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第58回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

メルセデスAクラス──これはナイトライダーの未来だ

メルセデス・ベンツのエントリーモデルである『Aクラス』。デビューは1997年で、現行型は2012年に発表された3代目となる。300万円前後で買えることもあり、新しい顧客獲得の原動力となった。今では、世界市場はもちろん、日本でも販売台数の躍進を支えるモデルとして欠かせない存在となっている。そして今回、6年ぶりにフルモデルチェンジした新型『Aクラス』が発表された。

会話で装備を操作…『ナイトライダー』が描いた未来を実現した新型『Aクラス』

「Hey、メルセデス」。新型『Aクラス』の発表会場で最も飛び交ったのは、この言葉ではないだろうか。フルモデルチェンジされた『Aクラス』は、iPhoneの「Siri」やAmazon Echoの「Alexa」などと同様に、デジタル・パーソナル・アシスタントにより、車内で声を発するとエアコンやオーディオ、ナビなどの操作ができるのである。

まるで1980年代に人気を集めたアメリカのカーアクションドラマ、『ナイトライダー』で描かれた未来が現実になったかのようだ。

これは、2018年の年明けに開催されたCES(旧コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)でメルセデス・ベンツが発表した「MBUX(メルセデス・ベンツユーザー・エクスペリエンス)」を搭載したことによる。

「MBUX」はAIを用いたコミュニケーション・システムで、今回初めて採用された。新技術をフラッグシップモデルではなく、エントリーモデルの『Aクラス』に初採用したことからも、メルセデス・ベンツがいかにこのクルマに力を入れているかがわかる。

その力の注ぎ具合は、発表会からも伝わってきた。4代目となる『Aクラス』が発表されたのは、オランダの首都で最大の都市であるアムステルダム。会場では、ダイムラーAGのディーター・ツェッチェ会長自らが、プレゼンテーションに立った。

力を入れている理由は、『Aクラス』の販売台数の多さや市場に占める割合にあるが、それ以上に購入層の質に注目したい。顧客には『Aクラス』をファーストメルセデスとして選ぶ者が多く、そして、年齢層が若いのである。つまり、未来のメルセデス・ベンツユーザーを獲得するための尖兵となる一台といっても差し支えないだろう。

新型『Aクラス』は新開発のエンジンを搭載し、エクステリアもよりダイナミックに

フルモデルチェンジとなった今回は、パワートレインも一新されている。

エンジンは新開発の直列4気筒エンジン。ガソリン車は、最大出力120kW/5500rpm、最大トルク250Nm/1620rpmの『A200』、最大出力165kW/5500rpm、最大トルク350Nm/1800rpmの『A250』の2モデル。ディーゼル車は、最大出力85kW/4000rpm、最大トルク260Nm/1750-2500 rpmの『A180d』をラインナップする。

トランミッションは『A200』のみが6速MT(マニュアルトランスミッション)で、それ以外は7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)が組み合わされた。

ボディサイズは全長4419×全高1796×全幅1440mm、ホイールベース2729mmと、先代よりもわずかに大きくなった。

これにより力強くダイナミックなエクステリアとなったが、そのなかでもボンネットフードの傾きを工夫するなどして、スポーティな佇まいも併せ持った。もちろん、スポーティさは見た目だけではなく、空力性能を表すCd値は0.25と、スポーツカーやエコカー並の数値を実現している。

近未来的な新型『Aクラス』のインパネ類、ヨーロッパでの価格は約397万円から

室内は、車体のサイズアップも相まって、ヘッドルームやニースペースが拡大し、またラゲッジスペースも拡大して370Lとなった。

インパネ類は近未来的で、エントリーモデルとはいえ、さすがはメルセデスと言いたくなる上質感を漂わせている。先進技術の目玉は、冒頭で触れた「MBUX」。それに加え、『Sクラス』と同等の安全技術が搭載されたことも話題となった。一点の条件下での半自動運転も可能である。

ヨーロッパでの価格は、『A200(6MT)』が3万231.95ユーロ(約397万2000円)、『A200(7DCT)』が3万2326.35ユーロ(約424万7300円)、『A250』が3万6461.60ユーロ(約479万円)、『A180d』が3万1398.15ユーロ(約412万5000円)だ。

1ユーロ:約131.38円、2018年3月9日時点の為替レートで換算。

新型『Aクラス』は、Cセグメントのベンチマーク『ゴルフ』を超えるかもしれない

Cセグメントの車格やボディタイプ、価格などから、ライバル車は従来通り、BMW『1シリーズ』やアウディ『A3 スポーツバック』あたりだろう。

Cセグメントハッチバックのベンチマークといえば、言わずと知れたフォルクスワーゲン『ゴルフ』だが、どこまで迫れているか、場合によっては上回っているのかが気になるところだ。

