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第7回 | トヨタの最新車デザイン・性能情報をお届け

レクサスRC/RC F──あの頃のやんちゃ心を取り戻せ

じつは、トヨタはレース活動に積極的なメーカーだ。WEC(世界耐久選手権)にも参戦し、2017年はWRC(世界ラリー選手権)に復帰して大きな話題となった。なかでも、カーガイなら誰もが知る耐久レース、「ニュルブルクリンク24時間レース」への参戦はユニークである。トヨタ社員自らが製作したレース車両で、社員メカニック、エンジニアで構成するチームで参加しているのだ。2007年には、豊田章男社長自らがステアリングを握った。当時は『アルテッツァ』で参加し、その後はレクサスのスーパースポーツ『LFA』や『86』『C-HR』などにバトンを引き継いだ。そして今、ニュルブルクリンク24時間を駆け抜けているのが、レクサス『RC』である。

レクサスのスポーツクーペ『RC』『RC F』が一部改良を受けて2018年モデルに進化

『RC』『RC F』は、2014年に誕生したレクサスのクーペモデル。スポーティなデザインや優れた走行性能により、レクサスの「エモーショナルな走り」のイメージを牽引している立役者である。デビューから1年ごとに一部改良を繰り返し、2017年11月にも最新のマイナーチェンジを実施し、さらなる進化を遂げた。

ライナップは、『RC』が『RC350』『RC300h』『RC300』の3モデルで、それぞれベースグレードのほか、ラグジュアリーな佇まいの「version L(バージョンL)」とスポーティなモデルの「F SPORT(Fスポーツ)」といったグレードが準備されている。

ちなみに、『RC300』はレクサスのターボエンジン搭載ラインアップを充実させるため、『RC200t』から名称が変更された(メイン写真と下の写真は改良前の北米仕様『RC350』)。

高性能スポーツに与えられる「F」の名を冠した『RC F』は、ベースグレードのほか「Carbon Exterior package(カーボン エクステリア パッケージ)」が設定されている。

目立った変更点は、予防安全パッケージ「レクサス セーフティ システム+」の標準設定だ。

歩行者検知機能付衝突回避支援タイプ「プリクラッシュセーフティ」、車線逸脱による事故の予防に貢献する「レーンディパーチャーアラート(ステアリング制御機能付)」、夜間における歩行者の早期発見に寄与しロー・ハイビームを自動で切り替える「オートマチックハイビーム」。さらに、設定車速内で先行車の車速に合わせて速度を調節することで一定の車間距離を保ちながら追従走行できる「レーダークルーズコントロール(ブレーキ制御付)」により安全運転支援を強化した。

レクサス『RC350』はプレミアムセダンの『GS』に採用される新エンジンを搭載

次に心臓部の変更を見ていこう。『RC350』に搭載した3.5L V6エンジンは、レクサスのプレミアムセダン『GS』にも採用されている新型エンジン「2GR-FKS」が搭載された。

一方、『RC300h』は従来通り、2.5L 直4エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド仕様。『RC300』には、2.0L直4ターボが搭載されている。『RF C』は従来と同じく、5.0L V型8というモンスターエンジンを搭載している。

心臓部のパワーを走りに昇華するテクノロジーでは、これまで「エコ」「ノーマル」「スポーツS」「スポーツS+」から構成されていた「ドライブモードセレクト」に「カスタム」を新設定。パワートレーン、シャシー、空調の各制御の組み合わせを自由に選択可能とすることで、ドライバーの嗜好に応じた走りを実現している(下の写真は改良前の北米仕様『RC200t』)。

黒にトータルコーディネートされた特別仕様車『Fスポーツ プライム ブラック』

今回のマイナーチェンジでは、『RC』の特別仕様車も発表された。それが『F SPORT Prime Black(Fスポーツ プライム ブラック)』だ。ベースは『F SPORT』で、『RC350』『RC300h』『RC300』の全モデルで展開されている。

外板色をグラファイトブラックガラスフレーク、内装色を専用のブラック&オレンジステッチとし、ブラックを基調とした特別装備を採用。

さらに、漆黒メッキのスピンドルグリルフレーム、マットクリア塗装の19インチアルミホイール、ブラックステンレスのウインドウモール、本杢(希少で美しい木目模様)を職人がひとつずつ墨色に仕上げたステアリングホイールやオーナメントパネルなど、ブラックにトータルコーディネートすることで、『RC』のスポーティさを際立たせた。

価格は530万円から1060万円、ステアリングを握れば若き日のやんちゃ心が蘇る

消費税込みの価格は、『RC350』が608万6000〜690万2000円、『RC300h』が574万〜638万円、『RC300』が530万〜594万円。『RC F』は982万4000〜1059万4000円となっている。

特別仕様車は、『RC350 Fスポーツ プライム ブラック』が708万円、『RC300h Fスポーツ プライム ブラック』が654万円、『RC300 Fスポーツ プライム ブラック』が610万円だ。

『RC』は、ラグジュアリーさとスポーティさを兼ね備えている。落ち着いた大人の男に似合うクルマだが、ステアリングを握るとやんちゃな心が甦る。若々しい気持ちを持ち続けるカーガイならば、惹きつけられてしまう一台だ。

Text by Tsukasa Sasabayashi

Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第17回 | トヨタの最新車デザイン・性能情報をお届け

超屈強なフルサイズSUV──トヨタ セコイアTRDプロ

日本の自動車メーカーが作るクルマには「日本では買えない海外専用モデル」というものが存在する。とくにSUVやピックアップトラックには、北米専用モデルが多い。ホンダなら『パイロット』『リッジライン』、日産なら『タイタン』にインフィニティ『QX70』。トヨタのフルサイズSUV『セコイア』も、そのうちの一台だ。この巨大な北米専用SUVに、モータスポーツ直系のチューニングを施した「TRDプロ」が加わった。日本では見ることもその性能を堪能することもできない、アメリカならではフルサイズSUVである。

