ランボルギーニの新型車『ウルス』が「SUV」ではなく「SSUV」を名乗る理由とは?
『ウルス』は、『アヴェンタドール』『ウラカン』に続くランボルギーニ第3のモデルレンジだ。一般的にはSUVに分類されるが、ランボルギーニでは「SSUV」という名称を使用している。SUVは「スポーツ ユーティリティー ヴィークル」の頭文字。ここに、「SUPER(スーパー)」の「S」を付け加えたのだ。
そもそも、ランボルギーニはこれまでスーパーカーだけを作ってきたわけではない。祖業はトラクターメーカー。1993年までは、『LM002』というオフロードーカーも生産していた。やや乱暴な物言いになるが、今までSUVを手掛けなかったのが不思議なくらいだ。
とはいえ、コンセプトカーの発表時には、「ランボルギーニがSUV?」と首を傾げたくなったのも事実だ。しかし、発表された『ウルス』を見ると、一発で惚れ込んでしまった。なんといっても、カッコいいのである。
受け継がれたランボルギーニのDNA、スーパーカーブランドが生み出すSUVのお手本
エクステリアは、カッティングエッジ的で特徴的な流線形のデザイン。カウンタックを思わせる台形のモチーフが多用されており、DNAを色濃く受け継いでいる。
「Y」字型や六角形、センターピーク入りのフロントボンネットやリアドアの交差するラインなどは、いかにもランボルギーニ的だ。ちなみに、三角形のエアダクトは、前述した『LM002』にも採用されている。エンジンの位置が見えるパワードームや斜めに入っているラインなども『LM002』から着想を得たという。
これらの特徴に加えて、SUVにしては低すぎるといってもいい全高と広い全幅がスポーティさを醸し出している。具体的なボディサイズは、全長5112×全幅2016×全高1638mm。スーパーカーブランドが生み出すSUVのデザインとしては、お手本のようなものだ。
最先端技術とイタリアのラグジュアリー的職人芸が融合した『ウルス』のインテリア
インテリア、特にダッシュボードは、ランボルギーニのアイコン的なモデルの「Y」字型を踏襲している。最先端技術とイタリアのラグジュアリー的職人芸の融合が素晴らしい。
ランボルギーニいわく「航空業界的デザイン」。しかし、個人的には映画で描かれる宇宙船の操縦席のような印象を受ける。これは、『アヴェンタドール』『ウラカン』も同じだ。
3台もあるスクリーンは、計器パネル、インフォテインメント、手書き認識機能がついた仮想キーボードを含むコンフォート機能に振り分けられ、ドライバビリティーの向上に役立っている。
職人芸の部分では、異なるカラーや天然レザー、アルカンターラ、木材、そしてアルミニウムやカーボンファイバーなど、各種のマテリアルの選択によって、エレガントにもスポーティにもカスタマイズすることができる。
定員は5名。ホイールベースも長いので室内は広い。最強の5シーターといったところだろうか。
『ウルス』の最高速度は305km/h、驚異の性能でわかるSUVに「S」をつけた理由
気になるのは、やはり動力性能だ。SUVにあえて「S」をつけた自信は、随所に見られる。
心臓部は4L V8ターボエンジン。最高出力は650hp/6000rpm、最大トルクは86.7kgm/2250〜4500rpm。最高速度は305km/h、0-100km/hの加速はわずか3.6秒と、SUVとは思えない動力性能を実現した。まさに、「SSUV」の面目躍如だろう。
闘牛のようなパワーを余すことなく走りに昇華させるのが、抜群の足回りだ。駆動方式は4WDだが、前後の駆動力配分は40:60で、おもにリアアクセルにトルクがかかっている。必要に応じて、最大で前輪に70%、後輪に87%が配分されるという。
サスペンションは「アクティブエアサスペンション」。これは「アクティブ・トルクベクトリング付きパーマネント4ホイール・ドライブシステム」と組み合わされ、走行モードに応じて総合制御される。
走行モードは最大で6つ。「Tamburoドライブモード・セレクター」により、「STANDARD(スタンダード)」「SPORTS(スポーツ)」「CORSA(サーキット)」「NEVE(雪道)」「TERRA(オフロード)」「SABBIA(砂地)」のいずれかを選べば、常に快適でありながらエモーショナルなドライブを愉しむことができる(「TERRA」と「SABBIA」はオプション設定)。
価格は2574万円、『ウルス』が「ランボルギーニ」というブランドを進化させる!
『ウルス』の生産は、イタリア、サンタアガタ・ボロニェーゼの本社内に建設された専用の新工場で2018年4月から始まる予定だ。
現在、『アヴェンタドール』と『ウラカン』の生産台数は年間約3500〜4000台といわれているが、『ウルス』の目標も同程度。つまり、ランボルギーニの生産規模は、単純に2倍となるわけだ。まさに、『ウルス』によって、ランボルギーニは次のフェーズに進化するといってもいい。
だからこそ、不安も感じた。「ランボルギーニ、お前もか!」とは、スポーツカーというブランドアイデンティティを持ちながら、流行りのSUVで規模を拡大する方針への疑問からきた言葉だ。
しかし、市販車として発表された『ウルス』を見ると、まぎれもなくランボルギーニのブランドアイデンティティを受け継いだ「スーパーカー」だった。
価格もスーパーカーらしく、日本でのメーカー希望小売価格は2574万円(税込み)。フラッグシップである『アヴェンタドール』の約4400万円には及ばないが、『ウラカン』と同価格帯だ。超富裕層ならば、『アヴェンタドール』のセカンドカーとして、街乗り用に購入してしまうのかもしれない。
Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Automobili Lamborghini S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)