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第100回 | 大人のための最新自動車事情

まるで“Mad Max”──1億6700万円のキャンピングカー

1990年代の日本で流行したアウトドアブームが再燃している。中心にいるのは大人の男と若い女子。消費動向調査を見ると、40〜50代の男性と20〜30代の女性の間でアウトドアへの関心が高く、特にキャンプや登山、バーベキューが人気を集める。こうしたなかで近年、富裕層が注目しているのが超豪華キャンピングカーだ。そのうちの一台、まるで軍事用の特殊車両のようなルックスで異彩を放つ、アースローマーの最新モデル『XV-HD』を紹介しよう。

室内空間は全長10m、価格は港区の億ション級のアースローマー最新モデル『XV-HD』

アメリカやオーストラリアには、一台数億円もする超豪華キャンピングカー(モーターホーム)を販売するメーカーが複数存在する。

たとえば、オーストラリアに本社を置くMarchi Mobile(マルキモービル)の『eleMMent palazzo(エレメントパラーソ)』の価格は、じつに約3億4000万円(!)。世界一高額なキャンピングカーとして知られる。大型観光バスのようなバス車両をベースに居住スペースを架装した「クラスA」と呼ばれるキャンピングカーだ。

一方、このクラスAと比べるとややコンパクトなサイズで、価格も少し低いのが、中型から大型のトラックをベースにした「クラスC」と呼ばれるタイプである。アメリカのコロラド州を拠点とするEarthroamer(アースローマー)が発表した最新モデル『XV-HD』は、このカテゴリとなる。

しかし、クラスAより小柄で安価といっても、トラック部分に架装した豪華な居住空間は全長約10m。その価格は千代田区や港区に建ち並ぶ億ション物件と同等の150万ドル(約1億6700万円)と、まさしく桁外れだ。

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ほかの豪華キャンピングカーとひと味異なる、ミリタリー感溢れる『XV-HD』の外観

特に、アースローマー『XV-HD』がほかの豪華キャンピングカーとひと味異なるのは、そのミリタリーテイスト溢れる外観である。

車名の「XV」は「Expedition Vehicle(エクスペディション・ビークル)」を意味し、ボディ側面に描かれた「ユーラシア大陸」がどこまでも遠征することのできる可能性を示唆する。なんともいかついルックスは、映画『マッドマックス』シリーズに出てきそうな趣で、あるいは未確認飛行物体(UFO)と接触するために米国防総省が極秘で製作した特殊車両といったところだろうか。

実際、アメリカの映画では、1977年に公開されたスティーブン・スピルバーグの『未知との遭遇』、2011年公開の『宇宙人ポール』など、未確認飛行物体と接近遭遇するときにキャンピングカーがよく登場する。アメリカにおけるキャンピングカーは、未知を探求するためのツールでもあるのだ。

ベース車両は、フォード『Fシリーズ』のヘビーデューティーラインに連なるフルサイズトラックの『F-750』。パワーユニットは6.7L V8ターボディーゼルエンジンで、330馬力を発揮し、駆動方式は4WDだ。信じられないことに、燃料タンクの容量は115gal、約435Lもあるという。当然、通常の『F-750』から足回りを重点的に強化・アップグレードされている。

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6人が余裕で座れるソファ、キングサイズのベッド、フルバスルームまで装備する室内

しかし、見た目は特殊車両のようでも、室内はまぎれもなく超豪華キャンピングカーそのものだ。内装は、ウッド、レザー、大理石といった上質な素材でまとめられ、外観とは打って変わったラグジュアリーで落ち着いた雰囲気が横溢する。

居住スペースには、6人が余裕で座ることのできるロングソファが設置されたリビングに、キングサイズと思われる寝心地のよさそうなベッドが設えられたベッドルーム。避暑地の別荘としても十分に使えそうな豪華な空間だ。

装備面では、IHコンロとシンクの機能的なキッチンに、シャワールームが別となったフルバスルームまで装備。しかし、約946Lの飲料水タンクに約473Lの下水タンクも備えるので、水の使用に気を遣う必要はまったくない。

ほかにも、洗濯乾燥機、床暖房に加え、ボーズ製のサラウンド・サウンド・システムまで装備される。通常のクルマならバッテリーが気になるところだが、『XV-HD』は豪華キャンピングカーらしく、電力供給用に2100Wの太陽光発電システムと車両駆動用のエンジン動力で駆動させるPTO駆動油圧発電機を装備。このほか、容量2万Whのリチウムイオン電池バンクも備える。

