現代版フルゴネット『ベルランゴ』は、『C3』に次ぐシトロエンベストセラーモデル
フランスには古くから「フルゴネット」というカテゴリがある。乗用車をベースに作られた商用バンのことで、車体後部がバン形状の荷室となったもので、1951年に誕生したシトロエン『2CVフルゴネット』などが代表車種だ。
日本で人気を集めるルノー『カングー』は、このフルゴネットを進化させたもの。フランス本国には『カングー』のようなタイプのクルマがほかにも存在し、シトロエンやプジョーがラインナップしている。
1996年に登場したシトロエン『ベルランゴ』も、フルゴネットから進化したクルマだ。MPVとしても高い人気を集め、これまで2世代、計330万台以上が販売されてきた。じつは、シトロエンのなかではコンパクトハッチバックの『C3』に次ぐベストセラーなのだ。
3世代目となった新型『ベルランゴ』は、シトロエン『C4ピカソ』やプジョー『3008』と同様の「EMP2プラットフォーム」を採用し、『C4カクタス』から始まった最新の“シトロエンフェイス”やデザインを持つ。
また、その独創的なデザインに加え、19の安全装備、28の収納スペースを持つなど、MPVとしての性能にもさらに磨きがかけられている。
ロングボディは最大3.05mもの長大な空間! 『ベルランゴ』の収納能力は圧倒的だ
新たにロングホイールベースモデルが加わったことも、新型『ベルランゴ』の特徴だ。これにより、全長4400mm、5人乗りショートボディの「M」、全長4750mm、7人乗りロングボディの「XL」と、2種類のボディがラインナップされることとなった。
外観では、フロントオーバーハング(前車軸より前の長さ)が短くなったことも相まって、プロポーションがよくなった印象だ。サイドには、傷や衝撃からボディを守るクッションのような役割を持つ「エアバンプ」も装着できる。
インテリアは開放感に溢れ、水平基調のダッシュボードが特徴的。コネクテッドシステムに対応する「Citroën Connect Nav」の8インチタッチスクリーン、ダイヤル式となるシフトセレクターにより、デザイナーズ家電のようなシンプルでスタイリッシュな印象を与えてくれる。頭上に拡がる3分割式のグラスルーフ「Modutop」は、まるでテラスのような雰囲気だ。
3席が独立するリヤシートは、「マジックフラットコントロール」によって簡単な操作で倒すことができ、フラットな床の荷室を作り出すことができる。可倒式の助手席と合わせれば、「M」で2.7m、「XL」で3.05mもの長大な空間が現れるというから、MPVとしての収納能力も抜群である。
19の先進安全機能を搭載し、多彩な組み合わせで内外装のコーディネートも愉しめる
家族で過ごすバカンスやアクティビティでの用途が想定されるので、先進の安全運転支援システムも当たり前のように装備されている。
一例を挙げると、停止機能付きのACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)、車線逸脱時に警告やステアリングアシストをしてくれる「アクティブ・レーン・ディパーチャー・ワーニング・システム」、速度などをフロントウィンドウに投影する「カラーヘッドアップディスプレイ」…という具合だ。搭載される安全運転支援機能は、じつに19にも上る。
パワートレインは、1.5Lの「BlueHDi」ディーゼル、1.2の、「PureTech」ガソリンの2種類。それぞれに8速AT「EAT8」が搭載されるという。
「使い勝手の良さ」「シトロエンらしさ」「フランス車らしさ」が凝縮されたクルマ
よく「フランス車はおしゃれ」と評されるが、それは個性的なスタイリングだけではなく、内外装を多彩なコーディネートで着飾ることができる点も大きい。
『ベルランゴ』も、サンドやアクアグリーンなどのボディカラーに、フォグランプ周りやエアバンプに入るホワイトかオレンジのカラーシグネチャーで個性をプラスし、さらにインテリアもボディカラーに合わせたコーディネートが可能だ。
新型『ベルランゴ』は、MPVらしい「使い勝手の良さ」、独創的な「シトロエンらしさ」、おしゃれな「フランス車らしさ」が凝縮された一台といえる。
これまで『ベルランゴ』は日本に正規輸入されることがなかった。しかし、新型『ベルランゴ』はロングホイールベースの3列シートが加わったことにより、日本でのニーズが高まりそうな予感がある。
はたして3代目は日本へ導入されるのか。フランス車ファンならずとも要注目だ。
Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Citroën Communication/DR
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)