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第21回 | ランボルギーニの最新車デザイン・性能情報をお届け

これが噂のスーパーSUV──ランボルギーニ ウルス

「ランボルギーニ、お前もか!」。2012年の北京モーターショーでコンセプトカーが発表されときには、思わずそう感じてしまった。フェラーリと双璧を成すスーパーカーブランドでさえも、世界の高級自動車メーカーが掲げるSUVシフト戦略の類に漏れないのか、と──。あれから6年、このコンセプトカーは市販モデルの『URUS(ウルス)』としてその姿を現した。しかし、それはただ流行に乗っただけのSUVではなく、スーパーカーブランドが造り上げる必然性を持った新世代のSUVとして登場したクルマだった。

ランボルギーニの新型車『ウルス』が「SUV」ではなく「SSUV」を名乗る理由とは?

『ウルス』は、『アヴェンタドール』『ウラカン』に続くランボルギーニ第3のモデルレンジだ。一般的にはSUVに分類されるが、ランボルギーニでは「SSUV」という名称を使用している。SUVは「スポーツ ユーティリティー ヴィークル」の頭文字。ここに、「SUPER(スーパー)」の「S」を付け加えたのだ。

そもそも、ランボルギーニはこれまでスーパーカーだけを作ってきたわけではない。祖業はトラクターメーカー。1993年までは、『LM002』というオフロードーカーも生産していた。やや乱暴な物言いになるが、今までSUVを手掛けなかったのが不思議なくらいだ。

とはいえ、コンセプトカーの発表時には、「ランボルギーニがSUV?」と首を傾げたくなったのも事実だ。しかし、発表された『ウルス』を見ると、一発で惚れ込んでしまった。なんといっても、カッコいいのである。

受け継がれたランボルギーニのDNA、スーパーカーブランドが生み出すSUVのお手本

エクステリアは、カッティングエッジ的で特徴的な流線形のデザイン。カウンタックを思わせる台形のモチーフが多用されており、DNAを色濃く受け継いでいる。

「Y」字型や六角形、センターピーク入りのフロントボンネットやリアドアの交差するラインなどは、いかにもランボルギーニ的だ。ちなみに、三角形のエアダクトは、前述した『LM002』にも採用されている。エンジンの位置が見えるパワードームや斜めに入っているラインなども『LM002』から着想を得たという。

これらの特徴に加えて、SUVにしては低すぎるといってもいい全高と広い全幅がスポーティさを醸し出している。具体的なボディサイズは、全長5112×全幅2016×全高1638mm。スーパーカーブランドが生み出すSUVのデザインとしては、お手本のようなものだ。

最先端技術とイタリアのラグジュアリー的職人芸が融合した『ウルス』のインテリア

インテリア、特にダッシュボードは、ランボルギーニのアイコン的なモデルの「Y」字型を踏襲している。最先端技術とイタリアのラグジュアリー的職人芸の融合が素晴らしい。

ランボルギーニいわく「航空業界的デザイン」。しかし、個人的には映画で描かれる宇宙船の操縦席のような印象を受ける。これは、『アヴェンタドール』『ウラカン』も同じだ。

3台もあるスクリーンは、計器パネル、インフォテインメント、手書き認識機能がついた仮想キーボードを含むコンフォート機能に振り分けられ、ドライバビリティーの向上に役立っている。

職人芸の部分では、異なるカラーや天然レザー、アルカンターラ、木材、そしてアルミニウムやカーボンファイバーなど、各種のマテリアルの選択によって、エレガントにもスポーティにもカスタマイズすることができる。

定員は5名。ホイールベースも長いので室内は広い。最強の5シーターといったところだろうか。

『ウルス』の最高速度は305km/h、驚異の性能でわかるSUVに「S」をつけた理由

気になるのは、やはり動力性能だ。SUVにあえて「S」をつけた自信は、随所に見られる。

心臓部は4L V8ターボエンジン。最高出力は650hp/6000rpm、最大トルクは86.7kgm/2250〜4500rpm。最高速度は305km/h、0-100km/hの加速はわずか3.6秒と、SUVとは思えない動力性能を実現した。まさに、「SSUV」の面目躍如だろう。

闘牛のようなパワーを余すことなく走りに昇華させるのが、抜群の足回りだ。駆動方式は4WDだが、前後の駆動力配分は40:60で、おもにリアアクセルにトルクがかかっている。必要に応じて、最大で前輪に70%、後輪に87%が配分されるという。

サスペンションは「アクティブエアサスペンション」。これは「アクティブ・トルクベクトリング付きパーマネント4ホイール・ドライブシステム」と組み合わされ、走行モードに応じて総合制御される。

走行モードは最大で6つ。「Tamburoドライブモード・セレクター」により、「STANDARD(スタンダード)」「SPORTS(スポーツ)」「CORSA(サーキット)」「NEVE(雪道)」「TERRA(オフロード)」「SABBIA(砂地)」のいずれかを選べば、常に快適でありながらエモーショナルなドライブを愉しむことができる(「TERRA」と「SABBIA」はオプション設定)。

価格は2574万円、『ウルス』が「ランボルギーニ」というブランドを進化させる!

