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第9回 | あの人のオススメの車

革命家のこだわり──スティーブ・ジョブズのBMW Z8

没後6年半余り。もしスティーブ・ジョブズが生きていれば、63歳を迎えることになる。この間、ジョブズについて多くのことが語られてきたが、カーガイが今気になるのは「ジョブズ亡き後のアップルがいつ、どんな自動運転車を作るのか?」ということだろう。あるいは「もしジョブズが生きていたら、どんなクルマに乗るのか?」かもしれない。彼はクルマにこだわりを持っていたからである。たとえば、ジョブズが所有していた愛車のひとつがBMW『Z8』だ。このスポーツカーは2017年12月にオークションに出品されて、世界中で話題になった。

ボンドカーにも選ばれた流麗なスタイリング、ジョブズが所有したBMW『Z8』とは?

今思えば、このクルマはiPhoneの登場を予感させるものだった。ご覧のBMW『Z8』は、スティーブ・ジョブズが2007年6月下旬に発表した初代iPhoneと同様に、アルミ製ボディを纏ったプロダクトだ。おまけに、オリジナルアクセサリーとして付属したのは、モトローラ製の携帯電話である。

『Z8』は1997年の東京モーターショーでコンセプトカーとして発表され、2000年から2003年まで生産された2シーターオープンのスポーツカーだ。

モチーフとなったのは、1950年代後半のBMWの名車『507』。『Z8』はスクリーンでも活躍し、2000年に公開された映画『007ワールド・イズ・ノット・イナフ』ではジェームズ・ボンドの愛車“ボンドカー”として登場している。

実際、その端正なスタイリングは、ジョブズよりボンドに似合いそうだ。加えて、心臓部に搭載したのはBMW『M5』(E39型)用の5.0L V8エンジンである。最大出力400psを発生し、0~100km/h加速は4.7秒を誇った。

落札価格は約3730万円、BMW『Z8』とアップルの製品哲学には共通するものがある

ジョブズがこの『Z8』を手に入れたのは2000年10月のこと。当時親交があったアメリカの大手ソフトウエア企業、オラクルのラリー・エリソン(元CEO、当時はCTO)に「『Z8』とアップルの製品哲学には共通するものがある」と熱心にすすめられたことから、新車で購入したのだという。

たしかに、シルバーのボデイカラーとブラックのインテリアのコンビネーション、パワフルなエンジン、無駄のないシンプルなボディラインは、のちのアップル製品を彷彿とさせる。

『Z8』の当時の価格は、約12万8000ドル(約1430万円)。ジョブズは3年間にわたって『Z8』を所有し、その後、あるオーナーに売却する。自動車オークションの最大手、RMサザビーズが2017年12月にニューヨークで開催したオークションにこのクルマを出品したのはそのオーナーだ。

出品された『Z8』の走行距離は1万5199マイル(約2万4460km)で、ジョブズの名前が記された登録証、純正ハードトップ、オリジナルアクセサリーであるモトローラ製の携帯電話も付属した。気になる落札価格は32万9500ドル。日本円で約3730万円となる高値が付けられたという。

メルセデス・ベンツ『SL55 AMG』にポルシェ『928』…ジョブズのこだわりの愛車

しかし、ジョブズの愛車として最も有名なのは、『Z8』ではなく、ナンバープレートのないメルセデス・ベンツ『SL55 AMG』かもしれない。

カリフォルニア州では、新車は「6カ月以内」にナンバープレートを装着しなければならないと車両規則で定めている(2019年から購入時に仮のナンバーを付けることを義務化)。

そこで、ナンバープレートを付けたくなかったらしいジョブズは、購入して半年経つとクルマを売却し、そのたびに新しい『SL55 AMG』を買い直していたのである。このエピソードが話題になったことで、ジョブズ=『SL55 AMG』のイメージが広まった。ちなみに、このクルマのボデイカラーもシルバーだった。

ポルシェのイメージも強いかもしれない。2015年に公開された映画『スティーブ・ジョブズ』には、若き日のジョブズがポルシェ『928』を運転するシーンが描かれている。ジョブズは当時、「Macの筐体はフォルクスワーゲンではなく、ポルシェのようであるべきだ」と語っていたという。彼はポルシェを理想のブランドのひとつと考えていたのだ。

いずれにせよ、ジョブズが所有したクルマたち──その大半はポルシェ、BMW、メルセデス・ベンツのドイツ車──に共通するのは、卓越した動力性能によって導き出された素晴らしいデザイン性を持っていることだろう。

もしジョブズが生きていたら…。そのときアップルは、いったいどんな革命的な自動運転車を生み出したのだろうか?

