“ザ・スカルペル=外科手術用のメス”の別名を持つKTMの新型ストリートファイター
『790 DUKE』は、KTM初となる並列2気筒エンジンを搭載したこれまでにないモデルで、開発段階では別名“THE SCALPEL(スカルペル=外科手術用のメス)”と呼ばれた新型ストリートファイターだ。
KTMをご存じない人のために、まず簡単に説明しておこう。正式な社名は「KTM Sportmotorcycle AG」といい、KTMは「Kraftfahrzeug Trunkenpolz Mattighofen(クラフトファールツォイク トゥルンケンポルツ マッティクホーフェン)」の頭文字を取ったもの。
クラフトファールツォイクは自動車のことで、トゥルンケンポルツは創業者の名、マッティクホーフェンは創業の地であるオーストリアの町の名を指す。
KTMは創業当時から積極的にレースに参加してきたが、特にオフロードバイクで華々しい戦績を挙げている。「世界一過酷なモータースポーツ」として知られるダカール・ラリーでは、2018年1月の第40回大会を含めて17連覇という驚くべき快挙を成し遂げているくらいだ。
もちろん、オンロードでも活躍しており、市販モデルではネイキッドバイクの『DUKEシリーズ』がトータルバランスの良さから人気を集めている。なかでも、2017年11月のEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)で発表されて以来、KTMファンが待ち望んでいたのが『790 DUKE』だ。
最高出力105hp! KTM『790 DUKE』はどんな難関コーナーも切れ味鋭く切り裂く
最大の特徴は、排気量799cc、水冷8バルブユニットのKTM初のインラインツインエンジン「LC8c(Liquid Cooled 8-Valve Compact)」を搭載したことにある。なんと最高出力77kW (105hp)/9000rpm、最大トルク86Nm/8000rpmを発揮するという。
利点はパワーだけではない。この並列ツインエンジンによって、車体をよりコンパクトに設計することが可能となり、乾燥重量約169kgという250ccバイクのような軽量な車体を実現した。これは驚きのスペックだ。
このエンジンパワーと軽さ、加えて高性能なWP製サスペンションを採用したことで、どれほど難しいコーナーであろうと、切れ味鋭くスパッと切り裂けるに違いない。
スタイリングは、丸みを帯びた形状ではなく直線的なデザインが採用され、可能な限りのコンパクトなルックスとフィーリングを持たせたものとなっている。特に異形のLEDヘッドライトで構成されるフロントマスクは印象的だ。カマキリの眼を想わせ、ひと目で『790 DUKE』であることを対向車に知らしめる。
このフロントマスクは、間違いなく流体力学に基づいて設計されたもので、今後の『DUKEシリーズ』の顔になっていくことだろう。
KTM『790 DUKE』の価格は約113万円…少々お高いが、これを選ばない手はない
ソフト面では、他メーカーの最新モデルと同様に、「スポーツ・ストリート・レイン・トラック(サーキット)」による4つのライディングモードを搭載。また、モーターサイクル・トラクション・コントロールはもちろん、シフトアップ、シフトダウンの両操作でクラッチレスになる「クイックシフター+」も搭載する。これは走り屋にとってうれしい装備だ。
カラーバリエーションは、KTMの公式チームカラーであるオレンジ+ブラック、そしてブラックが用意された。価格は112万9000円(税込)。発売時期は2018年5月中旬の予定だ。
最後にもう一度いうが、169kgの車体で105hp(!)である。バガーだ、ボバーだ、カフェレーサーだ…と最近の新型バイクはかまびすしいが、真のストリートファイターを求めるなら『790 DUKE』に跨る以外の選択肢はない。
Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C)KTM Sportmotorcycle AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)