12安打を放ったが、12安打を浴びた。同数なのに大差がついた理由は「四球力」にある。福岡では3試合で2個しか取れなかった四球が、今季最多の8個。そのほとんどが得点に絡んだ。
「やはり四球なんですね。言ってた通りになったんで、自分でもビックリしましたよ。連打、連打は難しいけど、間に四球が入ってくると打線はつながる。それが得点と勝利にも結び付いてよかったです」
2日前に「つなぎの正体は四球にあり」と書いた。その試合後に話してくれた大島が、この日最初の四球をもぎ取った。1回。安打の藤井を一塁に置いて、辛島との11球に及んだ根比べを制した。フルカウントから5連続ファウル。藤井は走り、大島は当てる。ランエンドヒットは、空振りやストライクを見逃すと併殺になるリスクもあり、打者には重圧もかかる。ついボールを振ってしまうものだが、最後は低めのスライダーを見切った。広がった好機からビシエドの四球で満塁。阿部も選んで先制点は押し出しで入った=写真(右)。
「決して狙ったわけじゃないんですが、粘って取れた感じですね。ストライクはしっかり振る。その上で低めはバットを止める。それができて、点にもなったのがよかったかな」
4回にも歩いた大島を含め、8四球のうち4人が生還した。打線をつなぐのは四球。相手の打線をつなげてしまうのも四球。この日の投手陣は2四球にとどめた。それが12安打なのに3失点で済んだ要因だ。攻撃のリズムをつくり、守備のリズムが狂う。この日の圧勝は、中日が目指すべき攻撃の理想形でもあった。
「いつもできるわけではないんでしょうが、みんなでやっていければ」とは大島。安打がそば粉だとしたら、四球はさしずめ小麦粉といったところか。十割そばも捨てがたいけど、二八そばは風味が際立つ。