『ウルス』の生産は、イタリア、サンタアガタ・ボロニェーゼの本社内に建設された専用の新工場で2018年4月から始まる予定だ。

現在、『アヴェンタドール』と『ウラカン』の生産台数は年間約3500〜4000台といわれているが、『ウルス』の目標も同程度。つまり、ランボルギーニの生産規模は、単純に2倍となるわけだ。まさに、『ウルス』によって、ランボルギーニは次のフェーズに進化するといってもいい。

だからこそ、不安も感じた。「ランボルギーニ、お前もか!」とは、スポーツカーというブランドアイデンティティを持ちながら、流行りのSUVで規模を拡大する方針への疑問からきた言葉だ。

しかし、市販車として発表された『ウルス』を見ると、まぎれもなくランボルギーニのブランドアイデンティティを受け継いだ「スーパーカー」だった。

価格もスーパーカーらしく、日本でのメーカー希望小売価格は2574万円(税込み)。フラッグシップである『アヴェンタドール』の約4400万円には及ばないが、『ウラカン』と同価格帯だ。超富裕層ならば、『アヴェンタドール』のセカンドカーとして、街乗り用に購入してしまうのかもしれない。

Text by Tsukasa Sasabayashi

Photo by (C) Automobili Lamborghini S.p.A.

Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第37回 | ランボルギーニの最新車デザイン・性能情報をお届け

最強オープン──アヴェンタドールSVJロードスター

『イオタ』の名は、ある世代の男たちにとって特別な響きをもつ。言わずとしれたランボルギーニの幻のスーパーカーである。この『イオタ』に由来する車名を与えられ、900台が昨年限定発売された『アヴェンタドールSVJ』は、“史上最強のアヴェンタドール”として大きな話題となり、瞬く間に完売となった。その興奮が収まらぬなか、さらなる魅力を加えた一台が登場した。オープントップモデルの『アヴェンタドールSVJロードスター』だ。至高のV12サウンドをオープンエアで愉しむ。こんな贅沢がほかにあるだろうか。

伝説の「J」再び。最速記録をもつ『アヴェンタドールSJV』のオープンバージョン

スーパーカー世代の男性は、「SVJ」という三文字に胸を踊らせるに違いない。1969年に先行開発の名目でたった一台だけが作られ、のちに事故で失われた伝説の実験車両「J」。その純正レプリカにつけられた名前だからだ。レプリカは『イオタ(Jota)』、あるいは『ミウラSVJ』と呼ばれている。「SVJ」は「スーパーヴェローチェ イオタ」の略だ。

ベースとなったのはランボルギーニ初のミッドシップスポーツカー『ミウラ』。生産台数については諸説あるが、6台、または8台ともいわれる。まさに幻のスーパーカー。だからこそ、『アヴェンタドール』シリーズの頂点に立つ存在として「SVJ」の名をもつモデルが登場したとき、ランボルギーニファンやスーパーカーファンが沸き立ったのである。

『アヴェンタドールSJV』が搭載するのは、最高出力770ps/8500rpm、最大トルク73.4kg-m/6750rpmを発生する6.5L V型12気筒エンジン。出力とトルクは、標準モデルよりもそれぞれ30hpと30Nm高められている。その圧倒的なパフォーマンスは、ニュルブルクリンク北コース“ノルドシュライフェ”での量産車最速タイム(当時)で証明済みだ。

従来の最速タイムは、昨年9月にポルシェ『911 GT2 RS』が記録した6分47秒3。『アヴェンタドールSJV』は、それを2秒以上も短縮する6分44秒97という驚異的なタイムを記録した。この最速クーペのオープンバージョンとなるのが、3月のジュネーブモーターショー2019でお披露目された『アヴェンタドールSJVロードスター』だ。

0-100km/h加速は驚異の2.9秒。ランボルギーニ史上“最速・最強”のロードスター

オープントップには『アヴェンタドールSロードスター』と同様の脱着式ルーフを採用した。ルーフは左右2分割式のカーボンファイバー製で、これを手動によって取り外す。クルマを降りなければならないが、オープン化の作業は非常に簡単で、ルーフも軽量。取り外したルーフはフロントのボンネット内にきれいに収納できるように設計されている。

