穏やかなるかなカルネ村   作:ドロップ&キック
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キョロキョロ(・ω・。≡。・ω・)ダレモイナーイ
コソーリ深夜アップ|・ω・`)ノ □

サブタイがネタ切れ気味っす。





第74話:”PvPイベント:ネム vs クレマンティーヌ”

 

 

 

「《能力向上》《能力超向上》《超回避》《疾風走破》……!!」

 

自分の漆黒聖典第九席次としてコードネームの由来ともなった、切り札ともいえるオリジナル武技を含んだ武技を次々に重ねがけしてゆくクレマンティーヌ。

いかにモモンガの眼前とはいえ、ただの模擬戦なのになんか大人気(おとなげ)ない……というかガチ過ぎだった。

先ほど、加減した状態でガキ(ネム)に吹き飛ばされたのがよほど腹に据えかねたのだろうか?

 

というか、ここだけの話……

端的に言えばクレマンティーヌは、手合わせをネムに誘われたことをいいことに、ネムを人質にとってどう考えても勝ち目のないダークウォリアーやイビルアイが帰ってくる前に村から脱出するつもりだったようだ。

村に残ってる強者は、彼女の見立てだと自分を斬り捨てたクソッタレの人斬り(ブレイン)と、訳のわからぬ魔獣(ハムスケ)だけ。

実戦装備を没収され、おそらく蘇生によるレベルダウンをしてる現状では、正面から挑んでも敵わない。

なら、搦手をつかうだけだ。

 

ブレインは腹芸や交渉ができるタイプに見えないし、ハムスケはどうやらネムの使役魔獣くさい(そして彼女はデイバーノックにエンカウントしてない。無論、万が一に備えて意図的に合わせていない)。

『このガキさえ抑えてしまえば……』とクレマンティーヌが思うのは無理なかった。

 

 

 

だが、賢明な読者諸兄は既にお気づきだろう。

『見通しがどうしようもなく甘すぎる』と。

そう、腕試しを挑む段階でネムには、クレマンティーヌが思うだろうありがちな『小者的発想』など、とっくにお見通しだった。

いやむしろ、勝てると思わせるためにわざわざ弱体デバフがかかる「ステータスを落とす代わりに獲得経験値を上げる首輪」を装着して誘導したのだ。

しかも計画が上手くいけば、獲得経験値が上昇するのだから正しく一石二鳥だった。

 

ブレインに斬られたところで、デスペナのレベルダウンを起こしたところで、クレマンティーヌの心は折れてはいない。

実にレム好みの”イキの良い()()であった。

本来ならハムスケが戦場(いくさば)で強敵に会った時のように、

 

『命の奪い合いだよ♪』

 

と洒落こみたい所だが、流石にそんなことを言えばブレインあたりに止められてしまう。

あのサムライ・ソルジャーは、飄々としているようでいて変なところで真面目なのだ。

だからこそ、こうして本性を隠すように経験値上昇の代わりにデバフが掛かる首輪をつけて、ウエポン・マスターの職業スキルのため扱えることは扱えるが、バフが掛かるわけでも得意なわけでも好きなわけでもない片手剣と円小楯という組み合わせを選んだ。

訓練用の武器を互いに使うのだから、ネム的には自分も訓練着(ブルマ)でよかったのだが、案の定エンリもゼロも不在のときはスライドで”カルネ村修道会”トップとなるブレインから不許可にされてしまった。

ちなみにデイバーノックは、アンデッドという種族性質のためいざ急な来客があった際の対人交渉や対外折衝に向かない為、戦闘時以外は割と表に出ない。というか根が研究者気質の本人もそういう立ち位置は好きではないようだ。

 

この幼女、ドSというよりむしろ生粋のバトル・マニアのような血腥い匂いがプンプンする。

『返り血を浴びれば浴びるほどテンションが上がり、比例してバフが掛かる』職業スキル”狂戦士(ベルセルク)”を、しかもジーニアスで発現させてるんだから中身も相応に見合ったものになってるんだろう。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「死にさらせっ!」

 

「やーだよっ♪ 《のーりょくこーじょー(能力向上)》《そくおーはんしゃ(即応反射)》《ふらくよーさい(不落要塞)》《りょーいき(領域)》!」

 

死の神(モモンガ)”を奉じ、『死は生の一部である』という教えが浸透しているカルネ村の住人にとって、死は別段恐れるものではない。ネムあたりにとっては『死なんてただの状態だよ♪』と言い出しかねない。

ただ、デスペナでのレベルダウンが勿体無いので嫌なだけだ。

 

獲物を狙い伏する獣のように身を低くし、石弓で弾かれたような加速で突っ込んでくるクレマンティーヌに、ネムは4つのバフをかけて迎撃に供え、

 

「《たてきょーだ(盾強打)》」

 

カウンター気味にシールドバッシュを放つ!