価格は、前述したように日本円で約1億6700万円。予約には37万5000ドル(約4230万円)の申込み準備金が必要で、今予約注文すると2018年末から2019年初めぐらいには納車されるそうだ。

価格もサイズも室内も、まるで「動くスイートルーム」のような超豪華キャンピングカー。狭い日本で使うのは現実的とはいえないが、アウトドアや旅が好きな男性なら、「将来、こんなキャンピングカーに乗ってユーラシア大陸を旅したい」と夢想してしまうに違いない。

関連記事:クルマに住む理由とは?キャンピングカーだけじゃない?関連記事:日本最大のキャンピングカーのイベント「ジャパンキャンピングカーショー2018」            

Text by Katsutoshi Miyamoto

Photo by (C)Earthroamer

Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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第130回 | 大人のための最新自動車事情

エモーションEV──バタフライドアの電動スポーツカー

ポルシェ初の量産EVスポーツカーとして話題の『タイカン』は今年生産を開始し、驚異的なスペックを誇るテスラのスーパースポーツカー『ロードスター』も2020年の発売を予定している。EVスポーツカーは、いま旬を迎えつつあるカテゴリだ。そうしたなか、アメリカのフィスカーがCES 2019で初公開した『エモーションEV』が予約受付を開始した。バタフライ4ドアが特徴の高級フルEVスポーツは、いったいどんなクルマなのか。

BMW『Z8』やアストンマーチン『DB9』のデザイナーが手がけた高級スポーツEV

フィスカー『エモーションEV』は、ヘンリック・フィスカー氏の手によるエレガントなデザインの高級EVスポーツカーだ。フィスカー氏はデンマーク出身の著名なカーデザイナー。BMWに在籍していた当時に『Z8』、EVコンセプトモデルの『E1』などを手がけ、アストンマーチンでは『DB9』『DBS』『ヴァンテージ』のデザインを担当した。

その後、独立してメルセデス・ベンツやBMWをベースにしたコンプリートカーやハイブリッドエンジン搭載のオリジナルモデルを製作するが、じつは、テスラで『ロードスター』『モデルS』の2モデルの開発に参加したこともあるようだ。そのせいというわけではないだろうが、『エモーションEV』のデザインはどこかテスラに似た雰囲気もある。

ともあれ、スタイリングは「美しい」のひと言に尽きる。とりわけ特徴的なのは、開くとドア側面が蝶の羽のような形に見える「バタフライ4ドア」だ。同じ上部に向かって開くドアでも、縦方向に開くシザースドアと違い、バタフライドアは外側が斜め前方に、内側が下向きに開く。駐車スペースに苦労する日本ではなかなかお目にかかれないドアだ。

バッテリーはリチウムイオンではなく炭素素材コンデンサ。多くの先端技術を搭載

面白いのは、バッテリーに多くのEVに採用されるリチウムイオンではなく、炭素素材コンデンサのグラフェンスーパーキャパシタを採用したことだ(全個体充電池搭載モデルもラインナップ)。1回の充電あたりの最大走行距離は約640km。急速充電の「UltraCharger」に対応しており、9分間の充電で約205km分の容量までチャージ可能という。

EVパワートレインは最高出力700psを発生し、最高速度は260km/h。このスペックを見ると、テスラ『ロードスター』のようなEVスーパースポーツではなく、あくまでスポーティカーという位置づけなのだろう。全長5085×全幅2015×全高1465mmのボディは軽量のカーボンファイバーとアルミニウムで構成され、駆動方式は四輪駆動だ。

このほか、ADAS(先進運転支援システム)としてクアナジー製LIDARセンサーを5個搭載し、コネクテッドなどのEVスポーツカーらしいさまざまな先端技術を装備する。

『エモーションEV』の価格は1440万円。予約も開始され今年中にデリバリー予定

前述の通り、『エモーションEV』はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルと全個体充電池搭載モデルの2モデルを設定。価格はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルが1440万円(税別)、全個体充電池搭載モデルの価格は未定だ。すでに日本でもデロリアン・モーター・カンパニーを正規代理店に予約受付を開始しており、グラフェンスーパーキャパシタは今年中の納車を予定している。ただし、予約金として約24万円が必要だ。

最近では東京都心部などでテスラをよく見かけるようになり、もはやEVは現実的な乗り物になりつつある。たしかに価格は1000万円オーバーと高価。しかし、この美しいルックスなら、他人と違うクルマに乗りたいという欲求を満たすことができるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fisker, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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