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第33回 | ポルシェの最新車デザイン・性能情報をお届け

「T」という名の純粋主義──新型ポルシェ911カレラT

純粋主義とは、一般的に「妥協を許さない潔癖な態度」を指す。特にポルシェ『911』のファンには、ピュアスポーツカーを求める純粋主義者が多い。そのため、ポルシェも自然吸気エンジン・MT(マニュアルトランスミッション)の『911R』などを発表してきた。しかし、それらは限定車で、手に入れられる人はごくわずか。そこで911シリーズに追加されたのが『911カレラT』だ。ポルシェは、これを「純粋主義を象徴するニューモデル」と表現している。

“ピュアスポーツカー”のコンセプトを現代に蘇らせた新型ポルシェ『911カレラT』

ポルシェ『911T』がデビューしたのは1968年のこと。車名の「T」は「Touring(ツーリング)」の頭文字で、軽量なボディ、クロスレシオのMT、機械式ディファレンシャルロックを備えるなど、純粋なスポーツカーファンに向けたモデルだった。

新たに設定された『911カレラT』は、この『911T』の根底にあった「ピュアスポーツカー」というコンセプトを受け継ぎ、現代に蘇らせたモデルだ。ベースは最新の『911カレラ』。多種多様なラインナップを揃える911シリーズのなかでも、定番かつ最もピュアな911である。

『911カレラT』の最大の特徴は軽量化によるスポーツ性の追求にある。リアウインドウとリアサイドウインドウを軽量ガラス製にし、ドアトリムにはドアオープナーストラップを採用。また、吸音材を大幅に削減し、リアシートはオプション化して2シーターに変更した。さらに、インフォテイメントシステムの「ポルシェコミュニケーションマネージメント(PCM)」を取り外すレスオプションも設定するなど、徹底的に軽量化がはかられている。

その結果、空車車重1425kgを実現。同等の装備を持つ『911カレラ』より20kgほど軽く仕上げられた。当然、シャシーもそれに見合うように再セッティングが施されており、コーナリング性能を決定づける足回りには、車高が20mmローダウン化されたPASMスポーツシャシーが標準装備された。

『911カレラT』の最高速は290km/h、軽量化によってパワーウエイトレシオが向上

搭載されるエンジンは、『911カレラ』と同じ3.0L 6気筒水平対向ツインターボ。最高出力370ps、最大トルク450Nmを発揮するスペックに変更はない。しかし、ボディが軽くなったことにより、そのパワーウエイトレシオは3.85kg/psに向上している。

0-100 km/h加速は、機械式リアディファレンシャルロックの採用もあり、4.2秒(7速PDKモデル)を実現。これは『911カレラ』を0.4秒上回る。0-200km/h加速は14.5秒(同)、最高速度は290kn/hを超える。

ちなみに、『911カレラ』では選択できないリヤアクスルステアリング(後輪操舵システム)もオプションで装備可能。これによって、低速でも高速でもコーナリング性能が大きく向上する(ただし日本仕様は7速PDKのみ)。

絶妙な味付けで“ピュアスポーツ”を印象づける『911カレラT』のエクステリア

エクステリアにも通常の『911カレラ』とはひと味違う味付けが施された。まず目につくのは、チタングレー塗装の20インチ カレラ Sホイール、ボディサイドでピュアスポーツであることを主張する「911 Carrera T」ロゴなどだろう。

しかし、よく見れば、フロントには空力的に最適化されたフロントスポイラーリップが装備され、アゲートグレーメタリックに塗装されたドアミラーもスポーツデザインタイプとなっている。

リヤ周りでは、グリルルーバーや「Porsche」「911 Carrera T」のエンブレム類がドアミラーと同じアゲートグレー仕上げとなり、ブラックペイントされたセンター出しの「スポーツエグゾーストシステム」(標準装備)も特徴的だ。

ボディカラーは、写真の「レーシングイエロー」、オプションの「キャララホワイト」「ジェットブラック」「GTシルバー」のメタリックカラーに加え、スペシャルカラーの「ラバオレンジ」「マイアミブルー」など全9色がラインナップ。

個人的には、純粋主義の『911カレラT』にはメタリックカラーよりも、どこかクラシカルな印象も与えてくれるソリッドカラーが似合うと感じる。

ポルシェ『911カレラT』の価格は1432万円、待ち望まれるMTモデルの日本導入

インテリアもスポーティかつ純粋主義が強調された仕上げだ。運転席にはシートセンターをSport-Texファブリックとしたブラックの4ウェイ電動スポーツシートが採用され、ステアリングは、レザーリムのGTスポーツステアリングホイール。走行モードスイッチも従来通りに標準装備される。

また、新たに追加された「Tインテリアパッケージ」を選択すれば、シートベルト、ヘッドレストの「911」ロゴの刺繍、ドアオープンループ、そしてシートなどに、「レーシングイエロー」「ガーズレッド」「GTシルバー」のいずれかのコントラストカラーを入れることができる。なお、オプションでフルバケットシートを選択することも可能となった。