 

「何度も同じ手を食うかよっ! 《流水加速》!」

 

事前にかけていた《超回避》との相乗効果でそれを跳躍にてかわし、逆に頭上からカウンターをしかけようとするが、

 

「避けてくれるって信じてたよ!」

 

”ヒュン”

 

それを読んでいたネムは自力と武技を重ねた怪力で、《盾強打》を強制解除し肘から先のスナップだけで左手に握る円小盾(バックラー)を真上に投擲!

 

「チッ!」

 

”キィーン!”

 

《領域》の知覚補正で視線を向けずとも投げられたバックラーと攻撃から防御の構えに変えたスティレットが衝突し、クレマンティーヌは弾き逸らすが……それはあくまでフェイント、

 

(《しゅんせん(瞬閃)》《ざんじん(斬刃)》!)

 

クレマンティーヌが着地する直前に体制を立て直したネムは、まだギリギリ効果が持続している《領域》にもう()()の武技を融合させ、

 

「秘剣もがりぶえ・ねむ(虎落笛・音夢)!!」

 

それは同じ七星剣の一太刀ブレイン・アングラウスがかつてガゼフ・ストロノーフに退行するために編み出した複合武技、最初期”秘剣”、そのネムなりのアレンジであった!

 

 

 

「なめるなぁーーーっ!! 《不落要塞》!!」

 

”グワギィィィーーーーン!!!”

 

本家本元のブレインに鋭さと速さで劣るとはいえ十分に人理を逸脱した重さの一太刀を、かつて英雄の領域に踏み込んでいたクレマンティーヌは交叉させたスティレットで火花を散らしながら受け止める!!

 

「へー♪」

 

しっかりと会心の一太刀を耐え切った打ち合いにネムは満足げな笑みを浮かべ、仕切りなおしとばかりにバックステップで距離をとった。

 

(クッソ! あのガキ、なんて一撃入れてきやがる!?)

 

腕に鈍い痺れが広がるが、そんなモノを表情に出すような真似はしない。

 

「やるじゃん、クレマンおねーちゃん♪ 流石にさっきみたいに簡単にはいかなかったか」

 

可愛くむしろ無垢ではあるのだが、同時に挑発を隠そうともしない笑顔に、

 

「クソガキ、今のがお前の奥の手かよ? 大したことぁなかったな」

 

あえて乗り挑発を返すクレマンティーヌ。

 

「ふ~ん……じゃあ、ネムはもうちょっとだけ本気出していいってことだよね?」

 

一連の打ち合いで武技の効果が切れていたネムは投げ当てたバックラーを拾いながらニンマリ笑うと、

 

「確かこうだったかな? 《のーりょくこーじょー(能力向上)ちょーのーりょくこーじょー(超能力向上)ちょーかいひ(超回避)しっぷーそーは(疾風走破)

 

「んなっ!?」

 

そのあんまりな事実に、今度こそクレマンティーヌは心底驚愕する。

 

「ガキ……テメェ、まさかアタシの技を盗んだのか? たった一回見ただけで……?」

 

「ついでに《りょーいき(領域)》っと……さあ? もしかしたらただのハッタリかもよ?」

 

「ふっざけんじゃねぇっ!!」

 

「さあ、クレマンお姉ちゃん……」

 

犬歯を剥き出しにして唸るクレマンティーヌにネムは再び剣と盾を構えながらにこやかに、

 

「再開だよっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございました。

とりあえず原作ではありえないキャラ&シチュのPvPイベントを書きたいなぁ~って思って書いてみた次第です(^^

このシリーズのクレマンさん、結構愉快でなおかつ大人気(おとなげ)ない感じで、しかもあんまり悪人臭がしなかったり。

とりあえず、このシリーズのネムは反則級(チート)キャラっす。






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