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第56回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

40年の進化に刮目せよ──メルセデス・ベンツGクラス

2018年1月のデトロイトモーターショーの会場でひときわ目を引いた琥珀色のブロック。高さ3.1m×長さ5.5m×幅2.55mの大きさで、設置したのはメルセデス・ベンツだ。そこに封印されていたのは、『Gクラス』の祖たる初代『ゲレンデヴァーゲン』。琥珀に閉じ込められた蚊から、恐竜の遺伝子を取り出して復活させた、あの映画を思い出させる演出である。このオブジェを見た誰もが、ここで発表される新型『Gクラス』が、脈々と受け継がれるDNAを色濃く反映する一台であることを確信しただろう。しかし、一方で、その進化にも大きな期待を寄せたはずだ。なぜなら、新型『Gクラス』は、その40年の歴史で初のフルモデルチェンジを受けたのだから──。

メルセデス・ベンツのSUVアイコン『Gクラス』が歴史上初のフルモデルチェンジ

『Gクラス』は、メルセデス・ベンツの歴史で最も長く生産されている乗用車であり、スリーポインテッドスターを冠する全SUVの祖先である。

源流は1979年、NATO軍に正式採用された軍用車だ。当時の名称は『ゲレンデヴァーゲン』。その後、1989年に2代目へとモデルチェンジし、1994年には『Gクラス』へと名称変更したが、シャーシやスタイリング、基本コンポーネントはデビュー当時から踏襲されている。

もちろん、この40年間、たゆまない進化は続いている。エンジンや足回り、内外装のアップデートと、改良を重ね続けてきた。

しかし、それらはすべて第一世代のマイナーチェンジ。今回はメルセデス・ベンツ自身が「第二世代」と表現するように、フルモデルチェンジにあたる。40年ぶりのモデルチェンジは、ほかに類を見ないのではないだろうか。

一般にフルモデルチェンジといえば、その外観も大きく変化する。しかし、新型『Gクラス』は、初代から受け継がれる外観、つまり、スクエアなボディに垂直なフロントマスク、丸形のヘッドライト、リアにはスペアタイヤなど、をそのまま踏襲した。

「フルモデルチェンジなのに…」とがっかりした人もいるかもしれないが、個人的にはメルセデス・ベンツのSUVアイコンが変わらなかったことをうれしく感じた。

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大きく進化した『Gクラス』の内装…室内空間はより広く、操作性や先進性が向上

では、どこが「第二世代」の大きな進化なのか。ひとつは内装だ。『Sクラス』や『Eクラス』にも搭載された12.3インチの大型ディスプレイを採用することで、操作性の向上はもちろん、先進性を感じさせるインテリアとなった。

また、室内も旧モデルよりも広くなっている。1列目シートはレッグルームとショルダールームが38mm、2列目シートではレッグルームが150mm、ショルダールームが27mmほど拡大された。

走行性能では、エンジンやトランスミッション、サスペンション、ステアリング、アシストシステムを変更してくれるドライブモードに、アウトドア走行に特化した「Gモード」が追加。「コンフォート」「スポーツ」「エコ」「インディビジュアル」と併せて、5つから選択できるようになった。

ちなみに、悪路走破性では、全輪駆動や低レンジのギアボックス、デフロックの個別ロック、ラダーフレームなどがこれまで通り受け継がれている。ただし、ラダーフレームの載せられるアルミ製のボディは新設計で、剛性が大幅に向上したという。

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パワートレインは4.0LのV型8気筒ターボ、日本での正式発表と上陸が待ち遠しい

パワートレインは、V型8気筒4.0Lターボとアナウンスされている。最高出力は310kW(422hp)、最大トルクは610Nm。このエンジンに組み合わされるトランスミッションは9速AT「9G-TRONIC」だ。結果として、燃料消費量は11.1L/100km、CO2排出量の合計は263g/kmという、高い環境性能を実現した。

もちろん、メルセデス・ベンツが誇る最先端の安全運転支援システムも搭載される。

残念ながら、まだ日本で正式発表されていないので情報が少ないが、キープコンセプトながら大きく進化したことは間違いない。一日千秋の思いで日本上陸を待ちたい。

関連記事:新型「メルセデス・ベンツGクラス」40年ぶりのフルモデルチェンジによって手にしたもの、そして失ったものとは?メルセデス・ベンツ Gクラスの中古車をチェック

Text by Tsukasa Sasabayashi

Photo by (C)Daimler AG

Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第77回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

