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第57回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

アファルターバッハのGクラス──メルセデスAMG G63

2018年1月の北米モーターショーでひときわ目を引いた、琥珀の壁を模したオブジェ。そこに閉じ込められていたのは、初代『ゲレンデヴァーゲン』だ。40年の歴史で初めてフルモデルチェンジを行って話題になったメルセデス・ベンツの新型『Gクラス』を盛り上げるための演出である。気が早いカーガイたちはアファルターバッハでのチューニングを噂していたが、さっそく、高性能モデルのメルセデスAMG『G63』がジュネーブモーターショーにて発表された。

アファルターバッハ=AMGが手がけた新型『Gクラス』のハイパフォーマンスモデル

アファルターバッハはドイツ南部の地名である。メルセデス・ベンツのハイパフォーマンスブランドである「メルセデスAMG」が本社を構え、長らくエンジン開発と生産の拠点としていることから、アファルターバッハ=AMG(エーエムジー)を指すことが多い。

『G63』は、そのメルセデスAMGが手がけた『Gクラス』である。ひと昔前は独立したチューニングメーカーとして存在していたが、現在はメルセデスの各モデルにさらに磨きをかけるブランドとしてカタログ内にラインナップ。高性能グレードに位置づけられている。

最大の特徴は、なんといっても「ワンマン ワンエンジン」、つまり、ひとりのマイスターが一基一基、手作業で組み立てるといった伝統が受け継がれているエンジンだ。

『G63』の最高速度は220km/h、本格派オフローダーとは思えない驚異の動力性能

『G63』のエンジンは、4.0L V8ツインターボ。先代よりもダウンサイジングされたが、最高出力577hp/6000rpm、最大トルク850Nm(627lb-ft)/2500-3500rpmというスペックはけっしてして見劣りしない。

それどころか、0-100km/hの加速は0.9秒速くなり、4.4秒を実現した。最高速度は、本格派オフローダーとは思えない220km/hに達する。

このエンジンに組み合わされるトランスミションは、「9速ダブルクラッチ式AMGスピードシフトTCT 9G」。ドライブモードで「スポーツ」「スポーツプラス」を選択すると、エモーショナルなドライブフィールを味わえる。また「マニュアル」を選べば、シフトノブやパドルシフトで自分の意志で変速することも可能だ。

足回りでは、全輪駆動の「AMG Performance 4MATIC」を採用。フロントとリアの配分を先代の50:50から40:60に変更したことで、オンロードでの敏捷性を高め、加速性能も向上させた。

オフロードでは、センター・リヤ・フロントとロックする伝統の3つのデフロックを引き継いでいる。サスペンションは、通常モデルの新型『Gクラス』と同じで、フロントのみのダブルウィッシュボーンへと進化した。ただし、メルセデスAMGによる独自チューニングが施されている。

無骨ながらも“AMGらしい”スポーティさと高級感を併せ持った『G63』の内外装

エクステリアでは、『Gクラス』の代名詞である左サイドから突き出たエキゾーストパイプを踏襲。『G63』の専用装備では、22インチのホイールとフレアホイールアーチが力強さを醸し出す。

また、特徴的なラジエーターグリルや各所に施されたクロームの装飾などは、まさに特別な一台であるAMGならではといったところだろう。

インテリアで目を引くのは、2つレイアウトされた12.3インチのスクリーン。また、インパネも大きめで、最新のメルセデス・ベンツテイストを感じさせる。シート類はレザーで、室内の随所にはクロームとカーボンを配置するなど、AMGらしい高級感とスポーティさも忘れていない。

メルセデスAMG『G63』の日本導入はまだ未定だが…価格は2000万円前後になる?

オフローダーの頂点のひとつである『Gクラス』に、究極の走行性能を与えたハイパフォーマンスモデル、メルセデスAMG『G63』。現時点では価格未定で、日本導入も決まっていない。

先代(日本では現行型)の車両本体価格は1971万円(税込み)なので、近い価格帯に納まることだろう。世界最強の走破性をもちながら、最速でもある本格派SUV、一度は乗ってみたい憧れの一台だ。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第77回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