Text by Kenzo Maya
Photo by (C)RM Sotheby’s
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第8回 | あの人のオススメの車

夏木陽介 ご自慢の「愛しのクルマ」

ジャガーEタイプシリーズ1クーペ[1967/イギリス]
製造開始年/1964年
排気量/4235cc
エンジン/直列6気筒DOHC

「英国車の華麗なフォルムと
走りの楽しさに惹かれています」

英国車に共通する色気には
どんな男でもワクワクする

エンジン音を響かせて待ち合わせの場所に颯爽と現れた一台のクラシカルな英国車。フロントガラスの奥に見える笑顔は、青春スターとして活躍していた時代と同じ爽やかさが漂っている。ドアを開けて出てきたのは俳優の夏木陽介さん(80歳)。青春ドラマの魁さきがけとなった日本テレビの「青春とはなんだ」など、隠れ家世代にはお馴染みかつ憧れの存在であり、齢とともに渋さを重ねてその格好良さはむしろ増したように思える。

上/260km/hまで刻まれたスピードメーターが目を引く。中/センターロック式のワイヤーホイール。一点
の曇りもなく輝いていた。下/ジャガーに似合う砲弾型のサイドミラー。どこをとっても気品が漂うクルマだ。



若い頃からクルマ好きの夏木さんはかつてラリードライバーとして活躍し、1985年から「パリ・ダカールラリー」に8年連続出場。また、近年では福井県あわら市の「金津創作の森」で5月に行われるクルマ好きが集まるイベント、FTP(フレンチ・トースト・ピクニック)にも毎年ゲストで登場している。

住まいのある東京から福井までを共に走るのは、今回乗ってきたジャガーEタイプシリーズ1クーペ。2015年に福井で手に入れた1台で、黒に近いダークグリーンの品のいいカラー、シャープなフォルムが印象的なクルマだ。

「英国車はドイツ車に比べて武骨さがない。乗った感じが柔らかなんですね。で、なにより色気がある!」。
今までもジャガーSS100、マーク5コンバーチブル、XK120クーペなど数々の名車に乗っているが、最近ではこの英国仕様のシリーズ1クーペが欲しかったとか。
ふと思いたって夜中でも東名高速道路を走って山中湖、河口湖を周り中央自動車道でぐるりと東京へ戻ってくるという夏木さん。
「ほぼ300㎞の道のりなので走るのにちょうどいいんです」
愛車とともにある時間がなにより幸せ……。そう語る夏木さんは今も青春真っ只中である。

続きはdマガジンでお楽しみ下さい
男の隠れ家 2016年10月号 夏木陽介 あなたのクラシックカー見せてください!
新しいモノが続々と登場し、新品であることが良かれとされる時代。そう、クルマもしかり。しかし、今回の特集ではあえて古いクルマ、いわゆるクラシックカーにスポットを当てる。様々な規制でこれら古いクルマを維持管理していくのが大変な世の中になった。しかし、ここでは声を大にして言いたい。いま、古いクルマこそ新しい! 古いクルマこそ格好いいのだ! さあ、50人の少年ご自慢の「愛しのクルマ」をご覧あれ!

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プロフィール
夏木陽介(なつき ようすけ)
1936年2月27日生まれ。テレビドラマ「青春とはなんだ」「Gメン'75」に出演。クルマ好きとして有名でクラシックカーを中心に百台以上の所有歴がある。現在の所有車はジャガーEタイプ2台、ジャガーSS100、ローバーミニなど。 またラリードライバーとしての経歴も持ち、1985年・1986年にダカール・ラリーに篠塚建次郎・増岡浩といったドライバーを擁して「チーム三菱・シチズン夏木」の監督として出場した。
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