従来のクルマとは異なる未来的なスタイリングの『i3』がより魅力的なデザインへ
量産車初となるCFRP(カーボン・ファイバー強化樹脂)素材を基本骨格に採用した完全新設計のボディ。そこに、あきらかに“これまでのクルマ”とは異なる未来的なスタイリングを載せたのが、ピュアEVのBMW『i3』だ。
プレミアムセグメントのコンパクトEVとはどうあるべきか? それを提案する形で生まれた『i3』は、ファッショナブルなスタイリングとEVならではの新しい“ドライビングファン”によって、先進的なクルマ好きたちを魅了した。
しかし、まったく古さを感じなかったが、気がつけば2013年7月のワールドプレミアから5年近い歳月が経っていたのである。
いくら先進的なスタイリングを持つといっても、発売から4年以上が経過すれば、より魅力的なデザインへのアップデートは必要だ。
新型『i3』のAピラーからルーフに沿って引かれたラインが高級感と低重心化を演出
とはいえ、もともとが完成された世界観を持つクルマである。変更点は、フロント周りのデザインの刷新など、最小限度に抑えられた。
まずフロント周りではバンパーのデザインを刷新し、横長のLEDターン・インジケーターも相まってワイドな印象となった。また、LEDヘッドライトを全モデルに標準装備し、安全性とデザイン性を同時に高めている。
リヤもフロントと同様に、ワイドな印象を与える新デザインのバンパーに変更された。その上部に配された横一直線のマット・クロームのラインが安定感を演出する。
しかし、新しい『i3』を最も特徴づけるのは、Aピラーからルーフに沿って引かれたシルバーのラインだろう。BMWいわく「モダンで洗練されたデザインとなった」とのことだが、これによって高級感が増し、腰高だった印象も払拭された。よりスタイリッシュな外観になったといえるだろう。
「ATELIER」「LODGE」「SUITE」の3つのテイストから選べる『i3』のインテリア
インテリアは従来通り、ダークな色合いの「ATELIER」、ナチュラルカラーの「LODGE」、ダルベルギア・ブラウンのレザーが落ち着いた印象の「SUITE」の3つのテイストから選択できる。ただし、「LODGE」にはソラリック・ブラウンのウール地にナチュラルレザーを組み合わせたシートを新たに採用した。
パワートレインに変更はない。2016年4月から採用されている33kWhの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載したモーター駆動のみ。最高出力は125kW/170ps、最大トルクは250Nm。じつは実時速100kmまで7.3秒で走る俊足なのだ。コンパクトEVでも後輪駆動を採用するのがBMWらしい。
1回の充電走行距離は390km。ただし、647ccの発電用エンジンを搭載したレンジ・エクステンダー装備車は、走行中にエンジンが電力を発電することで航続距離が121km延長され、511kmの走行が可能だ。
EVにはバッテリーの耐久性という不安があるが、新車登録から8年、走行距離10万km以内のバッテリー保証が標準装備されるので心配はいらないだろう。
追加された新グレードのスポーツモデル『i3s』、はたして日本に導入されるのか?
価格はインテリアや装備によって異なる。「ATELIER」は538万円、「SUITE」のレンジ・エクステンダー装備車は644万円となっている。
この価格には、前述のバッテリー保証のほか、3年間の主要なメインテナンスなどを無償提供する「BMW iサービス・インクルーシブ」、公共充電サービスを12カ月間無料で利用可能な「ChargeNow(チャージナウ)」も含まれる。
ひとつ気になるのは、新たに追加された新グレード『i3s』(メイン写真)が日本に導入されるかどうかという点だ。
『i3s』の「s」はもちろん、スポーツモデルであることを意味している。モーター出力は通常モデルに比べて14psアップ。車高は10mm低く、トレッドが40mm幅広くなるスポーツサスペンションを備える。それに伴い、ボディにオーバーフェンダーが装着され、そこに20インチの大径ホイールが収まるのだ。
BMWは古くから「駆け抜ける喜び」を謳ってきたメーカーである。次世代型EVの『i3』にもスポーティな走りを求めるファンは確実に存在する。『i3』の日本導入に期待しているユーザーは多いのではないだろうか。
Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) BMW AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)