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第101回 | 大人のための最新自動車事情

F1カーよりも速い驚異的なEV──テスラ ロードスター

以前から注目されていたテスラのスポーツカー、『テスラ ロードスター』の予約受注が2017年11月から始まった。ワールドプレミアでは、テスラの創業者で、最高経営責任者でもあるイーロン・マスク氏自ら発表するという力の入れようだ。発売予定は2020年だが、すでにかなりの話題となっている。その理由は、これまでのスポーツカーとは別次元の、圧倒的なスペックだろう。

イーロン・マスクいわく「最高のEVを作りたいのではなく、最高のクルマを作りたい」

言わずもがなだが、テスラはEV(電気自動車)メーカーである。これまで発売してきたクルマは、そのほとんどが高級車だ。多くの富裕層やイノベーターに受け入れられ、高い知名度を得ることとなった。唯一、成功したEVメーカーといってもいいだろう。

成功の要因はいくつかあるが、そのひとつは、自動車メーカー出身の技術者が走りを追求して開発していることにある。テスラのクルマは、環境にいいとか未来的とかいう前に、そもそも走り自体を愉しめるのだ。

イーロン・マスク氏も常々、「最高のEVを作りたいのではなく、最高のクルマを作りたい」と語っている。

その言葉通り、テスラ初となるクルマはスポーツカーの『テスラ ロードスター』だった。2008年の発売で、車体のベースは『ロータス カーズ』である。当時から人気は高かったが、まだ今ほどの知名度はなかった。あれから10年、新型はいったい、どのような進化を遂げたのだろうか。

関連記事:電気自動車の走行距離が2倍に?関連記事:ポルシェ、初の電気自動車「ミッションE」を2020年に国内導入

最高時速は400km/h以上、新型『テスラ ロードスター』はF1カーより速く加速する

最初に断っておくが、2020年の発売なので、情報はかなり少ない。そんななかでも、すでにスペックは公開されている。そのスペックを見れば、驚きを隠せないだろう。

4輪駆動で、ホイールトルクは1万Nm。0-100km/h加速は2.1秒、1/4マイル(0-400m)加速は8.8秒。最高時速は400km/h以上に及ぶ。それでいて、1回の充電で航続距離は1000kmだという。

まず、その航続距離に驚く。200kWhのバッテリーを搭載することで、航続距離は1000kmに到達。テスラのフラッグシップ『モデルS』の約2倍となる。EVを敬遠する最大の理由となっている、航続距離の短さへの不安を払拭するには十分すぎるスペックだ。

そして、動力性能。もはや既存のスポーツカーと比較することには意味がない。たとえば、0-100 km/h加速の2.1秒を比較するなら、F1カーだ。一般的に、F1カーの0-100km加速は約2.5秒といわれている。つまり、『テスラ ロードスター』は、モータースポーツの頂点を走るマシンよりも、速く加速できるクルマなのである。

時速400kmに至っては、新幹線よりも速い。しかし、じつは時速400kmを超えるクルマはいくつか存在する。有名なのは、ブガッティ『シロン』だろう。その最高速度は420km。『テスラ ロードスター』を上回る。

2000万円超の『テスラ ロードスター』は、その驚異のスペックを考えれば超格安!?

ある自動車評論家との立ち話で、印象に残っている言葉がある。

「ランボルギーニのフラッグシップである『アヴェンタドール』の最高時速は350km/h。価格は4500万円くらい。それよりも80kmほど最高時速が速い『シロン』は3億円以上(正確には240万ユーロ)。400kmの壁を越えるのに2億円以上かかっている計算だ。それに比べて、テスラの『ロードスター』は、たかだか2000万円程度で買える。クルマ好きの小金持ちなら、必ず食指が動くよ」

『テスラ ロードスター』のベースモデルの車両本体価格は約2270万円、1000台限定発売の『ファウンダーモデル』は2840万円となっている。

ちなみに、予約するには、ベースモデルは568万4000円、『ファウンダーモデル』では全額が必要となる。この価格で、F1カー並の加速と世界最高クラスの速度を叩き出すモンスターマシンが買えるとしたら、たしかにお買い得なのかもしれない。

EVの概念を覆し、新時代の指針となる『テスラ ロードスター』の発売まであと2年

最後に、ボディについても触れておこう。といっても、発表されている写真以上の情報はまだないが…。これだけのスーパースポーツでありながら、定員は4人。2+2なのか、大人4人が座れるのかはわからない。

インテリアの写真は少ないが、ステアリングが四角形であることがわかる。好みは分かれるかもしれないが、未来的なデザインであることはたしかだ。また、ステアリングの横には、テスラインテリアの代名詞でもある、大きなディスプレイが見てとれる。

