これはレーダーに映らないステルスカー? それともトランスフォーマーか?
このクルマの画像を見たとき、「えらいことが起こったぞ!」と思った。これはレーダー式の速度取り締まり測定器に映らないクルマか? それとも巨大ロボットにトランスフォームするのか?
しかし、ブラックアウトされたこの異形のクルマは、れっきとした市販SUVだ。その名を『Karlmann King(カールマン・キング)』という。2017年11月のドバイ国際モーターショーで初披露され、その際には世界各国から集まった名だたる自動車評論家やジャーナリストが驚きの声を上げて車両に駆け寄ったほどだった。
中東屈指の金融センターという土地柄もあり、ドバイ国際モーターショーには毎年、浮世離れした特別仕様の贅沢なクルマ、型破りなクルマが数多く登場する。そのドバイでも、これほどインパクトのある外観のクルマは滅多に見ることができないに違いない。
重量は最大6トン! ステルス機をコンセプトにしたハイエンドカスタムSUV
『カールマン・キング』は、北京に本社を置く中国企業「IAT Automobile Technology(IATオートモバイル・テクノロジー)」が企画・開発した。
車両を製作したのは、ヨーロッパから集められた1800人ものトップ技術者からなる特別な自動車設計チーム。その開発コンセプトは「ハイエンドカスタムメイドのSUV(地上ステルス戦闘機)」「前例のないデザインと饗宴体験を世界の自動車ファンに届けよう」というものだ。
ベースとなったのは、フォードのピックアップトラック『F-550』。6.8LのV10エンジンを搭載し、このパワーユニットを載せる強固なシャシーに、独自に開発したダイヤモンドのブリリアント・カットデザインのボディを架装している。
とりわけ、そのマットブラックのカラーリングはアメリカ空軍のステルス戦闘機『F-117 ナイトホーク』をイメージさせ、それが世界に類を見ないデザインポイントとなっているのだ。
ボディの素材は、カーボンファイバーや鋼鉄で構成され、車重は4.5トンになるそうだ。防弾の装甲仕様のオプションも用意されており、その場合の車重は6トン。「そんなに重くて砂漠が走れるのか?」と心配になるのは筆者だけではないだろう。当然、最高速度は約140km/hほどにとどまる。
いかつい外観から一転、内装はストレッチリムジンのような砂漠の王族仕様
このいかつい外観を見たら、内装も「鋼鉄むき出しに違いない」と考えるのが普通だ。ところが、車内には一転してゴージャスかつラグジュアリーなインテリアが広がる。
天井に星空をあしらい、室内を照らすのはホテルのラウンジライクなムーディなライティングだ。そして、最上級の本皮と思われる座り心地の良さそうなシート、4Kテレビ、Hi-Fiサウンドシステム、シャンパン用の冷蔵庫、エスプレッソマシン…。金庫にゲーム機のPS4まで搭載されるという。
さらに、エアコンはフロントとリアで独立し、引出し式のテーブル、スイスの超一流時計メーカー「IWC」製の時計、空気清浄機なども備える。この超豪華装備は、まさにストレッチリムジンにそのもの。砂漠の王族仕様といっても過言ではあるまい。
顧客は中東や中国の超富裕層、もしかして『ザ・バットマン』にも登場する?
『カールマン・キング』はドバイ国際モーターショーに続き、2018年4月の北京モーターショーでも披露された。
ドバイと北京で公開されたこと、そして防弾仕様のオプションやケタ外れの豪華な内装などを考えると、このクルマが中東や中国の超富裕層に向けたSUVであるのは間違いないだろう。
そのため、プライスも桁外れだ。車両本体が約2.3億円、カスタマイズやオプションも加えると約4.3億円という途轍もない価格がつけられている。12台のみの限定生産となるそうだ。
もはや「ほしい」という次元を超えたバットモービルのようなSUV。もしかすると、今年公開予定と噂される『The Badman(ザ・バットマン)』にも登場するかもしれない!?
Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C)karlmannking.com
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)