イーロン・マスクいわく「最高のEVを作りたいのではなく、最高のクルマを作りたい」
言わずもがなだが、テスラはEV(電気自動車)メーカーである。これまで発売してきたクルマは、そのほとんどが高級車だ。多くの富裕層やイノベーターに受け入れられ、高い知名度を得ることとなった。唯一、成功したEVメーカーといってもいいだろう。
成功の要因はいくつかあるが、そのひとつは、自動車メーカー出身の技術者が走りを追求して開発していることにある。テスラのクルマは、環境にいいとか未来的とかいう前に、そもそも走り自体を愉しめるのだ。
イーロン・マスク氏も常々、「最高のEVを作りたいのではなく、最高のクルマを作りたい」と語っている。
その言葉通り、テスラ初となるクルマはスポーツカーの『テスラ ロードスター』だった。2008年の発売で、車体のベースは『ロータス カーズ』である。当時から人気は高かったが、まだ今ほどの知名度はなかった。あれから10年、新型はいったい、どのような進化を遂げたのだろうか。
最高時速は400km/h以上、新型『テスラ ロードスター』はF1カーより速く加速する
最初に断っておくが、2020年の発売なので、情報はかなり少ない。そんななかでも、すでにスペックは公開されている。そのスペックを見れば、驚きを隠せないだろう。
4輪駆動で、ホイールトルクは1万Nm。0-100km/h加速は2.1秒、1/4マイル(0-400m)加速は8.8秒。最高時速は400km/h以上に及ぶ。それでいて、1回の充電で航続距離は1000kmだという。
まず、その航続距離に驚く。200kWhのバッテリーを搭載することで、航続距離は1000kmに到達。テスラのフラッグシップ『モデルS』の約2倍となる。EVを敬遠する最大の理由となっている、航続距離の短さへの不安を払拭するには十分すぎるスペックだ。
そして、動力性能。もはや既存のスポーツカーと比較することには意味がない。たとえば、0-100 km/h加速の2.1秒を比較するなら、F1カーだ。一般的に、F1カーの0-100km加速は約2.5秒といわれている。つまり、『テスラ ロードスター』は、モータースポーツの頂点を走るマシンよりも、速く加速できるクルマなのである。
時速400kmに至っては、新幹線よりも速い。しかし、じつは時速400kmを超えるクルマはいくつか存在する。有名なのは、ブガッティ『シロン』だろう。その最高速度は420km。『テスラ ロードスター』を上回る。
2000万円超の『テスラ ロードスター』は、その驚異のスペックを考えれば超格安!?
ある自動車評論家との立ち話で、印象に残っている言葉がある。
「ランボルギーニのフラッグシップである『アヴェンタドール』の最高時速は350km/h。価格は4500万円くらい。それよりも80kmほど最高時速が速い『シロン』は3億円以上(正確には240万ユーロ)。400kmの壁を越えるのに2億円以上かかっている計算だ。それに比べて、テスラの『ロードスター』は、たかだか2000万円程度で買える。クルマ好きの小金持ちなら、必ず食指が動くよ」
『テスラ ロードスター』のベースモデルの車両本体価格は約2270万円、1000台限定発売の『ファウンダーモデル』は2840万円となっている。
ちなみに、予約するには、ベースモデルは568万4000円、『ファウンダーモデル』では全額が必要となる。この価格で、F1カー並の加速と世界最高クラスの速度を叩き出すモンスターマシンが買えるとしたら、たしかにお買い得なのかもしれない。
EVの概念を覆し、新時代の指針となる『テスラ ロードスター』の発売まであと2年
最後に、ボディについても触れておこう。といっても、発表されている写真以上の情報はまだないが…。これだけのスーパースポーツでありながら、定員は4人。2+2なのか、大人4人が座れるのかはわからない。
インテリアの写真は少ないが、ステアリングが四角形であることがわかる。好みは分かれるかもしれないが、未来的なデザインであることはたしかだ。また、ステアリングの横には、テスラインテリアの代名詞でもある、大きなディスプレイが見てとれる。
エクステリアは流線形でエレガント。ノーズは低く、リヤエンドに向けて一気に傾斜するファストバックがスポーティーだ。空力を最大限効率化するためだろうか、エアロパーツは多用していない。しかし、広い全幅と張り出したフェンダーが力強さを醸し出している。
ちなみに、『ロードスター』の車名からわかるように、ガラスルーフは取り外し可能。軽量かつトランクに収納できるので、気軽にオープンエアドライブを愉しめる。
テスラは今、『モデル3』の生産の遅れが指摘されている。『テスラ ロードスター』はぜひ、予定通り2020年に発売して欲しい。もしかすると、EVの概念を覆し、新時代のEVの指針となる一台になるかもしれない。
Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Tesla
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)