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第32回 | 大人ライダー向けのバイク

KTM 790 DUKE──これぞ真のストリートファイターだ

モータースポーツファンなら誰もが一目置くオーストリアの老舗モーターサイクルメーカー、KTM(ケーティーエム)。とりわけオフロードバイク界では、その名を知らぬ者はいない。このKTMが600〜800ccのネイキッドという世界的にも競争が激しいカテゴリに投入したのが、“ザ・スカルペル”と呼ばれる新型ストリートモデルの『790 DUKE(デューク)』だ。そのできばえは出色で、2018年5月中旬には日本でも発売が予定されている。

“ザ・スカルペル=外科手術用のメス”の別名を持つKTMの新型ストリートファイター

『790 DUKE』は、KTM初となる並列2気筒エンジンを搭載したこれまでにないモデルで、開発段階では別名“THE SCALPEL(スカルペル=外科手術用のメス)”と呼ばれた新型ストリートファイターだ。

KTMをご存じない人のために、まず簡単に説明しておこう。正式な社名は「KTM Sportmotorcycle AG」といい、KTMは「Kraftfahrzeug Trunkenpolz Mattighofen(クラフトファールツォイク トゥルンケンポルツ マッティクホーフェン)」の頭文字を取ったもの。

クラフトファールツォイクは自動車のことで、トゥルンケンポルツは創業者の名、マッティクホーフェンは創業の地であるオーストリアの町の名を指す。

KTMは創業当時から積極的にレースに参加してきたが、特にオフロードバイクで華々しい戦績を挙げている。「世界一過酷なモータースポーツ」として知られるダカール・ラリーでは、2018年1月の第40回大会を含めて17連覇という驚くべき快挙を成し遂げているくらいだ。

もちろん、オンロードでも活躍しており、市販モデルではネイキッドバイクの『DUKEシリーズ』がトータルバランスの良さから人気を集めている。なかでも、2017年11月のEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)で発表されて以来、KTMファンが待ち望んでいたのが『790 DUKE』だ。

最高出力105hp! KTM『790 DUKE』はどんな難関コーナーも切れ味鋭く切り裂く

最大の特徴は、排気量799cc、水冷8バルブユニットのKTM初のインラインツインエンジン「LC8c(Liquid Cooled 8-Valve Compact)」を搭載したことにある。なんと最高出力77kW (105hp)/9000rpm、最大トルク86Nm/8000rpmを発揮するという。

利点はパワーだけではない。この並列ツインエンジンによって、車体をよりコンパクトに設計することが可能となり、乾燥重量約169kgという250ccバイクのような軽量な車体を実現した。これは驚きのスペックだ。

このエンジンパワーと軽さ、加えて高性能なWP製サスペンションを採用したことで、どれほど難しいコーナーであろうと、切れ味鋭くスパッと切り裂けるに違いない。

スタイリングは、丸みを帯びた形状ではなく直線的なデザインが採用され、可能な限りのコンパクトなルックスとフィーリングを持たせたものとなっている。特に異形のLEDヘッドライトで構成されるフロントマスクは印象的だ。カマキリの眼を想わせ、ひと目で『790 DUKE』であることを対向車に知らしめる。

このフロントマスクは、間違いなく流体力学に基づいて設計されたもので、今後の『DUKEシリーズ』の顔になっていくことだろう。

KTM『790 DUKE』の価格は約113万円…少々お高いが、これを選ばない手はない

ソフト面では、他メーカーの最新モデルと同様に、「スポーツ・ストリート・レイン・トラック(サーキット)」による4つのライディングモードを搭載。また、モーターサイクル・トラクション・コントロールはもちろん、シフトアップ、シフトダウンの両操作でクラッチレスになる「クイックシフター+」も搭載する。これは走り屋にとってうれしい装備だ。

カラーバリエーションは、KTMの公式チームカラーであるオレンジ+ブラック、そしてブラックが用意された。価格は112万9000円(税込)。発売時期は2018年5月中旬の予定だ。

最後にもう一度いうが、169kgの車体で105hp(!)である。バガーだ、ボバーだ、カフェレーサーだ…と最近の新型バイクはかまびすしいが、真のストリートファイターを求めるなら『790 DUKE』に跨る以外の選択肢はない。

Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C)KTM Sportmotorcycle AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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