穏やかなるかなカルネ村   作:ドロップ&キック
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原作ではありえないバトルかも(^^




第73話:”一応、手加減はしてるつもりだよぉ♪”

 

 

 

「お帰りなさい! お館様♪」

 

満面の笑顔で、手と一緒に訓練用に刃を落とした柳葉刀のような幅広い湾曲した刀身を持つ()()()()を小枝のようにビュンビュン振るのは、”カルネ村のちっこい呂奉先(ベルセルク)”ことネム・エモットだ。

 

「ちょっとネム! 捕虜虐待したら駄目じゃないっ!」

 

「ほりょ……ぎゃくたい……? えっ? アタシが虐待される側ってこと……?」

 

何やらエンリの言葉に、主に精神的にダメージを受ける古の時代(昭和)の文化遺産、体操服+ブルマ(濃紺)姿のクレマンティーヌであった。

ただし、未だにモモンガ(ダークウォリアー)の腕に引っかかったままであるが。

ちなみにこのブルマこそ、頑丈で動きやすい事がとりえのカルネ村修道会公認トレーニング・ウェア(未婚女性用)の正体であるが、元デザインが某バードマンがゲーム内嫁用に収集したコレクションの一つであることは言うまでもない。

またカラーバリーションもあり、例えばエモット姉妹は何故かトレーニングウェアは揃って赤を好むようだ。

 

 

 

「弱いものイジメしちゃ、メッ!でしょ?」

 

「だ、誰が弱い者だっつーのっ!!」

 

”みょん”という感じで仔猫のように吊り下げられていた腕から反動つけて抜け出る、憤慨気味のクレマンティーヌ。

ネムに怒ってるようで実はエンリ、的確にクレマンティーヌの精神にダメージ与えにいってるんじゃないだろうか?

 

「アタシは断じて弱くなんてないっ!!」

 

なんかさっき「わきゃっ!?」とか愉快な叫び声をあげながら吹っ飛んできたような気もするが……その元凶たる幼女(ネム)は、

 

「そーだそーだ! ネム、弱いものイジメなんてしてないもん! ただクレマンおねーちゃんが超ひまそーにしてたから、ちょっと稽古つけて(あそんで)もらっただけだもん♪ ねー?」

 

「そ、そうだぞ! アタシの武技が見たいっていうからちょっと胸を貸してやっただけだっ!!」

 

……六色聖典が一つ漆黒聖典の”疾風走破”といえば、名うての凄腕戦士のはずなのだが、どうもそうは見えない。

何故だかその姿は、ムキになって反論している子供のような?

というかぶっちゃけ、精神年齢はネムとどっこいに見えてくるから不思議だ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

モモンガは眉間を揉みながら、

 

「大体状況は把握した」

 

(まあ、ネムも本気で潰しに行ってるわけじゃなさそうだしな……)

 

衣装こそ、いつものバフがかかりまくってるお気に入りの黒のレザービスチェ・アーマー”幼き守護者(ロリボンテ)”だが、戦場なら華奢で幼い肢体を左右から守る”自立防御型浮遊十文字機動盾(アンロック・クロスガーディアン)”を装備していない。

 

何より、持っているのは職業スキル”ハルバーディア”で強力な補正(バフ)が入るハルバードやバルディッシュのような重量級のポールウエポンではなく、右手に先ほどの片刃長剣/左手に直径30cmちょっと程度の円小盾(バックラー)という組み合わせだった。

 

武器から言うなら、原作でフォーサイトと対峙したときのモモンガの装備に近い。

ネムは、職業スキルで”ウエポン・マスター”が発現してるため武器と名がつくならその全てに適性が付き、初見でも扱うことができるが、かといって全ての武器が得意となるというわけではない。

盾と剣という前衛の基本装備と言っていい組み合わせは、ネムには『好きでも嫌いでもなく、得意でも不得意でもない』ちょうど中庸の装備だったはずだ。

ネムはその持ち前の怪力に反して小柄なので、重く長間合いの武器を好む。

前出の通り、最も好むのは硬い柄を持つ斧鑓/鉾槍系のポールウエポン(全金属製でしならない柄の物が特に好み)で、次は弓や投槍等の射撃/投擲武器(飛び道具)、その次がウォーハンマーのような長柄の鈍器や薙刀やグレイブのような長柄の刃物という長間合いの重量級武器へと続く。

盾や剣を使うにせよ、ネムの体格離れした膂力を考えれば、もっと大柄な武器の方が彼女の利点を生かせるだろう。

どこぞの”銃使いの少女達(GUNSLINGER GIRL)”ではないが、『ちっこい体に大きな武器』がネムのトレードマークで、ナイフをグレートソードに持ち替えても、バックラーをタワーシールドに持ち替えても、同じようにぶん回せるだけのパワーがネムにはあった。

 

