穏やかなるかなカルネ村   作:ドロップ&キック
<< 前の話 次の話 >>

66 / 73
ママ、ようやくモモンガ様のバトルシーンが書けたよ(ボヘミアン感




第66話:”ドラゴンロード・タービュランス!!”

 

 

 

「「《トリプレットマジック/魔法三重化》、《マキシマイズマジック/魔法最強化》、《ペネトレートマジック/魔法抵抗難度強化》、《ワイデンマジック/魔法効果範囲拡大化》……」」

 

強化魔法の詠唱と同時にダークウォリアーの周辺には多数の光矢が出現し、イビルアイの眼前に拳大の無数の水晶が浮かんだ……

 

「《マジック・アロー/魔法の矢》!」

 

「《シャード・バックショット/結晶散弾》!」

 

その開放呪文(リリース・スペル)と同時に放たれた9本の魔法の矢と無数の水晶の散弾が、門へと殺到していたアンデッドの群へと襲い掛かり、比喩ではなく一掃したっ!!

ただし、これでも二人はアンデッドの群れを《門ごと吹き飛ばさないように》随分と気を使った魔法を使っているのだ。

その見たことも聞いたことも無い魔法の使い方に唖然とする衛兵達を尻目に、

 

 

「エンリ、ゼロ、お前達はここで街への流出を阻止せよ。できるな?」

 

「「はっ!」」

 

是非もなしだ。お館(モモンガ)様に飛べと言われれば、飛行魔法を習得していなくとも飛べませんとは言わずに「どのくらいの高さで?」と聞くのが二人に限らず七星剣だ。

 

「では妻よ。慎ましく()くとしよう」

 

とにこやかにダークウォリアーが言えば、

 

「うむ。毎度おなじみの”血塗れのヴァージンロード”だな。いや、それとも相手がアンデッドならば血塗れにはならんのか?」

 

そう見つめ合って笑うと、、

 

「《ヘイスト/加速》」

 

背中に背負った堂々たる両手持ちの大剣(トゥーハンデッド・ソード)”イテン”を右手で引き抜くなり、加速の魔法を使い”ドンッ!”と音さえも置き去りにするように再び門へ迫ろうとしていたアンデッドの群れに突貫する!

 

「武技《音速衝鎧》

 

”ヴァン!!”

 

普通の人間ではありえない加速と、それを下地に剣を振り上げる手や胴の捻りこみなどの体動を更に上乗せさせることで発生したノックバック効果もある音速衝撃波(ソニックブーム)で周囲のアンデッドを残らず薙ぎ倒し、

 

武技《真空斬》!」

 

その勢いを殺さぬまま剣を振り下ろし、不可視の真空刃(ソニックブレード)を解き放つ!

帝国にいるであろう”自称天才剣士”の武技とは比較にならぬ威力を撒き散らしながら飛ぶ不可視の巨刃……だが、まだ終わらない。

これらの必殺と言える技さえも、更なる大技を繰り出すための下地作りに過ぎないのだ。

 

「風よ収束し螺旋を描け! 《トルネード/竜巻生成》!」

 

片手から両手持ちに切り替えたイテンを再び大きく振り上げ、周囲で暴れ狂う風の残滓をかき集めて竜巻を生成、巨大な刀身にエンチャント……自然発生の竜巻でも時折起こるように、あまりにも圧縮/加速された空気中の微粒子が高速衝突し、激しく雷までも発生させた。

 

「月まで吹っ飛べ……」

 

そしてそれらを全て、

 

「複合魔剣《ドラゴンロード・タービュランス》!!」

 

音速を超える一太刀を相乗させるっ!!

 

 

 

それは言うならば、ソニックブームとソニックブレードをばら撒きながら”()()()()()伸びゆく、()()()()()()()()()()()”であった。

 

複合魔剣……二つの武技を触媒に()法と()技を組み合わせた故の()()

魔法使いのモモンガでは到達しえなかった、一世紀の時を経てもなお衰えぬ”純銀の聖騎士(たっち・みー)”への憧れ……人の身で研鑽を重ね、魔法剣士として前衛に立ち続けたダークウォリアーだからこそ辿り付けた一つの到達点であった。

まさに”修羅の一太刀”である。

 

減衰するまで進路にある全てを真空の刃で切り裂き、音速衝撃波で叩き壊し、纏う雷で麻痺させ焼き、最後は竜巻に飲み込み粉々に砕き割る……これこそが、竜王国において『一太刀で百、いや千のビーストマンを屠る』と称されたダークウォリアーの最も得意とするコンボだった。

嵐と雷をその身に纏う天空の竜王(ツァー)が如き一閃……決して”ドラゴンロード・タービュランス(竜王の乱気流)”の技名が偽りでないことを告げている。

 

そして、やはりモモンガは孝行息子のようである。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「相変わらず我が旦那様は派手好きだねー♪」

 

とコンボアタックに上機嫌なイビルアイ(キーノ)

 

(これは妻としても負けてられんゾ!)

 

「《フライ/飛行》」

 

そして彼女はふわりと夜空に幼い肢体を浮かび上がらせた。

 

モモンガが百年経っても未だ”たっち・みー”を超えられぬ存在として憧れを抱き続けてるように、イビルアイ(キーノ)にとってモモンガはこの百年、ずっと焦がれてる、ずっと追いつきたい存在だ。

無論、妻となった今でも比喩ではない”百年の恋”は継続中。

 

恋愛は成就し、相思相愛になれてもそこで終了じゃない。モモンガやキーノのように長き(とき)を生きる存在にとっては尚更だろう。

 

だから、かつての盟友であるギルド・メンバー……癖の強いカンスト・プレイヤー達との冒険譚を懐かしそうに語るモモンガの姿に、今でも嫉妬を感じるのだ。

だが、この世界にはいない……もうモモンガの思い出の中にしかいないギルメンたちに嫉妬する不毛さを、勿論彼女は理解している。

 

だが、頭で理解しているからと言って心から納得しているかと言えばそういうわけでもない。

かくも恋する乙女とは難しいものだし、恋愛感情とは理不尽なものだ。

 

他の誰よりもモモンガに愛されている自覚はある。

だが、それ以上を……もっと先を求めてしまうのもサガというものだろう。

何しろ、彼女は欲深い吸血姫なのだから。

 

だからこそ、彼女(キーノ)は”強さ”を求めた。

モモンガの背中を追うだけじゃ、守られるだけじゃ満足できない自分がいたのだから。

 

この先ずっと、平たい胸を張ってモモンガの横に居たいのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございました。

ホント今更ですが、書いてる自分でもまさか66話に至るまでモモンガ様(ダークウォリアー・モード含む)で戦闘描写が無いとは思っていませんでした(^^
いや~、長かった。

ちなみに技の元ネタは、よく衣装の参考にしているFGOではなくFSSの騎士技だったり。
100年越しのたっち・みーさんへの憧れと、オカンドラゴンへの思慕が詰まった技だったりします(笑

モモンガ様は未だ微妙に隠れ中二病で、キーノは思ったより情熱的かも?



感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。