エンスー垂涎の納屋物──メルセデス300SLガルウィング

ヒストリックカーの世界には、「バーン・ファウンド(Barn Found)」と呼ばれるジャンルが存在する。バーンは「納屋」、ファウンドは「見つかった」。つまり、納屋で見つかった古いクルマという意味だ。いわゆる「納屋モノ」。2年前の夏、岐阜県の納屋から発掘された1969年のフェラーリ『365GTB/4“デイトナ”』がオークションで高値落札され、世界中で大きなニュースとなったのは記憶に新しい。そして今年3月、やはり納屋で見つかった古いメルセデス・ベンツが、フロリダ州で開催されたコンクール・デレガンスに登場して注目を集めた。朽ち果てた姿で会場に展示されたそのクルマは、1954年に製造された『300SL“ガルウィング”』。名車中の名車とうたわれる、コレクター垂涎の一台である。

亡き石原裕次郎も愛車にしていたメルセデス・ベンツの名車『300SL“ガルウィング”』

『SLクラス』の「SL」は、ドイツ語でライトウェイトスポーツを意味する「Sport Leicht (シュポルト・ライヒト)」の頭文字からとったものだ。メルセデス・ベンツがラインナップする2シーターオープンカーの最高峰に位置づけられている。その初代モデルとなったのが『300SL』である。1954年のニューヨークモーターショーでデビューした。

通称は“ガルウィング”。特徴のひとつであるガルウィングドアに由来する。『300SL』はワークスレーサーのプロトタイプとして開発されたモデルで、当時のレーシングカーと同じ鋼管スペースフレーム構造をもっていた。それゆえに、ドアの下半分をフレームが通っており、また、開口部の敷居が高いうえに車高が低くて非常に乗り降りがしづらい。こうしたことから、やむを得ずガルウィングが採用されたというエピソードが残っている。

世界初の直噴エンジン搭載車としても知られ、車名の「300」はメルセデス・ベンツの排気量表記で3.0Lを意味する。直列6気筒エンジンは最高出力215psを発生し、最高速度は260km/h。当初は市販予定がなかったが、有力インポーターが北米市場に需要があるとメルセデス・ベンツを説得し、わずか1400台が生産・販売された。そのうちの一台は、あの昭和の大スター、石原裕次郎の愛車となり、現在も北海道小樽市の石原裕次郎記念館に展示されている。その『300SL』が、ご覧のような姿で納屋から発見されたのだ。

半世紀以上もガレージでホコリをかぶっていたが、ほぼオリジナルに近い状態を保持

シャシーナンバー「43」の『300SL』は、2018年末にフロリダ州のとあるガレージで見つかった。発掘したのはドイツ・シュツットガルト郊外に専用施設をもつ「メルセデス・ベンツ クラシックセンター」。同社のヒストリックカーのレストアのほか、レストア済み車両の販売も行う。施設内には真っ赤なボディカラーの『300SL』も展示されている。

この『300SL』は1954年にマイアミ在住のオーナーに出荷された個体で、走行距離計が示しているのは、たったの3万5000kmだ。Englebert社製のCompetition(コンペティション)タイヤにはまだ空気が少し残っていたという。車両自体もほぼ出荷時のままで、ボディパネル、ライト類、ガラスパーツ、グレーのレザーシート、ステアリングホイール、インテリアトリム、パワートレイン、ホイールにいたるまでオリジナルを保持している。

注目してほしいのは、「フロリダ植民400年」を記念した1965年のリアのナンバープレートだ。これを見ると、持ち主は少なくとも1954年から1965年までクルマを所有していたことがわかる。つまり半世紀以上を納屋で過ごしていた可能性が高いのである。

フロリダの国際コンクール・デレガンスには連番シャシーの二台の『300SL』が登場

ボロボロの『300SL』は発見したクラシックセンターの手にわたり、フロリダ州の高級リゾート地、アメリア・アイランドで毎年開催される「アメリア・アイランド・コンクール・デレガンス」(今年は3月7日から10日)にて旧車ファンたちにお披露目された。

その隣に並んでいたのは、見事に修復された鮮やかなブルーの『300SL』。驚いたのは、この個体のシャシーナンバーが「44」だったことだ。そう、納屋で発見された『300SL』の次に生産された個体なのである。『300SL』のような希少なヒストリックカーが連続するシャシーナンバーでコンクール・デレガンスに登場するのはかなりレアな出来事だろう。

『300SL“ガルウィング”』はメルセデス・ベンツのなかでも名車中の名車として知られ、自動車コレクターなら必ず所有したい一台といわれている。その価値は現在も上昇し続けているほどだ。そういう意味では、なんとも貴重で贅沢な光景といえるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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