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第31回 | 大人ライダー向けのバイク

北欧発の白い矢──ハスクバーナ ヴィットピーレン

スウェーデン語で「白い矢」を意味する斬新な新型モーターサイクルが日本に上陸する。その名は『VITPILEN 701』。そして、その400ccモデルの『VITPILEN 401』と、「黒い矢」を意味する兄弟モデル『SVARTPILEN 401』の3台だ。スウェーデンの老舗メーカー、ハスクバーナが送り出す、先進的なボディデザインのストリート向けモーターサイクルである。

ヨーロッパの職人気質を受け継ぐハスクバーナが送り出す大胆な新型モーターサイクル

この2機種が2015年にコンセプトモデルとして公開されたとき、先進的なボディデザインを纏いつつも、その時点ですでに高い完成度を持っていたことから、量産化を予想する者は多かった。そして、それは2017年11月のEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)の正式発表によって現実のものとなったのだ。

カジュアルスポーツの『VITPILEN (ヴィットピーレン)701』、その400ccモデルの『ヴィットピーレン401』、さらに、兄弟モデルでスクランブラーのような『SVARTPILEN(シュヴァルトピーレン)401』の3台は、ハスクバーナの「リアル・ストリート・モーターサイクル」に位置づけられている。

ハスクバーナはスウェーデンを本拠とするKTM傘下のメーカーだが、イタリアのオフロードバイクメーカーと思っている人も多いことだろう。あるいは、農林関係者ならチェーンソーのメーカーとして認識しているかもしれない。

企業としての歴史はともかく、強調しておきたいのは、ハスクバーナで働く技術者にはヨーロッパの職人気質が受け継がれているということだ。また、同社は20世紀初頭にバイクを作り始めて以来、現在まで一度も製造を中断していない世界最古のモーターサイクルメーカーとして知られる。

そのハスクバーナが、これほど大胆な新機軸の新型バイクを送り出してきたことは、それ自体が驚きなのである。

『ヴィットピーレン』のコンセプトは「スリムさ」+「軽快さ」=シングルエンジン

まず目を引くのは、『ヴィットピーレン』『シュヴァルトピーレン』ともに、全体の印象が非常にコンパクトなことだ。

それは、スパッと切り落とされたかのようなシートエンド、トラスフレームを構成する鋼管や5本スポークの細さ、シャープなタンク形状、そして部品の一つひとつに感じる隙のない美しさなどが要因だろう。

マフラーのテールエンドをシートエンドと揃えたのは、明らかに意図的なものだ。さらにグレイメタリックのボディカラーは、未来的かつ“スタイリッシュな冷たさ”を演出している。

しかし、実車を目にすると、コンパクトさよりも単気筒エンジンゆえのスリムさのほうがはるかに際立っている。いや、開発プロジェクトでは、スリムさと軽快さを得るためにシングルエンジンを基本としていたというから、それは当然だったのかもしれない。

極限まで贅肉をそぎ落としたシリンダーヘッドは、フレームのメインパイプで作られたケージのなかに完全に収まっている。

KTM『690 Duke』のLC4エンジンをベースにチューニングを加えた爆発的な加速力

『ヴィットピーレン701』のパワーユニットは、KTM『690 Duke』のLC4エンジンがベースで、そこにハスクバーナによるチューニングが加えられている。ボア・ストロークは105×80mmで、総排気量は692.7cc。最高出力はマルチエンジン並みの55kW(75hp)/6750rpmを発揮し、最大トルクは72Nmだ。半乾燥重量157kgの車重と合わせて考えると、痛快な加速力が味わえるのは間違いない。

『ヴィットピーレン401』と『シュヴァルトピーレン401』のパワーユニットは、ボア・ストローク89×60mmで、総排気量は373.2cc。最高出力は32kW(43.5hp)、最大トルク72Nmという数値になっており、半乾燥重量150kgの軽量ボディとのバランスから、シティランナーとしては好適だろう。

そう聞くと控えめなパワーを想像するかもしれないが、シングルエンジンとしては十二分のパワーとレスポンスの鋭さがあるので誤解してはいけない。

バルブ方式はSOHCだが、ヘッド内でカムシャフトと隣り合った位置にバランサーが備えられ、クランク側のバランサーとダブルでシングルエンジン特有の振動を打ち消している。

ロッカーアームにはローラー式を採用。これは静粛性と耐久性の向上、またクリアランス調整のしやすさという点でも有利だ。インジェクションは『ヴィットピーレン701』がケイヒン製で、『ヴィットピーレン401』と『シュヴァルトピーレン401』はBOSH製を採用した。ライドバイワイヤ(機械式ではなく電気信号)のスロットルで操作されるというトレンドも反映されている。

サスペンションは前後ともホワイトパワー製で、『ヴィットピーレン701』『ヴィットピーレン401』は前後ともストロークが135mm。『シュヴァルトピーレン401』はフロント142mm、リヤ150mmとなっている。しかし、これはオフロード向けのスタイリングのコンセプトに合わせたためだろう。

ブレーキは前後ともにブレンボで、フロントキャリパーはラジアルマウントだ。

ミッションはもちろん6速で、『ヴィットピーレン701』『ヴィットピーレン401』はスリッパークラッチを備えている。『シュヴァルトピーレン401』はアンチホッピングクラッチだ。

これらのクラッチは、スーパーモタードなどのレースで盛んに使われ、ハスクバーナにとってはそれこそお馴染みのメカニズム。トルク変動の大きなビッグシングルエンジンには、バックトルクを抑える福音的な存在なのだ。

価格は約135万円、“高機能最小限”のシンプルな贅沢さを持ったモーターサイクル

ホイールは『ヴィットピーレン701』だけがキャストホイールで、『ヴィットピーレン401』『シュヴァルトピーレン401』はワイヤーホイールとなっている。

『シュヴァルトピーレン401』はダートマシンのイメージを持つのでワイヤーでも違和感がないが、『ヴィットピーレン401』にこれを採用したのは、おそらく想定したユーザー層を考慮した価格設定との兼ね合いのためではないか。

その価格は、『ヴィットピーレン701』が135万5000円、『ヴィットピーレン401』『シュヴァルトピーレン401』はともに77万7000円となっている(いずれも税込み)。発売時期は、『ヴィットピーレン401』『シュヴァルトピーレン401』が2018年4月、『ヴィットピーレン701』は同7月の予定だ(『シュヴァルトピーレン 701』は日本導入未定)。

この2タイプ3モデルの北欧製マシンは、これまでのモーターサイクルとは存在そのものが異なるように思える。派手なカラーリングや音ではなく、独創性と精緻な美しさと「高機能最小限」とも呼びたくなるシンプルな贅沢さがあり、注目すべき新しいセグメントの方向性を示している。

価格は少々高めだが、この仕上がりと見比べれば納得できるというものだ。

Text by Koji Okamura
Photo by (C)Husqvarna Motorcycles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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