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第35回 | 大人ライダー向けのバイク

フリンジ付き革ジャンの出番だ──70’sな新型ハーレー

ベトナム戦争、ヒッピー、ジミ・ヘンドリックス、サイケデリック。1970年代のアメリカは既存の価値への不信を背景にした若者の時代だった。しかし、アメリカンニューシネマの『イージーライダー』に登場して脚光を浴びる一方、じつはハーレーダビッドソンにとって1970年代は暗黒の時代でもあったのだ。ところが、2018年2月に発表された「スポーツスターファミリー」のニューモデルを見て驚いた。『IRON 1200』『FORTY-EIGHT SPECIAL』の新型2モデルは、その70'sのデザインに回帰していたからである。

本国以上に日本で人気を集めるハーレーダビッドソン「スポーツスターファミリー」

ハーレーダビッドソンのスポーツスターファミリーは、ビッグツイン系とは一線を画すスポーティーなモデルだ。体格の大きいアメリカ人にとっては「小さい」とも感じる、軽快でスリムなサイズの車体が特徴のファミリーである。

日本ではアメリカ本国以上の人気を集めているが、その秘密は乗りやすさ。ハーレーのラインナップのなかでは比較的軽量のため、日本人の体格でも扱いやすく、市街地で取り回しがしやすいからだ。

スポーツスターファミリーに今回加わったのは、ローダウン&ブラックアウトが特徴である『IRON(アイアン)883』の兄貴分にあたる『IRON 1200』。そして、日本に導入されているハーレーではダントツの人気ナンバーワンを誇る『FORTY-EIGHT(フォーティーエイト)』のファクトリーカスタムモデル、『FORTY-EIGHT SPECIAL(スペシャル)』の2モデルだ。

ハーレーダビッドソンは2027年までの10年間で、100タイプのニューモデルを発表する計画を打ち出した。今回の2モデルは、その一環となる。

1970年代のハーレーにあったレインボーラインをタンクに施した『アイアン1200』

『アイアン1200』の特徴のひとつは、ベースモデルの『アイアン883』から大幅なパワーアップがはかられていることだ。45度の空冷Vツイン「エボリューション1200V-Twinエンジン」に換装することにより、『アイアン883』では味わうことのできない、置いていかれそうな加速とアグレッシブな走りが堪能できるようになった。

最大トルクの数値は、『アイアン883』が68Nm/4750rpmであるのに対し、『アイアン1200』は96 Nm/3500rpmと、28Nmもアップ。ハーレーならではの鼓動を低回転域で感じられるようになった。

スタイリングの特徴は、なんといっても1970年代のハーレーにあった、レインボーラインのグラフィックをタンクに施していること。懐かしくも新しい温故知新なカスタムタンクアートとなっている。

しかし、1970年代のハーレーといえば、AMF社(アメリカン・マシン・アンド・ファウンドリー)に買収され、人員削減に対するストライキの多発、それによる品質の低下など、暗黒の時代だったはずだ。その時代のデザインに回帰することには、ハーレーダビッドソンの懐の広さを感じる。

そして新たに採用されたのが、メーターを囲うブラックの固定式のスピードスクリーンや後端部を盛り上げたカフェ風シングルシートだ。チョッパー的なアップハンドルでありながら、カフェレーサースタイルというアンバランス加減は、これも1970年代ルック。イギリスのハーレー乗りがカスタムしたような仕上がりとなっているのだ。

カラーバリエーションは「ビビッドブラック」「ツイステッドチェリー」「ビリヤードホワイト」の3色。価格は136万6200円からとなっている。

ノスタルジックで華やかなアメリカを感じられる『フォーティーエイト スペシャル』

『フォーティーエイト スペシャル』は、49mm径の極太正立フォークや130mm幅のファットなフロントタイヤ、ソロシート、そして容量7.9Lのピーナッツタンクといったスタイル自体はベースモデルと変わらない。

しかし、『アイアン1200』と同様に、タンクには1970年代のタンクアートにインスパイアされたグラフィックが施されている。

特に「ビリヤードホワイト」のカラーリングは、メッキ仕上げに変更されたクランクケースカバーと相まって、『フォーティーエイト』にはなかった“ノスタルジックで華やかなアメリカ”が感じられる。

もうひとつの大きな特徴は、『フォーティーエイト』のほぼ一文字のドラッグバーハンドルを、『スペシャル』ではアップスタイルの黒いトールボーイハンドルに変更していることだ。

従来のドラッグバーによるライディングポジションは、日本人の体格には多少無理があり、じつはハンドルをカスタムするユーザーも多いと聞く。そうした声がハーレーに届いたのか、『フォーティーエイト スペシャル』はアップハンドルにすることで快適なライディングポジションとなった。

カラーは「ビビッドブラック」「ウィキッドレッド」「ビリヤードホワイト」の3色。価格は152万4400円からとなっている。

『アイアン1200』『フォーティーエイト スペシャル』の新型2モデルは、アメリカ本国をはじめ、順次各国に導入されるという。気分は70's。さあ、フリンジ付きの革ジャンの出番だ。

Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) Harley-Davidson, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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