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第12回 | シトロエンの最新車デザイン・性能情報をお届け

フルゴネットという愉しみ──シトロエン ベルランゴ

世界には、知名度はなくても、魅力的なクルマがたくさんある。それらには日本に導入されていないモデルも多い。そのひとつが現代版「フルゴネット」というべきシトロエン『ベルランゴ』だ。日本風にいえば、「おしゃれなミニバン」といったところだろうか。この『ベルランゴ』が3代目へと進化し、2018年3月のジュネーブモーターショーで世界公開された。『C4カクタス』譲りの独創的なデザインに、MPV(マルチパーパスビークル)としての高い実用性を備えた特異なキャラクターを持つ一台である。

現代版フルゴネット『ベルランゴ』は、『C3』に次ぐシトロエンベストセラーモデル

フランスには古くから「フルゴネット」というカテゴリがある。乗用車をベースに作られた商用バンのことで、車体後部がバン形状の荷室となったもので、1951年に誕生したシトロエン『2CVフルゴネット』などが代表車種だ。

日本で人気を集めるルノー『カングー』は、このフルゴネットを進化させたもの。フランス本国には『カングー』のようなタイプのクルマがほかにも存在し、シトロエンやプジョーがラインナップしている。

1996年に登場したシトロエン『ベルランゴ』も、フルゴネットから進化したクルマだ。MPVとしても高い人気を集め、これまで2世代、計330万台以上が販売されてきた。じつは、シトロエンのなかではコンパクトハッチバックの『C3』に次ぐベストセラーなのだ。

3世代目となった新型『ベルランゴ』は、シトロエン『C4ピカソ』やプジョー『3008』と同様の「EMP2プラットフォーム」を採用し、『C4カクタス』から始まった最新の“シトロエンフェイス”やデザインを持つ。

また、その独創的なデザインに加え、19の安全装備、28の収納スペースを持つなど、MPVとしての性能にもさらに磨きがかけられている。

ロングボディは最大3.05mもの長大な空間! 『ベルランゴ』の収納能力は圧倒的だ

新たにロングホイールベースモデルが加わったことも、新型『ベルランゴ』の特徴だ。これにより、全長4400mm、5人乗りショートボディの「M」、全長4750mm、7人乗りロングボディの「XL」と、2種類のボディがラインナップされることとなった。

外観では、フロントオーバーハング(前車軸より前の長さ)が短くなったことも相まって、プロポーションがよくなった印象だ。サイドには、傷や衝撃からボディを守るクッションのような役割を持つ「エアバンプ」も装着できる。

インテリアは開放感に溢れ、水平基調のダッシュボードが特徴的。コネクテッドシステムに対応する「Citroën Connect Nav」の8インチタッチスクリーン、ダイヤル式となるシフトセレクターにより、デザイナーズ家電のようなシンプルでスタイリッシュな印象を与えてくれる。頭上に拡がる3分割式のグラスルーフ「Modutop」は、まるでテラスのような雰囲気だ。

3席が独立するリヤシートは、「マジックフラットコントロール」によって簡単な操作で倒すことができ、フラットな床の荷室を作り出すことができる。可倒式の助手席と合わせれば、「M」で2.7m、「XL」で3.05mもの長大な空間が現れるというから、MPVとしての収納能力も抜群である。

19の先進安全機能を搭載し、多彩な組み合わせで内外装のコーディネートも愉しめる

家族で過ごすバカンスやアクティビティでの用途が想定されるので、先進の安全運転支援システムも当たり前のように装備されている。

一例を挙げると、停止機能付きのACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)、車線逸脱時に警告やステアリングアシストをしてくれる「アクティブ・レーン・ディパーチャー・ワーニング・システム」、速度などをフロントウィンドウに投影する「カラーヘッドアップディスプレイ」…という具合だ。搭載される安全運転支援機能は、じつに19にも上る。

パワートレインは、1.5Lの「BlueHDi」ディーゼル、1.2の、「PureTech」ガソリンの2種類。それぞれに8速AT「EAT8」が搭載されるという。

「使い勝手の良さ」「シトロエンらしさ」「フランス車らしさ」が凝縮されたクルマ

よく「フランス車はおしゃれ」と評されるが、それは個性的なスタイリングだけではなく、内外装を多彩なコーディネートで着飾ることができる点も大きい。

『ベルランゴ』も、サンドやアクアグリーンなどのボディカラーに、フォグランプ周りやエアバンプに入るホワイトかオレンジのカラーシグネチャーで個性をプラスし、さらにインテリアもボディカラーに合わせたコーディネートが可能だ。

新型『ベルランゴ』は、MPVらしい「使い勝手の良さ」、独創的な「シトロエンらしさ」、おしゃれな「フランス車らしさ」が凝縮された一台といえる。

これまで『ベルランゴ』は日本に正規輸入されることがなかった。しかし、新型『ベルランゴ』はロングホイールベースの3列シートが加わったことにより、日本でのニーズが高まりそうな予感がある。

はたして3代目は日本へ導入されるのか。フランス車ファンならずとも要注目だ。

Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Citroën Communication/DR
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第15回 | シトロエンの最新車デザイン・性能情報をお届け

この新型SUVは空飛ぶ絨毯だ──シトロエンC5エアクロス

『2CV』、そして『DS』、近年では『C3』『C4カクタス』。フランスのシトロエンは、独創的なクルマを作ることで知られるブランドである。それはいま世界的に流行するSUVにおいても変わらない。シリーズの名称は「エアクロス」。ヨーロッパでは『C3エアクロス』『C4エアクロス』が人気を集める(日本へは未導入)。この二台の上位車種となるのが、昨年末にヨーロッパで発売された最新SUVの『C5エアクロス』だ。

