【日本の解き方】おごりと欺瞞の末に不祥事…やはり財務省の解体が必要だ 「予算」と「徴税」分離せよ

財務省の矢野康治官房長=4日午後、東京・霞が関の財務省(松本健吾撮影)
財務省の矢野康治官房長=4日午後、東京・霞が関の財務省(松本健吾撮影)

 事務次官のセクハラ発言や、文書改竄(かいざん)が発覚した財務省だが、出直すためには何が必要なのか。

 おごれる平家は久しからず。先人たちの教訓は生かされないまま過ちは繰り返された。予算編成権と徴税権を盾に政治家やマスコミ、他省庁をひれ伏させ、“最強官庁”の名をほしいままにしてきた財務省で、常識では考えられない、次官のセクハラ発言や文書改竄などの不祥事が連続した。

 “官庁の中の官庁”といわれる財務省に入ったエリート中のエリートたちが、なぜここまで稚拙な不祥事を繰り返すのか。多くの人が憤りを感じ、理解に苦しんだことだろう。

 「官僚の劣化」を指摘する声もある。しかし、財務官僚として長年その中枢で働いてきた筆者にしてみれば、財務省の「おごり」と「欺瞞(ぎまん)」は今に始まったことではない。「セクハラ、改竄、口裏合わせ」という不祥事の形でようやく表面化してきたにすぎない。

 財務省の「欺瞞」が最も顕著なのが、長年にわたる消費増税をめぐる議論だ。財務省は国債と借入金、政府短期証券を合わせた「国の借金」が1000兆円を超えたと喧伝(けんでん)し、増税を煽り続けているが、これは政府の負債だけに着目する実におかしな議論だ。

 本コラムで指摘してきたが、世界標準の考え方では国の財政状況を正しく見るためには日銀を含めた「統合政府」としてのバランスシートが基本だ。それで見ると、日本はほぼ財政再建が終わっている状態だ。

 当の財務官僚は自らのことを「悪者になってもいいから、あえて国民に不人気な増税という選択肢を突き進む国士」だと勘違いしている。この思い上がりに財務官僚の決定的な「おごり」があると思う。

 財務官僚の忖度という構図もあった。財務省に忖度したマスコミから流れたのかもしれないが、本コラムで筆者はありえないと断言した。時の政権をも脅かす財務省である。2度目の安倍晋三政権下でも、「財政再建」と「金融緊縮」を至上命題とする財務省は、「経済成長」と「金融緩和」を中心とする官邸と暗闘を繰り広げている。

 こうしたおごりと欺瞞にまみれた財務省が、前代未聞の不祥事を立て続けに起こした。筆者は、信頼回復のためには「財務省解体」という荒業が必要だと考えている。それほどまでに取り返しのつかないことを財務省はしてしまったのだ。

 財務省解体とは、国税庁を財務省から切り離し、日本年金機構の徴税部門と合併させて、新たに税金と社会保険料の徴収を一括して行う「歳入庁」を新設することだ。

 他省庁は予算を求め、政治家は徴税を恐れ、マスコミはネタを求めて、財務省にひれ伏している。世界を見渡しても「予算編成」という企画部門と「徴税」という執行部門が事実上、一体となっている財務省のような組織はまず見当たらない。詳しくは新著『財務省を解体せよ!』(宝島社新書)もご覧いただきたい。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)