『911カレラT』の価格は1432万円。ハンドル位置は左右から選べるが、左ハンドルは2018年1月8日までの期間限定受注となる。

トランスミッションは往年の『911T』と同様にクロスレシオのMTも設定されたが、前述のように、残念ながら日本仕様は7速PDKのみ。純粋主義者なら自らの手足でギアを選び、動力をつなぐ行為を愉しみたいところだろう。ぜひMTモデルの日本導入も期待したい。

Text by Muneyoshi Kitani

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ポルシェ カイエンクーペ──SUVクーペに真打ちが参戦

世界の自動車市場を席巻するプレミアムSUVというジャンルは、2002年にポルシェ初のSUVとしてデビューした『カイエン』から始まった。スーパーカー並の性能を有するランボルギーニ『ウルス』やベントレー『ベンテイガ』も、『カイエン』の存在がなければ登場はもっと後だったかもしれない。その高級SUVの祖に、これまでクーペボディをもつ派生車種がラインナップされていなかったのが不思議なくらいだ。今年4月、ポルシェは上海で『カイエン クーペ』を初公開した。まさしく、満を持してのデビューである。

より低くスポーティなルックスになった『カイエン』。ライバルは『GLEクーペ』?

プレミアムSUV市場には、すでにいくつかのSUVクーペが存在する。メルセデス・ベンツなら『GLCクーペ』『GLEクーペ』、BMWなら『X4』『X6』。高級車ブランドがこぞってSUVに注力した結果、市場は多様化し、多くの選択肢をユーザーに用意することが求められるようになった。そうしたなかで、元祖プレミアムSUVである『カイエン』にクーペモデルが加わるのは必然。むしろもっと早く市場に投入してもよかったかもしれない。

『カイエン クーペ』はその名のとおり、ボディ後部にいくほど傾斜していく流麗なルーフラインをもったクーペルックのSUVだ。横から見ると、フロントウィンドウとAピラーが通常モデルよりも低く、寝かされていることがわかる。ルーフエンドには、クーペスタイルを強調するかのようにルーフスポイラーが装着された。ボディサイズは全長4931×全幅1983×全高1676mm。通常モデルと比べて全長が13mm長くなり、全高は20mm低くなった。さらに、新設計の後部ドアとフェンダーにより形状が変わったことで、全幅も18mmワイドになっている。全体として、より低くスポーティになった印象だ。

ルーフは2種類。固定式パノラマガラスルーフが標準で、カーボンルーフをオプションで選択できる。0.92m2のガラスルーフはかつてない開放感を乗員に与え、統合されたローラーブラインドが直射日光や寒さを防いでくれる。カーボンルーフは『911 GT3 RS』と同様に中央に窪みを持つ形状で、いかにもスポーティカーといった雰囲気を醸し出す。

『カイエンターボ クーペ』は最高出力550馬力。0~100km/h加速はなんと3.9秒

クーペ化にともなって室内空間にも変更が加えられた。標準モデルとの大きな違いは、後席がそれぞれ独立して2座になり、4つのスポーツシートを備えるようになったことだ(ベンチシートもオプションで選べる)。とりわけ前席は、インテグレーテッドヘッドレストと8ウェイ電動調節を備えたスポーツシートを採用し、優れた快適性とホールド性でドライバーをサポートする。また、全高は低くなったものの、リアシートの着座位置を標準モデルより30mm低くしたことで、後席のヘッドスペースも十分な広さを確保した。

ラゲッジルームの容量は通常時で625L。後席を畳めば最大1540Lまで拡大することが可能だ(『カイエンターボ クーペ』では通常時600L、最大で1510Lとなる)。

パワーユニットはグレード別に2種類のガソリンエンジンが用意された。『カイエン クーペ』は3.0L V型6気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力は340ps(250kW)、最大トルクは450N・m。0~100km/h加速は5.9秒(オプションの「軽量パッケージ」)、最高速度は243km/hだ。『カイエンターボ クーペ』は4.0L V型8気筒ツインターボエンジンを搭載し、最高出力は550ps(404kW)、最大トルクは770N・m。こちらの動力性能はさらに強烈で、0~100km/h加速は3.9秒に短縮し、最高速度は286km/hに達する。

すでに日本国内で予約受注も開始。『ウルス』のエンジンを積む最強グレードも登場?

『カイエン クーペ』『カイエンターボ クーペ』ともに、すでに日本国内での予約受注を開始しているが、国内発売日はまだ未定。一方、ヨーロッパでは、この2台の中間グレードとなる『カイエンS クーペ』が5月15日に発表され、さらにランボルギーニ『ウルス』と同型のエンジンを搭載するハイパフォーマンスモデルが設定されるとの情報もある。実現すれば、最高出力640ps以上の最強モデルがシリーズに加わることになるだろう。

まさに、プレミアムSUVブームを牽引してきた『カイエン』による怒涛のニューモデル攻勢といった趣だ。高級SUV市場が今後ますます活性化していくのは間違いない。1000万円以上の高級SUVを買える裕福な人々にとっては、選択肢が広がるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Porsche AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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