公費による無償化対象とする以上、「保育の質」確保にも責任を持つべきだ。

 県内335の認可外保育施設のうち、県などの「指導監督基準」を満たし証明書を交付された施設が、3月末時点で158にとどまっていることが明らかになった。全体の半数以下である。

 指導監督基準は、子どもの安全確保等の視点から劣悪な施設を排除するために設けられた最低ラインともいえる条件だ。

 今回、不適合事例として挙げられたのは「保育士の配置数や有資格者数が足りない」「健康診断が実施されていない」「危険な場所・設備の安全管理が図られていない」などである。

 安倍政権の目玉政策である幼児教育・保育の無償化が、消費税増税合わせ10月からスタートする。

 無償化となるのは認可保育所や認定こども園、幼稚園にかかる費用で、3~5歳児は原則全世帯、0~2歳児は低所得世帯が対象となる。さらに5年間に限っては、国の基準を満たしていない認可外も対象とする経過措置が盛り込まれた。

 子育て世代の経済的負担を軽減する方向の施策は歓迎したい。認可園に入れずやむを得ず認可外に預けているという保護者も多く「負担に差が出るのはおかしい」との指摘も理解できる。

 認可外が一概に悪いわけではないが、ただ最低基準を守れない施設まで対象を広げることが子育て支援につながるのか。疑問なしとしない。

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 厚生労働省の「2016年度認可外保育施設の現況取りまとめ」によると、自治体が立ち入り調査した認可外施設のうち4割超は、職員数や避難訓練などの指導監督基準を満たしていなかった。国は自治体に年1回以上の立ち入りを求めているが、3割弱の施設では実施されていない。

 県内の立ち入りも18年度は191施設にとどまり、調査が追い付いていない状況が浮き彫りになっている。

 問題がより深刻なのは、県内は全保育施設に占める認可外の割合が3割を超え、全国の2倍以上も多いことだ。

 戦後、公的保育所の整備が遅れた沖縄で認可外が担ってきた役割は大きい。しかしだからといって保育の質を置き去りにすることはできない。

 無償化のお墨付きを与えるからには、全ての認可外の実態を調査した上で、底上げを図る方向で指導監督を強化していく必要がある。

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 幼保無償化は安倍晋三首相が一昨年の衆院選を前に唐突に打ち出した公約だ。安全面に懸念を残しながらも実施を急いだのは、夏の参院選に向けて成果づくりの側面もある。

 高所得層ほど経済的恩恵が大きくなる仕組みへの疑問はいまだ払拭(ふっしょく)されていない。待機児童対策を優先すべきとの声も根強い。

 無償化と保育の質向上の両方を成り立たせるには、認可外から認可施設へのさらなる移行支援が求められる。保育士の処遇改善と増員も不可欠である。