穏やかなるかなカルネ村 作:ドロップ&キック
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ダークウォリアーの複合魔剣《ドラゴンロード・タービュランス》がアンデッドの群れを割断し、イビルアイのオリジナル魔法《ハムナプトラ/吸血の砂漠》がまとめて飲み込んだ頃……
「ねえ、ゼロ……」
”ぐしゃ”
とエンリは手に持つ十文字槍のように見えなくも無い
「暇よね」
「言うなよ」
ゾンビが溢れ出てくると思いきや、久しぶりの実戦で内心は大はしゃぎでヒャッハアァァァーーーッ!!してる死の神様とその妻のあおりを受け、門から這うように出てくる討ち漏らしのアンデッドは数えるほどしかいない。
エンリの杖撃もゼロの拳打もこの程度のアンデッドなら一撃死確定、ぶっちゃけどっちか一人でも十分な気がした。
「
「そうね。本気だったら今頃、墓場どころかエ・ランテル自体が無いものね」
ゼロは禿頭を縦に振り、
「まだ討ち漏らしがある分、自重してくれてるのさ」
アンデッドの成れの果てが散乱する墓場の門前で、どこか緩い様子で杖と拳を振るう二人に、エ・ランテルの冒険者が奇妙な生き物を見る目を向けるのは、それから数分後のことだった。
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さて、宣言の通りモモンガ様は亀甲縛り……もとい。モモンガはダークウォリアー・モードでの前衛剣士縛りプレイを継続中だった。
蛇足ながらお骨様の亀甲縛りを鑑賞するより、むしろ自分が縛られたいと熱望するのが近しい女性陣の特色だろう。
特に誰がというわけではないが、より強く懇願しそうなのは王国と竜王国のロイヤル・ガールズのような気がするのは気のせいか?
某ドラなんとかちゃんは、ベクトルこそ違えどラナーと色々な意味で同レベルにあるとだけ言っておこう。
王族とはそれなりにストレスが溜まるものなのだろう。きっと。
「わかりきっていたことだけど、」
(なんか物足りないな~)
とは
なんというか
スケルトンだろうがゾンビだろうがグールだろうが一太刀でまとめて数体が斬り伏せられる。
太刀筋は全く違うが、その様子はどこか明治時代の小柄な剣客を
参考までに書いておけば、ダークウォリアーが主武装としている
基本、某三国志で無双しちゃうゲームに出てきそうな豪華な意匠で、両刃の刀身は分厚く、余裕をもって両手で握れる柄まで含めると全長は衣装を着ないお骨ボディの身長に匹敵(スケルトン状態で177cm。受肉した状態だと180cmを軽く超える)する。
そして肝心の性能は元ネタになった”倚天の剣”が「天をも貫く剣」という意味を持ち「岩を泥のように斬った」という伝承もあり、
・神聖属性
・刺突/斬撃に威力ならびクリティカル率30%上昇
・カウンター判定が成功した場合、クリティカル率100%に固定
・刺突/斬撃攻撃時に、それら80%威力の殴打属性追加ダメージが発生
・使用による磨耗/劣化無効。火焔/酸/雷/冷気に完全耐性
・上位物理攻撃無効III/上位魔法攻撃無効III(総合Lv60以下の物理/魔法攻撃を刀身で受けた場合のみ無効化できる)
・装備者Lv:無制限。魔法エンチャント上限:第10位階
というものだ。
確かにこの世界の水準なら伝説物の剣だろうが、持ち主のモモンガに言わせれば「メイスとしても盾としても使える頑丈で使い勝手のいい剣。メンテフリーで便利だし」くらいなものだ。
ついでに言えば左腰に差すサイドアームズ扱いのレイピア”セイコウ”は、総合的な武器としての水準はドッコイで元ネタの伝承に肖って斬撃特化型だったりする。
武器水準の話が出たついでに言えば、同じ刀剣類ってことならブレインの持ち刀に趣味と実益を兼ねてデータ・クリスタルをぶち込んで鍛えなおした”神刀・滅却”よりちょい上程度のランクではないだろうか?
いずれにせよユグドラシルにおいてなら格下相手ならともかく、中級以上のプレイヤーならとても同格や格上に使う装備じゃない。
少なくとも
逆に言えばその程度の装備で苦も無くクリアできてしまうのが今回のクエストだった。
まあ、ビーストマン相手でも楽勝の装備なので、当たり前と言えば当たり前なのだが……
荒れ狂う斬撃の嵐の前に、残存のアンデッド達はまるで水に砂糖が溶けてゆくようになす術も無くその数を減らしていった。
ただでさえ手に負えない剣の化け物がいるのに、更に上空からは小柄な吸血姫の直協航空支援じみた魔法空爆が振ってくるのだ。
”死の螺旋”で生み出されたアンデッド達に知性など望むべくもないが、むしろ恐怖を感じる知性が無いことが彼らにとっての救いであろう……
そう思えるほど二人は圧倒的であり、容赦が無かった。
☆☆☆
程なく特にこれと言った波乱も無く、共同墓地アンデッド掃討作戦は終了した。
多少の取り零しはあるし、それらは悉く門へと向かっているが、エンリとゼロが問題なく対処してくれることだろう。
というより、せっかく同行させたのだから少しは武勲を立てる機会を作るべきだとモモンガは考えている。
この程度の数と脅威が武勲と呼べるかどうかは疑問ではあるが。
そして、
そこに高揚感や達成感はなく、ただただその背中には「さっさと面倒な事済ませて、酒でも傾けながらキーノとイチャイチャしたいな~」と書いてあるようだったという。
お読みいただきありがとうございました。
最初の技こそ派手だったものの、最後の方はなんか淡々と駆除していたような感じの二人でした(^^
イテンもセイコウも、アイテムレア度で言うなら