editeur

検索
サービス終了のお知らせ
第11回 | シトロエンの最新車デザイン・性能情報をお届け

シトロエンEメアリ──休日はビーチカーで愉しもう

ビーチカーと聞いてもピンと来ない人が多いかもしれない。海沿いのリゾート地での利用を想定したクルマのことで、たとえば、ホテルとビーチの往復といったシーンで活躍する。代表車種のひとつは、ヨーロッパで長きにわたって親しまれた初代シトロエン『メアリ』。その『メアリ』をモチーフにしたEV(電気自動車)のビーチカーが、2016年にデビューした『Eメアリ』だ。2018年1月、この『Eメアリ』に改良を施した新型車が登場した。

1968年に登場したシトロエン『メアリ』をモチーフにしたビーチカー『Eメアリ』

『Eメアリ』が本国で発売されたとき、フランス車に詳しい人なら懐かしさを覚えたに違いない。そう、『Eメアリ』は、1968年から約20年にわたって生産された4シーターオープンの『メアリ』をモチーフとする。

『メアリ』は、シトロエン『2CV』のメカニズムを応用して誕生し、悪路走行を得意とするユニークなクルマだった。1948年に登場した『2CV』は、「こうもり傘に四つの車輪をつけた自動車」というコンセプトから生まれた20世紀を代表するフランスの大衆車。また、『メアリ』は当時としてはめずしい樹脂製ボディを持ち、錆びないことから農家などでも愛用された。

『Eメアリ』の特徴は、ご覧のように、『メアリ』譲りのユニークなスタイリングにある。全長3810mm×全幅1870mmの“短く幅広い”ボディは、フロント周りこそ日本でも限定販売された『C4カクタス』に似ているが、Bピラー以降はクルマというより遊園地の乗り物のようだ。

ボディパネルはプラスチック製で、標準仕様ではサイドウインドウすらつかない徹底ぶり。その一方、ファンカーという性格から、2スピーカーのBluetoothオーディオを装備するのがおもしろい。

最高速度110km/h、ビーチでのレジャー用途なら申し分ない『Eメアリ』の動力性能

今回のマイナーチェンジでは、実用性や安全性、質感が大幅に高められた。

電動パワートレインは、50kW(68ps)の最高出力を持つモーターのトルクを約20%引き上げ、最大トルク166Nmにアップ。最高速度は110km/hに達するというから、レジャー用途のクルマとしては申し分ない。

バッテリーはフランス・ボロレ製のリチウムメタルポリマー電池で、1回の充電で最大195kmの走行が可能とされている。また、新たに安全装備が強化され、ABS、ESP(横滑り防止装置)、4つのエアバッグ、タイヤ空気圧モニタリング、シートベルトリマインダー、自動ハイビームが備わった。

ビーチで泳いだ後にそのまま乗車でき、ホースで水をかけて車両を丸洗いもできる

エクステリアに大きな変更はないが、脱着可能なハードトップ仕様が登場したのは大きなトピックだろう。ハードトップ仕様にはサイドウインドウも装備され、より日常での使い勝手が高まった。

インテリアは、ダッシュボードやドアトリムが『C3』や『C4カクタス』と共通したイメージのデザインになったほか、シートも一新。後部座席へのアクセスを容易にする「イージーエントリーシステム」も採用された。センターコンソールとドアパネルには収納も備える。

シートには撥水加工が施されているので、ビーチで泳いだ後にそのまま乗車できる。また、車外からホースで水をかけて車両を丸洗いすることも可能。これはサイドウインドウのないソフトトップが標準仕様の『Eメアリ』らしい部分だ。

ちなみに、今回のマイナーチェンジでは「メイド・イン・フランス」を証明する「Origine France Guaranteed」の認証を取得した。これはEVとして初のことである。

『Eメアリ』の価格はおよそ350万円、ただしバッテリーは月額1万円のレンタル式

ラインナップは、ソフトトップ仕様とハードトップ仕様、そしてフランスのファッショブランド「クレージュ」によってコーディネートされたブラックモノトーンの「Styled by Courrèges」の3つの仕様が用意される。

標準のソフトトップ仕様とハードトップ仕様は、4色のボディカラーと2タイプのインテリアから選択可能。オプションでAC(エアコン)も装着できる。

価格は日本円でおよそ350万円からと、けっして安くはない。しかし、ビーチカーは、複数台のクルマを所有するような余裕のあるオーナーにこそニーズがある。価格は大きな問題ではないだろう。あらゆるクルマを愉しも尽くした大人が手にする遊びのクルマなのだ。

むしろ問題は、『Eメアリ』が正規輸入されず、そのうえバッテリーがレンタル式(月額およそ1万円)であることだ。それでもほかにないビーチカーを手に入れたいという人は、並行輸入業者に相談してみるといいだろう。

Text by Muneyoshi Kitani

Photo by (C) Automobiles Citroën

Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

ピックアップ
第15回 | シトロエンの最新車デザイン・性能情報をお届け

この新型SUVは空飛ぶ絨毯だ──シトロエンC5エアクロス

『2CV』、そして『DS』、近年では『C3』『C4カクタス』。フランスのシトロエンは、独創的なクルマを作ることで知られるブランドである。それはいま世界的に流行するSUVにおいても変わらない。シリーズの名称は「エアクロス」。ヨーロッパでは『C3エアクロス』『C4エアクロス』が人気を集める(日本へは未導入)。この二台の上位車種となるのが、昨年末にヨーロッパで発売された最新SUVの『C5エアクロス』だ。