電動で開閉するリヤウインドウを新たに採用したのもトピックだろう。ルーフを着けたクローズドの状態でも、ここを開ければV12サウンドをより愉しむことができるのだ。

脱着式ルーフにあわせてリヤのエンジンパネルの形状もフラットなものへと変更された。ただし、パネルにデザインされたランボルギーニファンにおなじみのY字は健在だ。そのほかのエクステリアはクーペを継承。大型エアインテーク、ワイドなサイドスカート、ヘキサゴン型スポイラー、リヤでは高い位置に設置された大型リアウィングが目を引く。

オープン化によって車重はクーペより50kgほど重くなっているが、それでも1575kg程度に収まっている。全長4943mm×全幅2098mm×全高1136mmものボディサイズをもち、12気筒エンジンを搭載するスーパーカーであることを考えると望外に軽量だ。それにより生み出されたパワーウエイトレシオはわずか2.05kg/hp。0-100km/h加速は驚異の2.9秒、0-200km/h加速は8.8秒でこなし、最高速度は350km/h超をマークする。

可変型エアロダイナミクスの搭載により、トップスピードを落とさず空力性能を強化

特筆すべきは「ALA2.0(アエロディナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ2.0)」と呼ばれるテクノロジーの装備だろう。『アヴェンタドールSJVロードスター』が搭載するのは、クーペと同じ最高出力770ps の V12エンジン。この強力なパワーユニットを軽量ボディに積めば、車体を制御できず、フロントから浮き上がって一回転しかねない。

そこで、トップスピードを落とすことなくダウンフォースを強化する、ランボルギーニの特許技術である「ALA」が必要となるのだ。「ALA」は、簡単にいうと能動的に空力の負荷を軽減してくれる可変型エアロダイナミクスのこと。速度ではなく、車両状態に連動するという特徴をもつ。フロントスプリッタとエンジンフードのアクティブフラップをモーター制御することにより、フロントとリヤの空気の流れをコントロールしてくれる。

この「ALA」と、搭載されたすべての電子装置をリアルタイムで管理し、加減速やローリング、ピッチング、ヨーイングといった車両の挙動を常に把握する「ランボルギーニ・ピアッタフォルマ・イネルツィアーレ」(LPI)が連動し、あらゆる走行条件下で最高の空力設定を整えてくれる。さらに、曲がる方向に応じて「ALA」の設定をスポイラーの左右いずれかに切り替え、どちらかに多く気流を発生させる「エアロ・ベクタリング」も備える。

駆動方式は四輪駆動で、フロントアクスルとリアアクスルとの間トルク配分は道路条件、グリップ、ドライビングモードに応じて、リアルタイムに変化する。また、後輪操舵システム「ランボルギーニ・リアホイール・ステアリング」や磁性流体プッシュロッド式のアクティブサスペンションを採用し、高次元のドライビングダイナミクスを実現した。

走行モードは、標準の「STRADA(ストラーダ)」、スポーティな走りの「SPORT(スポーツ)」、サーキット走行向けの「CORSA(コルサ)」、そしてこの3種類をベースに自分好みにカスタマイズすることができる「EGO(エゴ)」の4種類から選択可能だ。

『アヴェンタドールSVJロードスター』は800台限定生産。価格は6171万4586円

インテリアは航空機に着想を得たデザインとなっており、ドアやメータークラスター、コンソールなどにカーボンファイバーを採用。シートやダッシュボード上部、コンソールボックスにはレザーやアルカンターラを使用している。また、コクピットの随所にもY字デザインがあしらわれ、「SVJ ロードスター」のインテリアプレートも装備する。

限定生産台数はクーペよりも100台少ない800台。日本での価格は、クーペからおよそ600万円高となる6171万4586円(税込み)と発表されている。しかし、これはあくまでも参考価格だ。ランボルギーニは、顧客の要望に応じてボディカラーやインテリアに事実上無限の選択肢を用意しており、それらによって価格も大きく変動する。

ランボルギーニのフラッグシップモデル『アヴェンタドールSVJ』のずば抜けたパフォーマンスはそのままに、オープン化をはたした『アヴェンタドールSVJロードスター』。シリーズ最速・最強の称号をもつオープンモデルの上陸がいまから楽しみでならない。

Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Automobili Lamborghini S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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Lamborghini Press Conference – ジュネーブモーターショー2019
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