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第103回 | 大人のための最新自動車事情

これはクール!──フェアレディZのスノーモービル

アメリカはスキーやスケートなどのウインタースポーツが盛んだ。NHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)は北米4大プロスポーツリーグのなかで最も地域との結びつきが強く、北極圏に位置するアラスカ州では、犬ゾリやスノーモービルといったアクティビティが人気を集める。日本は徐々に暖かくなってきているが、アメリカ北部やカナダでは4月半ばまでスキーを愉しめるのだ。こうした土地柄のためか、自動車メーカーがとんでもないモデルを作ることもある。北米日産は2018年2月のシカゴオートショーで、『370Zロードスター』をスノーモービルに改造したワンオフモデルを公開した。その名も『370Zki』、つまり「370スキー」だ。

「フェアレディZ+スノーモービル」という奇想天外な発想から生まれた『370Zki』

「スポーツカーをスノーモービルに改造したらどうなるか?」──。『370Zki』はそんな奇想天外なアイデアから生まれたクルマ(スノーモービル)だ。

この発想をすること自体、アメリカという土地において雪のアクティビティが人気を集める証拠である。しかし、過去に同じことを考えた人はいたかもしれないが、それを実行した自動車メーカーはおそらく初めてだろう。

ベースは『370Zロードスター』。そう、あの『フェアレディZ』だ。大人の男たちにとってジャパニーズスポーツカーのアイコンでもある「Z」は、北米では『370Z』として販売されているのだ(ロードスターは日本では販売終了)。

奇想天外なアイデアであるがゆえに、『370Zロードスター』をスノーモービルに改造するのは意外と手間がかかる作業だったようだ。

なぜなら、このクルマは自動車ショーの会場に展示するために外観だけを改造しただけのものではなく、実際に雪道を、それもかなりのスピードで走ることができるからである。

足回りを大改造し、フロントタイヤの代わりにスキー、リヤにはキャタピラを装着

スノーモービルは、フロントに2本のスキーを履き、リアタイヤの代わりに装着したクローラー(キャタピラ)によって駆動する。

そこで、まず『370Zロードスター』のドライブトレインをすべて取り払い、特別製のキットで車高を3インチ(7.62cm)リフトアップ。フロントに長さ1m42cm、幅30cmのスキー板を装着し、リヤには長さ1m22cm、幅38cm、高さ76cmのクローラーを取り付けた。これらはAmerican Track Truck(アメリカン・トラック・トラック)社のパーツを使用した。

足回りの大改造に伴い、ブレーキやサスペンション、排気系の取り回しなどもカスタマイズされた。後方から『370Zki』の車体を見ると、交換されたエキゾースト・システムを確認することができる。

最大出力332hpを発揮する3.7L V6エンジンと7速ATの組み合わせに変更はない。ただし、雪山でのオフロード走行による損傷を防ぐために、ボディやエンジンはスキッドプレートによってガードされている。駆動方式は当然、FR(フロントエンジン・リヤ駆動)だ。

ボディにはIcon Image Graphics(アイコン・イメージ・グラフィックス)社による「370Zki」のロゴ入りのラッピングが施された。鮮やかなオレンジのカラーリングは、より雪山で映えるようにするための演出だろう。ヘッドライトはスキーのゴーグルをイメージしたイエローだ。

『370Zki』が販売される予定はなし…しかしオフィシャル動画で爆走シーンを公開

しかし、残念ながら『370Zki』はワンオフのコンセプトモデルで、販売される予定はないそうだ(そもそも日本ではそれほど需要もなさそうだが…)。

手間とお金をかけたクルマだけにもったいないが、自動車メーカーというのは、こうやって一見無駄に思えることを積み重ねて地域の顧客に自社のブランドをアピールしていくのだろう。

ちなみに、『370Zki』が雪煙を巻き上げて爆走する様子は、北米日産のオフィシャル動画(下のリンク)で見ることができる。興味がある人はぜひチェックしてほしい。

Text by Kenzo Maya Photo by (C) Nissan USA Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第130回 | 大人のための最新自動車事情

エモーションEV──バタフライドアの電動スポーツカー

ポルシェ初の量産EVスポーツカーとして話題の『タイカン』は今年生産を開始し、驚異的なスペックを誇るテスラのスーパースポーツカー『ロードスター』も2020年の発売を予定している。EVスポーツカーは、いま旬を迎えつつあるカテゴリだ。そうしたなか、アメリカのフィスカーがCES 2019で初公開した『エモーションEV』が予約受付を開始した。バタフライ4ドアが特徴の高級フルEVスポーツは、いったいどんなクルマなのか。

BMW『Z8』やアストンマーチン『DB9』のデザイナーが手がけた高級スポーツEV

フィスカー『エモーションEV』は、ヘンリック・フィスカー氏の手によるエレガントなデザインの高級EVスポーツカーだ。フィスカー氏はデンマーク出身の著名なカーデザイナー。BMWに在籍していた当時に『Z8』、EVコンセプトモデルの『E1』などを手がけ、アストンマーチンでは『DB9』『DBS』『ヴァンテージ』のデザインを担当した。

その後、独立してメルセデス・ベンツやBMWをベースにしたコンプリートカーやハイブリッドエンジン搭載のオリジナルモデルを製作するが、じつは、テスラで『ロードスター』『モデルS』の2モデルの開発に参加したこともあるようだ。そのせいというわけではないだろうが、『エモーションEV』のデザインはどこかテスラに似た雰囲気もある。

ともあれ、スタイリングは「美しい」のひと言に尽きる。とりわけ特徴的なのは、開くとドア側面が蝶の羽のような形に見える「バタフライ4ドア」だ。同じ上部に向かって開くドアでも、縦方向に開くシザースドアと違い、バタフライドアは外側が斜め前方に、内側が下向きに開く。駐車スペースに苦労する日本ではなかなかお目にかかれないドアだ。

バッテリーはリチウムイオンではなく炭素素材コンデンサ。多くの先端技術を搭載

面白いのは、バッテリーに多くのEVに採用されるリチウムイオンではなく、炭素素材コンデンサのグラフェンスーパーキャパシタを採用したことだ(全個体充電池搭載モデルもラインナップ)。1回の充電あたりの最大走行距離は約640km。急速充電の「UltraCharger」に対応しており、9分間の充電で約205km分の容量までチャージ可能という。

EVパワートレインは最高出力700psを発生し、最高速度は260km/h。このスペックを見ると、テスラ『ロードスター』のようなEVスーパースポーツではなく、あくまでスポーティカーという位置づけなのだろう。全長5085×全幅2015×全高1465mmのボディは軽量のカーボンファイバーとアルミニウムで構成され、駆動方式は四輪駆動だ。

このほか、ADAS(先進運転支援システム)としてクアナジー製LIDARセンサーを5個搭載し、コネクテッドなどのEVスポーツカーらしいさまざまな先端技術を装備する。

『エモーションEV』の価格は1440万円。予約も開始され今年中にデリバリー予定

前述の通り、『エモーションEV』はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルと全個体充電池搭載モデルの2モデルを設定。価格はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルが1440万円(税別)、全個体充電池搭載モデルの価格は未定だ。すでに日本でもデロリアン・モーター・カンパニーを正規代理店に予約受付を開始しており、グラフェンスーパーキャパシタは今年中の納車を予定している。ただし、予約金として約24万円が必要だ。

最近では東京都心部などでテスラをよく見かけるようになり、もはやEVは現実的な乗り物になりつつある。たしかに価格は1000万円オーバーと高価。しかし、この美しいルックスなら、他人と違うクルマに乗りたいという欲求を満たすことができるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fisker, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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