エンスー垂涎の納屋物──メルセデス300SLガルウィング

ヒストリックカーの世界には、「バーン・ファウンド(Barn Found)」と呼ばれるジャンルが存在する。バーンは「納屋」、ファウンドは「見つかった」。つまり、納屋で見つかった古いクルマという意味だ。いわゆる「納屋モノ」。2年前の夏、岐阜県の納屋から発掘された1969年のフェラーリ『365GTB/4“デイトナ”』がオークションで高値落札され、世界中で大きなニュースとなったのは記憶に新しい。そして今年3月、やはり納屋で見つかった古いメルセデス・ベンツが、フロリダ州で開催されたコンクール・デレガンスに登場して注目を集めた。朽ち果てた姿で会場に展示されたそのクルマは、1954年に製造された『300SL“ガルウィング”』。名車中の名車とうたわれる、コレクター垂涎の一台である。

亡き石原裕次郎も愛車にしていたメルセデス・ベンツの名車『300SL“ガルウィング”』

『SLクラス』の「SL」は、ドイツ語でライトウェイトスポーツを意味する「Sport Leicht (シュポルト・ライヒト)」の頭文字からとったものだ。メルセデス・ベンツがラインナップする2シーターオープンカーの最高峰に位置づけられている。その初代モデルとなったのが『300SL』である。1954年のニューヨークモーターショーでデビューした。

通称は“ガルウィング”。特徴のひとつであるガルウィングドアに由来する。『300SL』はワークスレーサーのプロトタイプとして開発されたモデルで、当時のレーシングカーと同じ鋼管スペースフレーム構造をもっていた。それゆえに、ドアの下半分をフレームが通っており、また、開口部の敷居が高いうえに車高が低くて非常に乗り降りがしづらい。こうしたことから、やむを得ずガルウィングが採用されたというエピソードが残っている。

世界初の直噴エンジン搭載車としても知られ、車名の「300」はメルセデス・ベンツの排気量表記で3.0Lを意味する。直列6気筒エンジンは最高出力215psを発生し、最高速度は260km/h。当初は市販予定がなかったが、有力インポーターが北米市場に需要があるとメルセデス・ベンツを説得し、わずか1400台が生産・販売された。そのうちの一台は、あの昭和の大スター、石原裕次郎の愛車となり、現在も北海道小樽市の石原裕次郎記念館に展示されている。その『300SL』が、ご覧のような姿で納屋から発見されたのだ。

半世紀以上もガレージでホコリをかぶっていたが、ほぼオリジナルに近い状態を保持

シャシーナンバー「43」の『300SL』は、2018年末にフロリダ州のとあるガレージで見つかった。発掘したのはドイツ・シュツットガルト郊外に専用施設をもつ「メルセデス・ベンツ クラシックセンター」。同社のヒストリックカーのレストアのほか、レストア済み車両の販売も行う。施設内には真っ赤なボディカラーの『300SL』も展示されている。

この『300SL』は1954年にマイアミ在住のオーナーに出荷された個体で、走行距離計が示しているのは、たったの3万5000kmだ。Englebert社製のCompetition(コンペティション)タイヤにはまだ空気が少し残っていたという。車両自体もほぼ出荷時のままで、ボディパネル、ライト類、ガラスパーツ、グレーのレザーシート、ステアリングホイール、インテリアトリム、パワートレイン、ホイールにいたるまでオリジナルを保持している。

注目してほしいのは、「フロリダ植民400年」を記念した1965年のリアのナンバープレートだ。これを見ると、持ち主は少なくとも1954年から1965年までクルマを所有していたことがわかる。つまり半世紀以上を納屋で過ごしていた可能性が高いのである。

フロリダの国際コンクール・デレガンスには連番シャシーの二台の『300SL』が登場

ボロボロの『300SL』は発見したクラシックセンターの手にわたり、フロリダ州の高級リゾート地、アメリア・アイランドで毎年開催される「アメリア・アイランド・コンクール・デレガンス」(今年は3月7日から10日)にて旧車ファンたちにお披露目された。

その隣に並んでいたのは、見事に修復された鮮やかなブルーの『300SL』。驚いたのは、この個体のシャシーナンバーが「44」だったことだ。そう、納屋で発見された『300SL』の次に生産された個体なのである。『300SL』のような希少なヒストリックカーが連続するシャシーナンバーでコンクール・デレガンスに登場するのはかなりレアな出来事だろう。

『300SL“ガルウィング”』はメルセデス・ベンツのなかでも名車中の名車として知られ、自動車コレクターなら必ず所有したい一台といわれている。その価値は現在も上昇し続けているほどだ。そういう意味では、なんとも貴重で贅沢な光景といえるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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