインや装備、機能が明らかに違っていたが、技術の進歩とセンスの変遷はさまざまな境界を取り払おうとしていると感じる。「オンとオフ」「シティとカントリー」「マニアとファミリー」をまとめて愉しもう、というのが『セコイアTRDプロ』の隠れたコンセプトなのかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) TOYOTA MOTOR CORPORATION.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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