エクステリアは流線形でエレガント。ノーズは低く、リヤエンドに向けて一気に傾斜するファストバックがスポーティーだ。空力を最大限効率化するためだろうか、エアロパーツは多用していない。しかし、広い全幅と張り出したフェンダーが力強さを醸し出している。

ちなみに、『ロードスター』の車名からわかるように、ガラスルーフは取り外し可能。軽量かつトランクに収納できるので、気軽にオープンエアドライブを愉しめる。

テスラは今、『モデル3』の生産の遅れが指摘されている。『テスラ ロードスター』はぜひ、予定通り2020年に発売して欲しい。もしかすると、EVの概念を覆し、新時代のEVの指針となる一台になるかもしれない。

関連記事:“テスラキラー”の本命は!? プレミアムブランドの最新EVを比較関連リンク:テスラの中古車情報をチェック
           

Text by Tsukasa Sasabayashi

Photo by (C) Tesla

Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第130回 | 大人のための最新自動車事情

エモーションEV──バタフライドアの電動スポーツカー

ポルシェ初の量産EVスポーツカーとして話題の『タイカン』は今年生産を開始し、驚異的なスペックを誇るテスラのスーパースポーツカー『ロードスター』も2020年の発売を予定している。EVスポーツカーは、いま旬を迎えつつあるカテゴリだ。そうしたなか、アメリカのフィスカーがCES 2019で初公開した『エモーションEV』が予約受付を開始した。バタフライ4ドアが特徴の高級フルEVスポーツは、いったいどんなクルマなのか。

BMW『Z8』やアストンマーチン『DB9』のデザイナーが手がけた高級スポーツEV

フィスカー『エモーションEV』は、ヘンリック・フィスカー氏の手によるエレガントなデザインの高級EVスポーツカーだ。フィスカー氏はデンマーク出身の著名なカーデザイナー。BMWに在籍していた当時に『Z8』、EVコンセプトモデルの『E1』などを手がけ、アストンマーチンでは『DB9』『DBS』『ヴァンテージ』のデザインを担当した。

その後、独立してメルセデス・ベンツやBMWをベースにしたコンプリートカーやハイブリッドエンジン搭載のオリジナルモデルを製作するが、じつは、テスラで『ロードスター』『モデルS』の2モデルの開発に参加したこともあるようだ。そのせいというわけではないだろうが、『エモーションEV』のデザインはどこかテスラに似た雰囲気もある。

ともあれ、スタイリングは「美しい」のひと言に尽きる。とりわけ特徴的なのは、開くとドア側面が蝶の羽のような形に見える「バタフライ4ドア」だ。同じ上部に向かって開くドアでも、縦方向に開くシザースドアと違い、バタフライドアは外側が斜め前方に、内側が下向きに開く。駐車スペースに苦労する日本ではなかなかお目にかかれないドアだ。

バッテリーはリチウムイオンではなく炭素素材コンデンサ。多くの先端技術を搭載

面白いのは、バッテリーに多くのEVに採用されるリチウムイオンではなく、炭素素材コンデンサのグラフェンスーパーキャパシタを採用したことだ(全個体充電池搭載モデルもラインナップ)。1回の充電あたりの最大走行距離は約640km。急速充電の「UltraCharger」に対応しており、9分間の充電で約205km分の容量までチャージ可能という。

EVパワートレインは最高出力700psを発生し、最高速度は260km/h。このスペックを見ると、テスラ『ロードスター』のようなEVスーパースポーツではなく、あくまでスポーティカーという位置づけなのだろう。全長5085×全幅2015×全高1465mmのボディは軽量のカーボンファイバーとアルミニウムで構成され、駆動方式は四輪駆動だ。

このほか、ADAS(先進運転支援システム)としてクアナジー製LIDARセンサーを5個搭載し、コネクテッドなどのEVスポーツカーらしいさまざまな先端技術を装備する。

『エモーションEV』の価格は1440万円。予約も開始され今年中にデリバリー予定

前述の通り、『エモーションEV』はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルと全個体充電池搭載モデルの2モデルを設定。価格はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルが1440万円(税別)、全個体充電池搭載モデルの価格は未定だ。すでに日本でもデロリアン・モーター・カンパニーを正規代理店に予約受付を開始しており、グラフェンスーパーキャパシタは今年中の納車を予定している。ただし、予約金として約24万円が必要だ。

最近では東京都心部などでテスラをよく見かけるようになり、もはやEVは現実的な乗り物になりつつある。たしかに価格は1000万円オーバーと高価。しかし、この美しいルックスなら、他人と違うクルマに乗りたいという欲求を満たすことができるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fisker, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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