日本への導入時期はアナウンスされていないが、早ければ2018年中にはデリバリーされるだろう。ディーラーにも試乗車が準備されるはずなので、その進化を自ら体験してみてほしい。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第77回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

エンスー垂涎の納屋物──メルセデス300SLガルウィング

ヒストリックカーの世界には、「バーン・ファウンド(Barn Found)」と呼ばれるジャンルが存在する。バーンは「納屋」、ファウンドは「見つかった」。つまり、納屋で見つかった古いクルマという意味だ。いわゆる「納屋モノ」。2年前の夏、岐阜県の納屋から発掘された1969年のフェラーリ『365GTB/4“デイトナ”』がオークションで高値落札され、世界中で大きなニュースとなったのは記憶に新しい。そして今年3月、やはり納屋で見つかった古いメルセデス・ベンツが、フロリダ州で開催されたコンクール・デレガンスに登場して注目を集めた。朽ち果てた姿で会場に展示されたそのクルマは、1954年に製造された『300SL“ガルウィング”』。名車中の名車とうたわれる、コレクター垂涎の一台である。

亡き石原裕次郎も愛車にしていたメルセデス・ベンツの名車『300SL“ガルウィング”』

『SLクラス』の「SL」は、ドイツ語でライトウェイトスポーツを意味する「Sport Leicht (シュポルト・ライヒト)」の頭文字からとったものだ。メルセデス・ベンツがラインナップする2シーターオープンカーの最高峰に位置づけられている。その初代モデルとなったのが『300SL』である。1954年のニューヨークモーターショーでデビューした。

通称は“ガルウィング”。特徴のひとつであるガルウィングドアに由来する。『300SL』はワークスレーサーのプロトタイプとして開発されたモデルで、当時のレーシングカーと同じ鋼管スペースフレーム構造をもっていた。それゆえに、ドアの下半分をフレームが通っており、また、開口部の敷居が高いうえに車高が低くて非常に乗り降りがしづらい。こうしたことから、やむを得ずガルウィングが採用されたというエピソードが残っている。

世界初の直噴エンジン搭載車としても知られ、車名の「300」はメルセデス・ベンツの排気量表記で3.0Lを意味する。直列6気筒エンジンは最高出力215psを発生し、最高速度は260km/h。当初は市販予定がなかったが、有力インポーターが北米市場に需要があるとメルセデス・ベンツを説得し、わずか1400台が生産・販売された。そのうちの一台は、あの昭和の大スター、石原裕次郎の愛車となり、現在も北海道小樽市の石原裕次郎記念館に展示されている。その『300SL』が、ご覧のような姿で納屋から発見されたのだ。

半世紀以上もガレージでホコリをかぶっていたが、ほぼオリジナルに近い状態を保持

シャシーナンバー「43」の『300SL』は、2018年末にフロリダ州のとあるガレージで見つかった。発掘したのはドイツ・シュツットガルト郊外に専用施設をもつ「メルセデス・ベンツ クラシックセンター」。同社のヒストリックカーのレストアのほか、レストア済み車両の販売も行う。施設内には真っ赤なボディカラーの『300SL』も展示されている。

この『300SL』は1954年にマイアミ在住のオーナーに出荷された個体で、走行距離計が示しているのは、たったの3万5000kmだ。Englebert社製のCompetition(コンペティション)タイヤにはまだ空気が少し残っていたという。車両自体もほぼ出荷時のままで、ボディパネル、ライト類、ガラスパーツ、グレーのレザーシート、ステアリングホイール、インテリアトリム、パワートレイン、ホイールにいたるまでオリジナルを保持している。

注目してほしいのは、「フロリダ植民400年」を記念した1965年のリアのナンバープレートだ。これを見ると、持ち主は少なくとも1954年から1965年までクルマを所有していたことがわかる。つまり半世紀以上を納屋で過ごしていた可能性が高いのである。

フロリダの国際コンクール・デレガンスには連番シャシーの二台の『300SL』が登場

ボロボロの『300SL』は発見したクラシックセンターの手にわたり、フロリダ州の高級リゾート地、アメリア・アイランドで毎年開催される「アメリア・アイランド・コンクール・デレガンス」(今年は3月7日から10日)にて旧車ファンたちにお披露目された。

その隣に並んでいたのは、見事に修復された鮮やかなブルーの『300SL』。驚いたのは、この個体のシャシーナンバーが「44」だったことだ。そう、納屋で発見された『300SL』の次に生産された個体なのである。『300SL』のような希少なヒストリックカーが連続するシャシーナンバーでコンクール・デレガンスに登場するのはかなりレアな出来事だろう。

『300SL“ガルウィング”』はメルセデス・ベンツのなかでも名車中の名車として知られ、自動車コレクターなら必ず所有したい一台といわれている。その価値は現在も上昇し続けているほどだ。そういう意味では、なんとも貴重で贅沢な光景といえるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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