激戦区のCセグメントに参入。シトロエンの最新コンパクトSUV『C5エアクロス』

『C5エアクロス』は、2015年に上海モータショーで発表された『エアクロス コンセプト』の市販バージョンだ。コンセプトモデルが上海でお披露目されたことでわかるように、もともと「エアクロス」は中国やロシア、南米に向けて開発されたシリーズ。しかし、ヨーロッパで販売されると予想以上の人気モデルとなり、なかでも現行『C3エアクロス』は2017年10月の発売から4カ月で5万台のセールスを記録したほどである。

その兄貴分となる『C5エアクロス』は、世界的な激戦区のCセグメントに属する5シートのコンパクトSUV。デイライトとヘッドライトを上下で切り分けた独特のフロントフェイスに、『C4カクタス』から続くエアバンプ(残念ながらこちらはダミー)と、シトロエンの最新デザイン言語を採用。ルーフレールや樹脂製のサイドクラッディングなど、よりSUVらしいディティールも取り入れている。世の多くのSUVが力強さを主張するかのような意匠を持つなかで、全体的に丸みを帯びた威圧感のなさがシトロエンらしい。

プラットフォームは、プジョー『3008』『5008』などと共有するPSA(プジョー・シトロエン)の「EMP2(Efficient Modular Platform 2)」。ボディサイズは全長4500mm×全幅1840mm×全高1670mmと、全幅こそやや広いが、日本の道路事情にも適したサイズといえる大きさだ。SUVらしく最低地上高は230mmを確保している。

新開発サスペンションにより、まるで「空飛ぶ絨毯」のような快適な乗り心地を実現

プラットフォームを同じにする『3008』などのプジョー車とは異なり、『C5エアクロス』はコンフォート性能を徹底的に追求している点に大きな特徴がある。

シトロエンといえば油圧式のハイドロサスペンションを思い浮かべるが、『C5エアクロス』はその乗り心地を受け継ぐ新開発の「Progressive Hydraulic Cushions=プログレッシブ・ハイドロリック・クッション」を採用。KYBSE(カヤバ・サウス・ヨーロッパ)と共同開発したサスペンションで、『C4カクタス』もマイナーチェンジで導入している。

このサスペンションは、電子制御を用いずともダンパーの減衰力(強さ)をバリアブルに変化させることが可能。たとえば柔らかさがほしいとき、あるいは手応えを感じたいとき、車両のスピードによってダンパーが逐一コンフォート(快適さ、安心感)に反応してくれるのだ。これにより、まるで「空飛ぶ絨毯」のようなライド感を実現するという。

パワーユニットは、ガソリンが1.2L 3気筒の「ピュアテック130」と「ピュアテック180」の2種類で、ディーゼルの「BLUE HDi」も「130」と「180」がラインナップされる。トランスミッションは8速ATの「EAT8」。コースティング機能を備え、少燃費にも貢献する。本国では6MTも用意されているが、日本への導入は微妙なところだろう。

家族や仲間が快適に移動できる室内空間。先進の安全装備がドライビングをサポート

インテリアもコンフォートに重きが置かれている。極上の乗り心地にひと役買っているのは「Advanced Comfortシート」だ。前席にはマルチポイントマッサージシステムが搭載され、タッチパッドコントローラーによる操作で各部をマッサージ可能。シトロエン伝統のシート面の厚さと絶妙な柔らかさも受け継ぎ、乗員全員が快適に移動できる。

ドライバーズシートに座ると、目の前には12.3インチTFTパネル液晶と8インチタッチスクリーンが広がり、コントラストの効いた見やすい表示で情報を伝えてくれる。『C3』に標準搭載され、日本でも話題となったドライブレコーダー「コネクティッドカム」やスマホ用ワイヤレス充電システムなど、「今ほしい」機能も標準装備した。

インテリア全体は、広報写真をみるとブラウンレザーを多用しており、大人に似合う雰囲気だ。この点も、やはり『C3』や『C3エアクロス』より兄貴的存在となっている。

安全運転支援システムでは、アダプティブクルーズコントロール、アクティブセーフティブレーキ、アクティブレーンキーピングアシスト、道路標識認識機能を搭載。高速道路ではインテリジェントビームヘッドライトによってハイとローの切り替えも自動で行う。

ライバルはBMW『X1』やアウディ『Q3』。『C5エアクロス』の価格は約340万円から

ボディカラーは7色展開で、ルーフがブラックのツートーン仕様も選べる。さらにサイドのエアバンプとフロントバンパーのインテークもカラーインサートとして設定され、カラーパッケージは大きく3種類が用意された。組み合わせは30にも上る豊富さだ。

すでにヨーロッパでは昨年末から販売が開始され、価格はエントリーグレードの1.2L 3気筒「ピュアテック130」がおよそ340万円。日本への導入も予定されている。

特徴的なエクステリアに「空飛ぶ絨毯」と称される乗り心地、そして十二分な安全運転支援システムと、『C5エアクロス』はどこを切り取っても魅力溢れるCセグメントSUVだ。ルノー『カジャー』、BMW『X1』、アウディ『Q3』、フォルクスワーゲン『ティグアン』あたりが直接的なライバルとなりそうだが、価格的にも狙い目といっていいだろう。

Text by Taichi Akasaka
Photo by (C) Peugeot Citroën
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
New Citroën C5 Aircross オフィシャル動画
ピックアップ

editeur

検索