廃プラスチックによる海洋汚染の象徴的な存在、使い捨てのレジ袋。来夏にも全国一律に有料化される見通しだ。「いりません」。その一言が、大量消費、大量廃棄の悪循環を断ち切る第一歩。
二〇〇二年、東京都杉並区は、レジ袋一枚につき五円を小売業者に課税する「すぎなみ環境目的税条例」を制定した。
制定はしたものの施行には猶予期間を設け、定められた削減目標が自主的に達成されなければ、課税に踏み切ることになっていた。
しかし、目標は達成されないままに区は方針を転換し、〇八年に廃止になった。「客が区外に流れてしまう」-。
自治体や地域ごとに、ばらつきが出ないよう、全国一律の有料化を国に求める声は当初から、コンビニを含む小売業界側が上げていた。それから十一年、廃プラスチックによる海の環境汚染は、今や温暖化と並ぶ地球環境問題だ。今月下旬に大阪で開催されるG20のサミットや来年の東京五輪で貢献をアピールしたい首相の意向もくんで、政府としても、重い腰を上げたということだろう。
有料化は課税とは違う。販売価格などは事業者に任される。
法制化の方針は、今月十五日から長野県軽井沢町で開かれるG20のエネルギー・環境閣僚会合で報告されるというが、廃プラ回収のルールなどを定めた容器包装リサイクル法の改正で対応するのか、新法をつくるのか。売り上げは何に使うのか。罰則はどうするか…。詳細はこれからだ。
実は廃プラ全体の中でレジ袋が占める割合は決して大きくない。有料化自体、最善の策とは言えず、“強制”には反発もつき物だ。家庭ごみ袋有料化後の傾向から見て、消費者の“慣れ”によるリバウンド(揺り戻し)も起きるだろう。だがレジ袋は身近なものだけに、その有料化は廃プラ全体の発生抑制へと進んでいくための弾みにはなるはずだ。
飲食、ホテル業界だけでなく、大手コンビニチェーンも紙製容器への切り替えなど、“脱プラスチック”に向かい始めた。微生物に分解される代替素材の実用化も急速に進んでいる。
こうした流れにさおをさし、消費者をそこへ無理なくいざなう仕組みをつくることができるのか-。日本政府の本気度は、大阪サミットが終わったあとに試される。
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