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第33回 | 大人ライダー向けのバイク

男たちよ、冒険せよ──トライアンフ 新型タイガー

「アドベンチャー」とは、舗装されたオンロードだけではなく、ダートでの走破性を持ったバイクのこと。サスペンションのストロークが長く、エンジン特性のフレキシビリティが高いという特徴を持つ。また、アップライトな乗車姿勢は長時間走行でも快適で、大排気量エンジンのパワーは乗り手の疲労を軽くしてくれる。2018年3月に日本で販売が開始された『タイガー800』『タイガー1200』は、英国のトライアンフが展開する人気のアドベンチャーモデルだ。

パリ・ダカールラリー由来のアドベンチャーツアラー、トライアンフ『タイガー』

アドベンチャーツアラーとも呼ばれるこのカテゴリーの起源は、パリ・ダカールラリーなどのラリーレイドにまでさかのぼることができる。

単純に悪路での走破性を求めるだけなら、軽量で機能に徹したオフロード車のほうが良い。しかし、長距離走行のための大きな燃料タンク、パワーが吸収される砂地に負けないトルクフルなエンジン、そして、メンテナンスに必要な装備やキャンプ道具まで収納できる積載性も求めるなら、オフロード車では物足りない。

その追求の結果が、今日のアドベンチャーモデルとなったのだ。

「タイガー」の名称は、1950年代のトライアンフのロードモデルにも存在していた。ただし、カジュアルなイメージのツアラーとして誕生したのはトライアンフがメーカーとして復活した1994年のことだ。トライアンフは業績悪化などにより、何度も経営母体が変遷した歴史を持つ。

アドベンチャーツアラーとして大きく変貌したのは1999年に登場した『タイガー955i』以降のことで、現在に至るまでさまざまな進化を遂げてきた。

2018年モデルとして発売される『タイガー800』『タイガー1200』には、その集大成といえるような技術の投入と装備の充実を見ることができる。

アドベンチャーに求められる機能を最先端技術でパッケージングした新型『タイガー』

『タイガー800』『タイガー1200』には、先代モデルから200カ所以上の変更が加えられたが、その中身にはアドベンチャーとして求められる機能を最先端技術の採用によって高度なパッケージとする目的が見て取れる。

800と1200に共通するアップグレードはTFTディスプレイをはじめとした電装系だ。リーン角度に応じて動くコーナリングライトやキーレスイグニッションを備え、バックライト付きスイッチハウジングには5方向に操作できるジョイスティックなどが装備された。ヘッドライトを含むすべての照明はLED化されている。

ライディングに直接関わる変更点では、6種のライディングモードが選べるようになったほか、シフトアシスト、エンジンレスポンスの向上、ライディングポジションの見直し、5段階調節式スクリーン、ブレンボ製ブレーキの採用、SHOWA製アジャスタブルサスペンション、さらに切り替え式ABSや切り替え式トラクションコントロールの採用などがある。

幅広い多くのユーザーにとって、より快適なツアラーとなるようなデバイスが盛り込まれた形だ。

多様なタイプを用意、最上位モデルの『タイガー1200 XCA』の価格は273万1500円

ライバルの多いこのカテゴリーで「タイガー」が支持されてきたのは、同じアドベンチャーツアラーのラインのなかでも、ロード寄りからオフ寄りまでそのフォーカスによって5つものタイプを用意してきた点が大きい。

日本で販売されるのは、800が5モデル。キャストホイールが装着されているロード寄りの『タイガー800 XR』『タイガー800 XRX』『タイガー800 XRT』、さらにオフ寄りの『タイガー800 XCX』『タイガー800 XCA』だ。

1200は、ロード寄りの『タイガー1200 XRT』とオフ寄りの『タイガー1200 XCA』の2モデル。1200にはこれまでトップモデルとして「エクスプローラー」があったが、新しい1200では「XCA」が事実上の最上位機種となった。

価格は『タイガー800 XR』が143万円、『タイガー800 XRX』は161万4600円、『タイガー800 XRT』が181万3400円。そして『タイガー800 XCX』は169万9800円、『タイガー800 XCA』が185万6000円となっている。『タイガー1200 XRT』は265万3400円、『タイガー1200 XCA』が273万1500円だ。

1日1000kmにも及ぶツーリングをする欧州のライダーに応えるためのアドベンチャー

ヨーロッパでは、1日1000kmにも及ぶツーリングをするライダーが少なくない。

しかも、中東地域やアフリカ大陸にまで足を伸ばすことが可能な地理的な条件もあり、出くわす路面のバリエーションもじつに多様だ。彼らが愉しんでいるのは、まさに“アドベンチャーツーリング”であり、そこに求められる機能や性能は自ずと街乗り用や単機能的なストリートモデルとは違ってくる。

トライアンフの新型「タイガー」は、そうしたヨーロッパのアドベンチャーライダーの要望に応えるための最新技術を存分に取り入れて組み上げられている。

ツーリングファンなら、そんなトライアンフの意思を「自分の肌で感じてみたい」と思わずにいられないに違いない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Triumph Motorcycles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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