電圧や電流のスイッチング

 半導体や光関係の実験をしていると、ある素子にかける電圧や流す電流をデジタル的にON/OFFスイッチングしたい時がある。このようなデジタル的な変化についてはPower-MOS-FET(以後、Power-MOSと略記)の利用が最適である。Power-MOSはトランジスターと比べて以下のメリットがある。まず、ON抵抗が非常に小さいため、発熱が少なく、大きな放熱器の必要がないことである。例えば、数Aのスイッチングなら、放熱器無しでもOK。次に、スイッチングスピードが非常に速い。例えば、nsオーダー。したがって、完全なON/OFF制御(遷移中に中間電圧レベルのない)が容易。ただし、あまりに速いと、リンギングが発生することがあるので注意。

 以下、幾つか試作した例について記す。

電圧スイッチング

 図1は素子にON/OFF電圧をある周波数でかける回路。
 回路の応答速度はPower-MOSをopen-collector回路型で使っているので、出力電圧のOFFはns レンジと高速であるが、ONは素子やPower-MOSを抵抗 R で充電する時間になり、だいたい100ns〜us オーダーである。また、Power-MOSはゲートの持つ静電容量が大きく(数百〜1万 pF)、この充放電時間も影響してくる。Power-MOSの前に入っているコンプリメンタリ・トランジスター回路は、この大きなCをなるべく高速に充放電するためのバッファーである。実際のスイッチング速度は、100nsオーダーであった。
 回路図で、Power-MOSのゲート入力の前に直列に抵抗が入っているのに気づかれた方はプロである。この抵抗はパラスティック発振の防止を行う。Power-MOSのように入力の静電容量が大きな素子ではパラスティック発振と呼ばれる発振が起きやすい。抵抗値としては通常、数ohm〜数十 ohmを使う。(Ref. 2-3)
 今回の回路では、+Vは10〜12Vを使用し、Power-MOSはN-チャンネル・エンハンスメント型の2SK2417。
+VはFETがもつ耐圧までかけられる。

V1, V2 間の電圧スイッチング

 上記の電圧スイッチ回路は下のレベルがGNDであるが、下のレベルをV1、上のレベルをV2とする用途がたまにあり、そのようなスイッチングを行う回路を図2に示す。V1 In の入力に何も入れなければ、GNDとの間でスイッチする。回路の電源は2電源いる。TTL (74LS06)のVCCに+5V、FETドライブ回路(2つのTrと、LS06につながった470 ohm)に+12V。その他、外部に2つの定電圧電源+V1, +V2。

電流スイッチング

 図3は高輝度LED(1〜5W)の発光のON/OFFを制御する際に用いた回路である。(なお、図1の回路でもそれは可能。)この回路で5Wなどの大電流LEDがON/OFFできる。LEDに流す電流は電源電圧と抵抗 R3 によって決める。(Power-MOSのON抵抗は0.1 ohm以下(例:10 milli-ohm)なので無視できる。)+Vは12Vを使用し、Power-MOSは2SK2417。入力に50 ohmのターミネーターが入っているのは50 ohm ドライブのパルスジェネレーターでドライブしているので。

アナログ的駆動

 電圧をアナログ的に変えるには前章のオペアンプ等のアナログアンプを使う。電流値がいる場合は、パワーオペアンプ構成の回路を使う。(前節、参照)素子の静電容量が大きい場合は、それを短時間に充放電するには大きな電流が必要であり、パワーオペアンプが必要なことがある。アナログ電圧入力で出力電圧が変わるが、デジタルコントロールで変えたいときにはD/Aコンバーターを介すればよい。
 電流をアナログ的に変えるには次節の定電流回路を使用する。

回路のTop Pageへ