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第34回 | ポルシェの最新車デザイン・性能情報をお届け

世界で最も古い911を見よ──蘇った幻のポルシェ901

すべてのスポーツカーのアイコンモデル、ポルシェ『911』。この名車が1963年の発表当時に『901』という名だったことは、ポルシェファンにとって常識だろう。プジョーが中央に「0」が入るモデル名を商標登録しており、異議を申し立てたため、『901』は販売時に『911』へと改められたのだ。このとき『901』として生産された『911』はわずか82台──。2017年12月、ポルシェはそのうちの一台を3年の年月をかけてレストアし、ポルシェミュージアムで公開した。シャシーナンバー「300.057」(901 No.57)の「幻の『901』」である。

わずか82台しか生産されず、ポルシェ自身も所有していなかった“最も古い『911』”

ポルシェ『901』が『356』の後継モデルとして1963年9月のフランクフルトモーターショーでデビューし、量産モデルとして生産開始されたのは、1964年9月のことだ。

しかし、それから数週間後の10月、商標権の問題でプジョーから訴えられ、販売時にはモデル名を『901』から『911』へと急遽変更することとなる。この期間に『901』として作られたのが、計82台存在するとされる最も古い『911』だ。

そのうちの数台は今もコレクターの手で保存されているが、じつはポルシェ自身は『901』を所有していなかった。ポルシェミュージアムに保存されていた『911』のなかで、これまで最も古かったのは1965年に生産されたモデル。ポルシェにとって、その手に幻の『901』を取り戻すことは、非常に重要なプロジェクトなのである。

今回復元された車両は、シャシーナンバー「300.057」(901 No.57)の『901』。1964年10月22日にラインオフした極めて貴重かつ歴史的な車両だ。

可能な限りオリジナルのポルシェ『901』に近づけるために3年をかけてレストア

このプロジェクトが始まったのは、アンティークやコレクターズアイテムを扱うドイツのテレビ番組がきっかけだったという。

2014年、同番組がある車庫で埃をかぶったボロボロの『911』を発見する。そこで、鑑定をポルシェミュージアムに依頼したところ、その車両が『901』であることが判明したのだ。

ポルシェは即座にこの車両の購入を決定し、レストアを開始した。それから3年の年月を費やして復元されたのが、今回公開された『901』である。

とはいえ、ボルボロに朽ち果てたクルマを元通りに戻すのは、我々が想像する以上に手間がかかる作業だ。発見された当時、この車両のボディ全体はひどく錆びつき、室内には雑に修復された痕跡も残されていたという。

加えて、ポルシェはパーツ交換を最小限にとどめ、可能なかぎりオリジナルを利用する原則を採用。ボディの修復にはほかの車両の純正パーツを使い、エンジン、トランスミッション、足回り、電装品も同じ方法でレストアを施した。

こうしたあえて手間のかかる方法を選択したために、この『901』を完全に復元するまで3年もの歳月を要したわけだ。なにしろ、最も傷んでいたボディだけで、その修復に12カ月もかかっているのである。

復元されたポルシェ『901』は、4月8日までポルシェミュージアムで特別展示中

復元された幻の『901』は現在、ドイツ南西部の都市、シュトゥットガルトにあるポルシェミュージアムで、「911 (901 No. 57) – A legend takes off」という特別展示として公開されている(2017年12月14日〜2018年4月8日)。

ポルシェミュージアムの開館時間は、午前9時から午後6時まで、休館日は月曜日。入場料は8ユーロ(約1080円、1ユーロ135円換算)とお手頃だ。ガイド付きの特別ツアーをお望みなら、事前予約すれば60ユーロで利用できる。

スポーツカーのアイコンとして、絶大な人気を誇るポルシェ『911』。その最も古い車両を見るためにシュトゥットガルトへと旅する──。これは『911』ファン、すべてのポルシェファンにとっての聖地巡礼となるのではないか。

Text by Kenzo Maya

Photo by (C) Porsche AG.

Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第53回 | ポルシェの最新車デザイン・性能情報をお届け

ポルシェ カイエンクーペ──SUVクーペに真打ちが参戦

世界の自動車市場を席巻するプレミアムSUVというジャンルは、2002年にポルシェ初のSUVとしてデビューした『カイエン』から始まった。スーパーカー並の性能を有するランボルギーニ『ウルス』やベントレー『ベンテイガ』も、『カイエン』の存在がなければ登場はもっと後だったかもしれない。その高級SUVの祖に、これまでクーペボディをもつ派生車種がラインナップされていなかったのが不思議なくらいだ。今年4月、ポルシェは上海で『カイエン クーペ』を初公開した。まさしく、満を持してのデビューである。

より低くスポーティなルックスになった『カイエン』。ライバルは『GLEクーペ』?

プレミアムSUV市場には、すでにいくつかのSUVクーペが存在する。メルセデス・ベンツなら『GLCクーペ』『GLEクーペ』、BMWなら『X4』『X6』。高級車ブランドがこぞってSUVに注力した結果、市場は多様化し、多くの選択肢をユーザーに用意することが求められるようになった。そうしたなかで、元祖プレミアムSUVである『カイエン』にクーペモデルが加わるのは必然。むしろもっと早く市場に投入してもよかったかもしれない。

『カイエン クーペ』はその名のとおり、ボディ後部にいくほど傾斜していく流麗なルーフラインをもったクーペルックのSUVだ。横から見ると、フロントウィンドウとAピラーが通常モデルよりも低く、寝かされていることがわかる。ルーフエンドには、クーペスタイルを強調するかのようにルーフスポイラーが装着された。ボディサイズは全長4931×全幅1983×全高1676mm。通常モデルと比べて全長が13mm長くなり、全高は20mm低くなった。さらに、新設計の後部ドアとフェンダーにより形状が変わったことで、全幅も18mmワイドになっている。全体として、より低くスポーティになった印象だ。

ルーフは2種類。固定式パノラマガラスルーフが標準で、カーボンルーフをオプションで選択できる。0.92m2のガラスルーフはかつてない開放感を乗員に与え、統合されたローラーブラインドが直射日光や寒さを防いでくれる。カーボンルーフは『911 GT3 RS』と同様に中央に窪みを持つ形状で、いかにもスポーティカーといった雰囲気を醸し出す。

『カイエンターボ クーペ』は最高出力550馬力。0~100km/h加速はなんと3.9秒

クーペ化にともなって室内空間にも変更が加えられた。標準モデルとの大きな違いは、後席がそれぞれ独立して2座になり、4つのスポーツシートを備えるようになったことだ(ベンチシートもオプションで選べる)。とりわけ前席は、インテグレーテッドヘッドレストと8ウェイ電動調節を備えたスポーツシートを採用し、優れた快適性とホールド性でドライバーをサポートする。また、全高は低くなったものの、リアシートの着座位置を標準モデルより30mm低くしたことで、後席のヘッドスペースも十分な広さを確保した。

ラゲッジルームの容量は通常時で625L。後席を畳めば最大1540Lまで拡大することが可能だ(『カイエンターボ クーペ』では通常時600L、最大で1510Lとなる)。

パワーユニットはグレード別に2種類のガソリンエンジンが用意された。『カイエン クーペ』は3.0L V型6気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力は340ps(250kW)、最大トルクは450N・m。0~100km/h加速は5.9秒(オプションの「軽量パッケージ」)、最高速度は243km/hだ。『カイエンターボ クーペ』は4.0L V型8気筒ツインターボエンジンを搭載し、最高出力は550ps(404kW)、最大トルクは770N・m。こちらの動力性能はさらに強烈で、0~100km/h加速は3.9秒に短縮し、最高速度は286km/hに達する。

すでに日本国内で予約受注も開始。『ウルス』のエンジンを積む最強グレードも登場?

『カイエン クーペ』『カイエンターボ クーペ』ともに、すでに日本国内での予約受注を開始しているが、国内発売日はまだ未定。一方、ヨーロッパでは、この2台の中間グレードとなる『カイエンS クーペ』が5月15日に発表され、さらにランボルギーニ『ウルス』と同型のエンジンを搭載するハイパフォーマンスモデルが設定されるとの情報もある。実現すれば、最高出力640ps以上の最強モデルがシリーズに加わることになるだろう。

まさに、プレミアムSUVブームを牽引してきた『カイエン』による怒涛のニューモデル攻勢といった趣だ。高級SUV市場が今後ますます活性化していくのは間違いない。1000万円以上の高級SUVを買える裕福な人々にとっては、選択肢が広がるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Porsche AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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