更によく観察すれば、なんとなく見覚えがある……ラナーが日常的に愛用している犬の首輪を思わせるチョーカー、データクリスタルで外装を変えた「ステータスを落とす代わりに獲得経験値を上げる首輪」を装着してるではないか。

何気にハンデをつけていたネムだが、普通に考えるとちょっとおかしい。

第22話によればネムの総合Lvは29、対するクレマンティーヌは45話によるとLv33。

確かにトレーニング・ウェアと訓練用に先端が丸められたスティレットというクレマンティーヌには装備ハンデがあるが、それでもカウンター気味に決まったノックバック効果のある武技《盾強打》によるシールドバッシュで、一方的に弾き飛ばされるほどの差はつかないだろう。

 

まあ、実は答えは簡単でクレマンティーヌは一度ブレインに切り殺され、エンリの《リザレクション/蘇生》で復活したためにレベルダウンが起きていたのだ。

無論、「鉄級以下は蘇生しても灰になる」とされるどこぞの青薔薇リーダーやローブル聖王国の腹黒妹が使う《レイズデッド/死者復活》よりはダウン率が低いが、それでも総合Lvはネムと同等になってしまっていた。

 

 

 

セリフどおりに大体の事情を察したモモンガはネムの頭を撫でて、

 

「ネム、私にも模擬戦を見せてくれるかい?」

 

「もっちろんだよぉ♪」

 

としっかり抱きついて、いつものように自慢の平たい胸……抜群の扁平率で先端のポッチしか凸部がない胸部をアピールするネムっちである。

少なくともネムは、『モモンガ様は背丈もおっぱいも小さければ小さいほどいい』と認識している。勿論、実際の年齢はどうでもいいが、見かけが幼く可愛いことは絶対条件だ。

ネムの見立てによれば、モモンガは美人より可愛いほうを好む傾向がある。

 

ところでカルネ村は人間だけで785名も住んでる村なので、実はネムより幼い女の子もいるにはいるが、どの幼女も”村の幼子A”程度の総合Lvしかなく、とても”死の神様への貢物”には選ばれそうも無いのでネムとしては一安心だ。

考えてもみて欲しいのだが、一般村人からしてみれば総合Lvが軽々と90を上回ってるイビルアイ(キーノ)が正妻で、側近というより側室がエンリ&ネムのエモット姉妹なのだ。つまりエモット姉妹が奉納当落線と村人に()()されていた。

どんなに信仰心が篤くとも……否。信仰心が篤ければ篤いほど、只人たる娘を奉納することなど畏れ多くてできないのだろう。

 

ただ、誤解のないように言っておくが……

別にモモンガはきょぬーが嫌いではない。ただ『ちっぱいがもっと好き』なだけだ。

まだそういうキャラは登場してないし登場予定は無いが、某バードマンによれば、

 

『モモンガさん! ロリ巨乳は邪道に非ずです! あれもまた一つの正道なり!』

 

彼の(カルマ)値はどこまでも深い……

 

蛇足ながら……先ほどちらりと話題に出たが、名高い聖王国の天才(カストディオ)姉妹と比べても、実はエモット姉妹は姉妹合わせた総合Lvなら現時点でさえ勝るとも劣らない。

無論、まだ十代のエンリやまだ齢一桁のネムは、まだまだこの先も成長するだろう。また、ネムが単独でなくハムスケに跨った人馬一体モードで互いがガチ戦フル装備なら、今でも頭が残念な姉の方に確実に勝てそうだ。

そう言えば、この二つの姉妹は戦士と神官が互いに姉と妹でひっくり返ってるのが面白い。そしてエモット姉妹は軍事的才能に限ってみても、姉妹で分かれている。一騎当千の妹に、一将万率なのが姉の方だ。

 

村人の中から新たな奉納幼女(みつぎもの)が選出される可能性はかなり低そうだ。

 

 

 

「クレマンティーヌもまだいけるか?」

 

むしろ気遣うような口調に逆に刺激されたのか、

 

「当ったり前だろ! このクレマンティーヌ様がガキんちょに跳ね飛ばされたまんま引き下がれっかよっ!!」

 

どうやら戦意が衰えた様子はない。

エンリが溜息を突きながらこっそり《ライト・ヒーリング/軽傷治癒》をかけていたが、クレマンティーヌは気づかないふりをしたし、モモンガも見なかったことにした。

 

「では両者……いざ尋常に、」

 

モモンガが右手を上げると同時に二人は再び対峙し、互いの武器を構え……

 

「はじめっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうござ今知った。

書きたかったPvP(?)イベント”ネム vs クレマンティーヌ”の開幕です(^^
ネムが珍しく盾と剣を使っての挑戦という。

そしてちょうちょい出てくる在りし日のギルメン……特に某鳥頭(笑
自分の半分以下の歳の嫁を孕ませたバードマンの(カルマ)はどこまでも深い。

あと2~3話はネムとクレマンティーヌがバトルヒロイン・ムーブしそうです。



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