全長5mの巨大なボディに豪華な装備。トヨタ『セコイア』は北米市場で人気のSUV

アメリカでは、フルサイズSUVを持つことがひとつのステータスになっている。多用途的とは言いがたいスポーツカーと違い、日常からレジャーまで幅広く利用でき、グレードによっては高級セダンに匹敵する乗り心地を実現し、さらに頑丈な車体は回避安全の意味でも頼りがいがあるためだ。VIPやセレブレティも移動にフルサイズSUVを使うことが多い。

フルサイズに明確な基準があるわけではないが、SUVをボディサイズでセグメントしたとき、もっとも大きなクラスを指し、コンパクトやミドルに対して「ラージサイズ」とも呼ばれる。全長は5m以上、全幅は2m以上かそれに近い車両がフルサイズにあたる。

トヨタの北米市場専用モデル『セコイア(Sequoia)』も、『ランドクルーザー200』以上の巨体をもつフルサイズSUVだ。トヨタ・インディアナ工場で製造され、初代は2000年にデビュー。その後、2008年と2018年にフルモデルチェンジを受けた。SUVを名乗っているが、どちらかというと『セコイア』は4WDとしてのヘビーさよりもオンロードでの快適性や利便性を重視したクルマで、充実したインテリアによってプレミアム感を演出している。それがユーザーの嗜好を捉えているのは、好調なセールスを見れば明らかだ。

フルサイズSUVで唯一セカンドシートにスライド機構をもち、じつのところ、それも人気を支えている要素になっている。さらにサードシートのリクライニングやフルフラットも電動(オプション)なので、家族の評判が高くなるのは道理なのだ。このほか、初代から運転席の8ウェイのパワーチルトやスライド式ムーンルーフを標準装備。トライゾーン・オートエアコンも備え、Apple CarPlay、Android Auto、Amazon Alexaにも対応する。もちろんBluetoothハンズフリー電話機能とミュージックストリーミングも可能だ。

しかし、2月にシカゴでお披露目された『セコイアTRDプロ』は、標準仕様とはかなり趣が異なる。その名のとおり、これは「TRD」のバッジを冠するモデルだからだ。

FOX製のショックアブソーバーを搭載。『セコイアTRDプロ』はTRDの最新モデル

TRDは「トヨタ・レーシング・ディベロップメント(Toyota Racing Development)の頭文字だ。トヨタのワークスファクトリースチームとしてレーシングカーを開発し、そこで培った経験や技術を生かしてトヨタ車用にチューニングパーツの製作と販売を行っている。国内外の多くのレースに参戦しているが、近年では『ヴィッツ』(輸出名『ヤリス』)をベースにしたマシンでWRC(世界ラリー選手権)に参戦して注目を集めた。前身は1970年代にさかのぼり、モータースポーツマニアならずともTRDの知名度は非常に高い。

「TRDプロ」は、2014年から北米でトヨタのオフロードモデルにラインナップされているシリーズで、ピックアップトラックの『TUNDRA(タンドラ)』と『TACOMA(タコマ)』、そして日本では『ハイラックスサーフ』としておなじみのSUV『4 Runner(フォー・ランナー)』に設定されている。このTRDプロの最新作が『セコイアTRDプロ』だ。

5.7L V型8気筒ガソリンエンジンを搭載し、トランスミッションは6速AT。55.4kg-mという図太いトルクを発揮し、しかもそのトルクの90%をわずか2200rpmという回転数で得ることができる。加えて、マルチモードの4WDシステム(ほかのグレードではオプション)やロッカブル・トルセン・リミテッド・センターデフ(トルク分配式デフ)を搭載したことで、従来の『セコイア』になかった高い走破性をもつのが特徴のひとつだ。

しかし、もっとも重要なチューニングポイントはサスペンションだろう。オフロード用のショックユニットメーカーとして知られるFOX社のアブソーバーは、アルミ製の本体にインターナル・バイパスを装備し、外力の大きさによって異なる減衰機構が働く。日常の走りでは柔軟に動き、ストローク量に応じて減衰力が高まるのでボトムしにくいのだ。数多くのオフロードコンペで優れた実績を残したメカニズムで、むろん専用にチューニングされている。しかもTRDの厳しい要求に応えるため、前後で異なるユニットが採用された。

「オンとオフ」「シティとカントリー」「マニアとファミリー」をまとめて愉しむSUV

外観で目立つのは、P275/55R20タイヤを装着した20インチx8インチのBBSブラック鍛造アルミホイールと、フィニッシュがブラッククローム仕上げの単管エキゾーストだ。誇らしげに「TRD」のロゴが入れられたフロント下部のスキッドプレートは、もちろんトレイル走行中にフロントサスペンションとオイルパンを保護するのに役立つもの。また、フロントグリルも「TOYOTA」のロゴを配した専用デザインとなっている。

面白いのは、TRDのエンジニアが乗員に配慮し、キャビンの音質を改善するために周波数調整したサウンドキャンセルデバイスを採用したこと。これによって低く心地よいエキゾーストノートを提供するという。走りとは関係ないものの、ぜひ体験したい機能だ。

かつての四輪駆動車愛好者は、それ以外の自動車ユーザーと求めるデザインや装備、機能が明らかに違っていたが、技術の進歩とセンスの変遷はさまざまな境界を取り払おうとしていると感じる。「オンとオフ」「シティとカントリー」「マニアとファミリー」をまとめて愉しもう、というのが『セコイアTRDプロ』の隠れたコンセプトなのかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) TOYOTA MOTOR CORPORATION.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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