穏やかなるかなカルネ村 作:ドロップ&キック
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そして、いよいよラスボス(笑)の登場です。
ダークウォリアーとイビルアイが地下墓所を訪れたときに見たのは奇妙な光景だった。
ローブを着た、いかにも全身で「私は怪しい邪教団体のメンバーです!」とシャウトしてるような面々が、一人を除いて横たわっていたいたのだ。
すえたような匂いが鼻をつくが、《ライフ・エッセンス/生命の精髄》で確認する限り、その一人を除けば全員事切れていた。
「き、貴様らどうやってここまで来たっ!?」
うろたえながら吼えるローブ姿の痩せた男に、
「いや、普通に強襲して中央突破したんだが?」
とやや天然気味に返すダークウォリアー。
「ば、バカな……あれだけの数のアンデッドの中を」
「あれだけ轟音立てて派手に暴れたのに気づいてなかったのか? 儀式とやらに集中しすぎて周囲の状況が見えてないなど迂闊もいいとこだぞ?」
「ぐっ……」
他の《センス・エネミー/敵探知》などのサーチ系魔法で周辺を警戒してみるが、生命反応が出てるのはやはり目の前にいる
死体はゾンビにくらいはなるかもしれないが、それとて問題にもならない。
その状況を見て、
「ああ。
「!?」
驚愕に染まる痩せぎすの男に、
「たしかズーラーノーンにも、結構な数の命と引き換えに使用魔法の位階を引き上げる秘術というのがあったな……」
ふとその昔、ズーラーノーン本人から勧誘を受けた際にそんなことを自慢げに語っていたことを思い出す。
おそらくエネルギー源になったのは、ここに倒れてる骸だけじゃないだろう。位階ブーストを発動させたのならこの程度の人数じゃ足りるわけも無く、おそらくエ・ランテルやその近郊でここ数年で行方不明になった人間のかなりのパーセンテージが生贄に使われたのかもしれない。
いや、むしろ術式発動への最後の一押しに使ったのだろうか?
もしかしたら、最初からブースターとして集められたのかもしれないが。
「となると触媒となってるのは、その妙に負の力を溜め込んでる宝珠ってところか?」
「……だったら、」
禿頭の痩せた男……ズーラーノーン幹部、十二高弟の一人であるカジット・バダンテールは簡単に種明かしをされる様に冷や汗を流しながらも、
「だったらどうだと言うのだっ!! ”死の宝珠”の力を見るがよいっ!!」
掲げられた”死の宝珠”が紫色に怪しく輝くと、
「いでよ”スケリトル・ドラゴン!!”」
☆☆☆
ドズン!と重い地響きを立てて姿を現す”骨の竜”。
「フハハハハハハッ!! 魔法に
内心の黒々とした不安を覆い隠すように、狂気を感じる哄笑をあげるカジットであったが、
「”魔法に絶対耐性”ねぇ……あー、はいはい。じゃあスケリトル・ドラゴンの相手は俺がするから。イビルアイ、」
「ハゲは任せろ」
小柄なマジックキャスターはサムズアップで応える。
順当の振り分けだが、
「たった一人で……」
だが、
「武技《加速》、武技《剛撃》、武技《斬撃》、武技《斬刃》、武技《瞬閃》、武技《強殴》……」
次々と早口に武技を重ねがけしてゆくダークウォリアー。
読み解けば身体速度の底上げに筋力強化によるダメージ上昇、斬撃の威力上乗せに切れ味アップに剣速向上に打撃のダメージ追加というところだろうか?
基礎的な武技が多いとはいえ、普通は……いや、達人の領域にいるガゼフ・ストロノーフ級でも同時にかけられる武技は六つが限度とされている。
実際、モモンガが今かけたのも六つだ。
だが、恐ろしいことにこの男には武技に関しても、上限が事実上存在しない。
その答えはシンプルだ。
この100年の間に人として過ごす時間(あるいは前衛役として過ごす時間)も長かったモモンガに発現した新たな特殊スキル、”《
このスキルは簡単に言えば、『保有する魔力を肉体的なエネルギーに変換できる』能力だった。
この場合で言うなら、モモンガが内包する膨大な魔力を、武技の発動に必要な”精神力(あるいは集中力)”に1対1のレートで変換できるのだ。
また、同時発動数の上限や効果時間は、どうやら総合レベルも関係していそうだが……そのあたりは定かではない。
様々な魔法ボーナスが得られたり種族特性の関係で、絶対的攻撃力や最大火力は流石にオーバーロード・モードの方に軍配が上がるが、ダークウォリアーやアインズ・ウール・ゴウンなどのヒューマン・モード時は武技を中心に戦術を組み立てればとても燃費の良い戦いができ、受肉の時は必ず装着してる指輪の一つである”疲労無効化”との相乗効果で、非常に持久戦に向いたセッティングとなるのだ。
他にもメリットはある。お骨状態の時は一世紀を経た今でもユグドラシル・ルールに縛られているのか武技は使えないし、おそらく同じ理由で装備制限も未だ有効なので、種族特性がなくなるデメリット込みでも燃費良く装備の自由度が高い人間の姿は、一度ちゃんと鍛え上げてしまえばかなり汎用性が高い。
世界の意思という物が果たしてあるのか不明だが、モモンガは”
それはともかく……
(パチ竜を
と相手にとってはかなり理不尽な怒りを腹に持っていた。
原作でさえも狂おしいほどの友情をかつてのギルメンに向けていたモモンガだ。この世界線における100年の月日が、あるいは人として過ごした時間が彼のカルマ値にすら作用し温厚にさせたかもしれないが、激情家の側面もあるその本質は変わってはいない。
なら友としてあるいは父として(もしかしたら母としても)慕うツァインドルクス=ヴァイシオンに対する思いは、当然なのかもしれない。
もっとも、受肉時の前衛ほぼガン振りガチビルドの身体能力を考えれば、スケリトル・ドラゴン相手にここまでの強化は不要なのかもしれない。
だが、例え骨の身であろうと人の身であろうと、その慎重で(時折うっかりをする)その本質は、繰り返すが変わらない。
だから、
「喜べっ! ”会心の一撃”というものをくれてやるっ!!」
両手握りに大剣イテンを構えると同時に人間が知覚できる限界を超えた速度で一気に間合いを詰め、
「ハッ!」
裂帛の呼吸と同時に、重い甲冑を纏っていることを無視するように地に足をつけたドラゴンの頭上まで跳躍!
そして、剣の性能に発動した六つの武技を融合させた大上段からの一太刀……
「秘剣《
その一太刀は、剣撃と呼ぶにはあまりにも速く、重く、威力がありすぎた……
お読みいただきありがとうございました。
魔剣のお次は、武技の重ねがけによる”秘剣”のお披露目でした(^^
もしいたら、コキュートスが小躍りしそうな
唐突ですがエ・ランテル篇は多分、次回あたりで終了。その後、ちょっとした後日譚が入るかもしれません。
本編とは全く関係ない突発思いつきネタ(笑
???:「モモンガちゃんはお父さん(?)が大好きなフレンズなんだね♪」
モモンガ:「えっ!? いや、100歳越えでそういう評価はちょっと……って君だれ? ビーストマンの亜種って訳じゃないだろうし」
???:「わたし? わたしはサーb(以後、何故かかすれて読めない