日本卓球協会強化本部長を務める宮崎義仁氏 © スポーツ報知/報知新聞社 日本卓球協会強化本部長を務める宮崎義仁氏

 元卓球男子日本代表監督で、現在は日本協会強化本部長を務める宮崎義仁氏がこのほど、「世界卓球解説者が教える卓球観戦の極意」(ポプラ社)を出版した。昨年「Tリーグ」が発足し、さらに人気拡大中の卓球について見方が変わる知識をまとめた1冊。来年の東京五輪に向けて強化を進める宮崎氏に著書の中身や東京への目標について聞いた。

 選手の素顔に迫る章では「卓球選手の結婚事情」「卓球選手は『頭がいい』」「親子そろって一流選手は多くない」など興味深いトピックスが並んでいる。福原愛さんを始め、卓球選手は親も競技経験のある“2世”が多いが、なぜ一流の親から一流は育たないのか。

 「一流になった人が自分の子のために時間を費やすのは相当難しい。一流になった人は競技にまた還元しようとしたり、企業で大事にされたりと、家庭に帰る時間が他の方より短くなってくる。そうすると、自分の子に手がかけられない。卓球というのは環境スポーツ。小さい時から自分の家に卓球台があるとか、自分の家が卓球場を経営しているとかで子供の頃から頻繁に打つ機会がないと、なかなか早めに成長するのは難しい。親が100メートル選手で、そのDNAを受け継いだ子供は、親に教えられなくても速いと思う。でも卓球はそういう競技じゃないので、お相手をしてもらって打たないと強くならない。そういう意味では忙しいご両親の子供は卓球が小さい頃から一流になっていくというのは難しい競技だと思う。水谷(隼)の場合は(親が)スポーツ少年団やっている方ですし、石川(佳純)も家が卓球場。付き添いで自分の子供に付きっ切りでやれたということ」

 強くなる卓球選手は例外なく頭が良いが、運動神経は関係ないという。

 「逆にまったく運動神経の悪い子の方が強くなるというのが卓球だと思う。卓球というのは相手に時間を与えないで、速いピッチで打ち込めば、一番有利な前陣速攻というスタイルになる。卓球台にへばりついて打つのは身体能力に自信の無い子や動けない子。どうしても足が速い子、運動神経のある子はボールを見て動いちゃうから打点がだんだん遅れてくる。そうすると打点の早い子に勝てない」

 現在世界トップレベルで活躍している日本代表選手も運動神経が良いわけではない。

 「かけっこで50人走らせて、一番ビリになった子が一番速い卓球をする。ということは、一番早く強くなる。身長順でいうと一番低い子が前陣速攻になって、一番強くなる。それが伊藤美誠とか平野美宇。丹羽孝希も160センチないくらいの身長で前陣にへばりついてやる。丹羽はダッシュさせたら1番遅い、長距離も1番遅い。前転ができない、側転ができない。ドリブルができない。ピッチングができない。本当に卓球意外何ができるの?ってくらい。パターを5回連続空振りするくらい。申し訳ないけど、まったく運動神経はない。でも卓球は世界ランク1ケタ(9位)ですよ。226の国と地域が卓球をやって、競技人口も数億という莫大(ばくだい)な競技人口の中で、トップ10に入る。卓球は全く運動能力は関係ないと思いますね。動体視力とかは毎日練習するなかで自然と身に付くもの。全員に可能性がある」

 4手、5手先の展開を見据えてショットを繰り出す。将棋やカーリングに近いものがあるという。

 「頭の悪い子はほぼ勝てない。張本も伊藤も平野も丹羽も地頭、回転の早さ。これは超一流だと思う。これが卓球の強さに直結する能力かなと思いますね」(コンテンツ編集部・飯塚 久美子)

 ◆宮崎 義仁(みやざき・よしひと)1959年4月8日、長崎県生まれ。59歳。1985、87年世界選手権や88年ソウル五輪に日本代表として出場。08年北京五輪、12年ロンドン五輪で男子日本代表監督を務める。16年に日本卓球協会強化本部長に就任。テレビ解説でも活躍中。

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