---------------------------
----N----060---------------
----a-----------------------------
----t-----------------------
----u-Z-o-r-a--------------
-----------------------------------
-----------------------------------
---------------------------------------------------------------
昭和31年の暮れ 仕上課にいる なつは特別にアニメーターになるための試験を受けさせてもらえることになりました。
(なつ)あ~… 下手くそ…。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
(井戸原)は~い 時間です。 そこまで。
(仲)みんな ご苦労さん。今日は そのまま帰っていいですよ。
(茜)あなたって すごいのねよくこんなに描けたわ。
あ… 全然ダメでした。
えっ?
私は 三村 茜です。 どうぞ よろしく。
奥原なつです。
じゃ 次は 問題の奥原なつさん。
(山川)おお すごいね これは。
(仲)描いた枚数は 断トツの1番です。
15枚以上どころか 30枚も描いてます。
しかし ラフの状態のものがほとんどでクリーンナップしたものに限れば13枚です。
(井戸原)このゆがんだ線をクリーンナップと呼べるならな。
(仲)そういう基礎を彼女は学んでないんですよ。
全部 我々が描いたものを見ての独学なんです。
いや それじゃ ほとんど勘じゃないかよ。
そうなんです。 そこなんですよ 露木さん。
その勘が彼女には備わってるってことなんですよ。
♪~
なつは その晩 悔しそうにいつまでも 絵の清書を練習していました。
そして 翌日。
結論から言うと 不合格でした。
分かりました。
悔しそうじゃないんだね?
悔しいです。 とっても…。
けど それは 自分のせいですから。
うん… どうして 動画をこんなに描いたんだい?
15枚でいいところを30枚も描いたのはどうして?
見たら イメージが湧いてきてどうしても描きたくなったんです。
でも ダメです。
自分が描きたいものに自分の手が追いついていかないんです。
それが もどかしくて…。
自分は下手なんだってよく分かりました。
それが悔しくて…。
今の自分にはおいしい牛乳は まだ搾れないんだってよく分かりました。
えっ… うん? えっ 何で牛乳なの?
あ… 乳牛を育てることならちょっとは自信があるので。
乳牛…?すいません 何でもないです。
動画の勉強は続ける?
もちろんです!
それは 続けさせて下さい。
お願いします。
分かった。
それじゃ もう行っていいよ。
はい。 今回は ありがとうございました。
お疲れさん。
♪~
(井戸原)参ったね…。
イメージに 手が追いつかないか…。
あれで もう我々と同じことで悩んでるんだからね。
あの子も 一生悩むんでしょうね…。うん…。
(砂良)あら いらっしゃい。(天陽)こんにちは。
よう 天陽! お前の絵展覧会で 賞取ったんだってな。
あ… まあ。
初めて そういうところに出品したんで素人の絵が珍しかったんじゃないですかね。
なっちゃんも喜んだでしょう。なっちゃんには知らせたの?
あっ うちの牛乳 飲んで。
持ってきてくれたの?(天陽)うん。ありがとう。
(戸をたたく音)あっ はい ちょっと待って。
あ… ちょっと ごめんね。
(菊介)こんちは!(弥市郎)おお どうした?
どうも。 いや~ しばれるね。(砂良)菊介さん?
(菊介)おう…。
そうだ。 柴田牧場の菊介さんだ。
今日 うちのバター届けに来たんだわ。ほい これ。
うめえぞ。何でバターを?
うちの照男君が作ったんだわ。
あんたに食べさせたくて。
あれ 天陽君でねえの。何で おめえが ここにいんだ?
何でって…。おめえ まさか砂良さんのことが好きなんでねえべな?
ちょっと 何言ってんの? 菊介さん。
(菊介)砂良さんは うちの照男君が先に好きになったんだからな。
おめえも それ分かってるべ?
分かりません。分かんねえか?
はあ~分かんねえから 牛乳持ってきたのか?
牛乳は 真っ白でもおめえの腹は 真っ黒だ。
なっちゃんがいなくなったら砂良ちゃんか?
大したもんだな。なっちゃんは関係ないしょ!
それに比べて 照男の腹は真っ白だ!
真っ白い心で砂良さんのことを いつも思ってる。
その気持ちには 一点の曇りもない。
十勝晴れだわ。照男は いつも 心に砂良ちゃんを強く思ってんのさ!
砂良さんには 何も伝わってねえべ!
そうなんかい? 砂良ちゃん。いえ…。
照男の気持ちは分かってるべ?砂良ちゃん。
そんなこと言われても…。
砂良さんは そんなバカな男を相手にするもんか!
(菊介)バカは バカなりに考えんだ!
(戸をたたく音)ちょ… ちょっと待って! 待ってって…。
何なの? 今日は。
(悲鳴)(弥市郎)熊だ~!
(照男)ちょっと待った! 俺です! 俺!
照男さん!
すいません!
すいません。すいません。
どういうつもりだ? お前ら。
砂良ちゃん…。
好きです。
結婚して下さい!
お願いします!お願いします!
牛飼いの家に… 酪農家の嫁に来て下さい。
食べることだけは 一生困らせない。
おいしい人生を約束します!
どうか 俺と一緒に生きて下さい!
どうする? 撃つか?
撃たなくていい。
撃つ時は 自分で撃つから。
嫁入り道具には それ頂戴。
(弥市郎)分かった。
本当に ここまでバカだと思わなかったわ。
ハハ…。
ハハハハ… やったな!
(天陽)<砂良さんは バカな芝居につきあってくれたのかな?照男さんの思いをしっかりと受け取ってくれました>
ラブレター熊ですよ。あ?
(菊介)いや よく訳 分かんねえこと言うんだ こいつ。
(笑い声)
<天陽君 元気ですか?照男兄ちゃんと砂良さんのこと心から うれしいです。バカなことを考えた菊介さんと天陽君にも心から ありがとうと言いたいです>
<お正月は 新宿の花園神社に初詣をしました。天陽君のことも祈っておきました>
♪~
・(亜矢美)なっちゃん おせち食べよう。
・(咲太郎)なつ 早く来い。は~い。
<今は 毎日 仕上の仕事彩色に打ち込んでいます。それも まだまだ未熟です>
(富子)奥原さん これ 色パカがあった。
色バカ?
ここ一枚だけ 腕の色が違うと一瞬 色がパカッと変わっちゃうでしょ。
ああ!(桃代)それを 色パカっていうのよ。
バカじゃなくて パカか。
すぐ塗り直して!あ… はい!
<当分 北海道には帰れません。帰りません。じいちゃんや天陽君 家族や私を応援して見送ってくれたみんなに送り出してよかったと 胸を張って今の自分を感じてもらえるまでは>
<私は ここでおいしい牛乳を搾れるように自分を育てていきたいと思っています>
<十勝に帰りたい… みんなに会いたい…だけど 今は 振り返りません。私は ここで生きていきます>
♪~
なつよ 力をつけよ。
来週に続けよ。