激戦区のCセグメントに参入。シトロエンの最新コンパクトSUV『C5エアクロス』

『C5エアクロス』は、2015年に上海モータショーで発表された『エアクロス コンセプト』の市販バージョンだ。コンセプトモデルが上海でお披露目されたことでわかるように、もともと「エアクロス」は中国やロシア、南米に向けて開発されたシリーズ。しかし、ヨーロッパで販売されると予想以上の人気モデルとなり、なかでも現行『C3エアクロス』は2017年10月の発売から4カ月で5万台のセールスを記録したほどである。

その兄貴分となる『C5エアクロス』は、世界的な激戦区のCセグメントに属する5シートのコンパクトSUV。デイライトとヘッドライトを上下で切り分けた独特のフロントフェイスに、『C4カクタス』から続くエアバンプ(残念ながらこちらはダミー)と、シトロエンの最新デザイン言語を採用。ルーフレールや樹脂製のサイドクラッディングなど、よりSUVらしいディティールも取り入れている。世の多くのSUVが力強さを主張するかのような意匠を持つなかで、全体的に丸みを帯びた威圧感のなさがシトロエンらしい。

プラットフォームは、プジョー『3008』『5008』などと共有するPSA(プジョー・シトロエン)の「EMP2(Efficient Modular Platform 2)」。ボディサイズは全長4500mm×全幅1840mm×全高1670mmと、全幅こそやや広いが、日本の道路事情にも適したサイズといえる大きさだ。SUVらしく最低地上高は230mmを確保している。

新開発サスペンションにより、まるで「空飛ぶ絨毯」のような快適な乗り心地を実現

プラットフォームを同じにする『3008』などのプジョー車とは異なり、『C5エアクロス』はコンフォート性能を徹底的に追求している点に大きな特徴がある。

シトロエンといえば油圧式のハイドロサスペンションを思い浮かべるが、『C5エアクロス』はその乗り心地を受け継ぐ新開発の「Progressive Hydraulic Cushions=プログレッシブ・ハイドロリック・クッション」を採用。KYBSE(カヤバ・サウス・ヨーロッパ)と共同開発したサスペンションで、『C4カクタス』もマイナーチェンジで導入している。

このサスペンションは、電子制御を用いずともダンパーの減衰力(強さ)をバリアブルに変化させることが可能。たとえば柔らかさがほしいとき、あるいは手応えを感じたいとき、車両のスピードによってダンパーが逐一コンフォート(快適さ、安心感)に反応してくれるのだ。これにより、まるで「空飛ぶ絨毯」のようなライド感を実現するという。

パワーユニットは、ガソリンが1.2L 3気筒の「ピュアテック130」と「ピュアテック180」の2種類で、ディーゼルの「BLUE HDi」も「130」と「180」がラインナップされる。トランスミッションは8速ATの「EAT8」。コースティング機能を備え、少燃費にも貢献する。本国では6MTも用意されているが、日本への導入は微妙なところだろう。

家族や仲間が快適に移動できる室内空間。先進の安全装備がドライビングをサポート

インテリアもコンフォートに重きが置かれている。極上の乗り心地にひと役買っているのは「Advanced Comfortシート」だ。前席にはマルチポイントマッサージシステムが搭載され、タッチパッドコントローラーによる操作で各部をマッサージ可能。シトロエン伝統のシート面の厚さと絶妙な柔らかさも受け継ぎ、乗員全員が快適に移動できる。

ドライバーズシートに座ると、目の前には12.3インチTFTパネル液晶と8インチタッチスクリーンが広がり、コントラストの効いた見やすい表示で情報を伝えてくれる。『C3』に標準搭載され、日本でも話題となったドライブレコーダー「コネクティッドカム」やスマホ用ワイヤレス充電システムなど、「今ほしい」機能も標準装備した。

インテリア全体は、広報写真をみるとブラウンレザーを多用しており、大人に似合う雰囲気だ。この点も、やはり『C3』や『C3エアクロス』より兄貴的存在となっている。

安全運転支援システムでは、アダプティブクルーズコントロール、アクティブセーフティブレーキ、アクティブレーンキーピングアシスト、道路標識認識機能を搭載。高速道路ではインテリジェントビームヘッドライトによってハイとローの切り替えも自動で行う。

ライバルはBMW『X1』やアウディ『Q3』。『C5エアクロス』の価格は約340万円から

ボディカラーは7色展開で、ルーフがブラックのツートーン仕様も選べる。さらにサイドのエアバンプとフロントバンパーのインテークもカラーインサートとして設定され、カラーパッケージは大きく3種類が用意された。組み合わせは30にも上る豊富さだ。

すでにヨーロッパでは昨年末から販売が開始され、価格はエントリーグレードの1.2L 3気筒「ピュアテック130」がおよそ340万円。日本への導入も予定されている。

特徴的なエクステリアに「空飛ぶ絨毯」と称される乗り心地、そして十二分な安全運転支援システムと、『C5エアクロス』はどこを切り取っても魅力溢れるCセグメントSUVだ。ルノー『カジャー』、BMW『X1』、アウディ『Q3』、フォルクスワーゲン『ティグアン』あたりが直接的なライバルとなりそうだが、価格的にも狙い目といっていいだろう。

Text by Taichi Akasaka
Photo by (C) Peugeot Citroën
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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New Citroën C5 Aircross オフィシャル動画
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