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第26回 | 大人ライダー向けのバイク

人気シリーズの新旗艦──Ducatiスクランブラー1100

イタリア・ミラノで毎年11月上旬に開催されるEICMA(ミラノモーターサイクルショー)は、世界最大級のバイク・スクーター専門見本市だ。地元のドゥカティは今回、4機種のニューモデルを発表。最も注目を集めたのは、ブランド初の量産V4エンジンを搭載した『パニガーレV4』だったが、それに負けず劣らず反響が大きかったのが『スクランブラー1100』である。1079ccの空冷L型2気筒エンジンを搭載した、スクランブラーシリーズのトップモデルだ。

使い勝手が良いストリートランナーのネイキッドバイク『スクランブラー』シリーズ

2015年に登場した『スクランブラー』シリーズは、より自由なスタイルとスタンスでバイクを愉しむことをコンセプトに開発されモデルだ。ほかのドゥカティモデルと違い、横並びのファミリーではなく、「ドゥカティ スクランブラー」というブランドに位置付けられているのも特徴である。

これまで主軸とされてきたのは800ccモデル。すでにヨーロッパにおける評判は上々だ。

『スクランブラー』は、スーパースポーツのようにカウリングへのダメージを気にする必要がなく、視界の広いライディングポジション、そしてハイトの高いタイヤとストロークのあるサスペンションにより、荒れた路面や縁石も楽々と乗り越えることができる。クラシカルなスタイリングとは対照的な、こうしたシティランでの使い勝手の良さが評価されているのだ。

そこへ登場したのが、さらなるトルクとパワーを上乗せし、トップモデルとしての高い質感を備えた『スクランブラー1100』シリーズである。注目を集めないはずがない。

ダッシュ力を重視した1079cc L型2気筒エンジン、3種が選べるドライビングモード

搭載されるのは空冷1079ccのL型2気筒エンジン。デスモドロミックの2バルブで、最高出力63kw(86ps)/7500rpm、最大トルクの88Nmは4750rpmで発生するという、いかにもダッシュ力を重視したチューニングが施されている。

丸みを帯びた車体はシリーズ共通のイメージだが、このパワーを抱えるフレームは専用設計で、800ccモデルとの共通性はない。パワフルなユニットを操るために、トラクションコントロール、ボッシュ製のコーナリングABS、セレクト式ライディングモードなどの電子制御デバイスが組み込まれた。

特に「アクティブ」「ジャーニー(ツーリング)」「シティ」と3種が選べるライディングモードは、『スクランブラー1100』をより愉しむための有効な手段となりそうだ。

ドゥカティ『スクランブラー1100』は、通常モデル、豪華装備、走り重視の3モデル

スタイリングはDRL(デイタイム・ランニングライト)を採用した丸形ヘッドライトなど、従来と同じくひと目で『スクランブラー』とわかるものだが、変更された点もある。なかでも、最も目を惹くのは2-1-2と左右に振り分けられた野太いサイレンサーだ。

800ccと400ccモデルではショートのダウンだったが、新たに採用された複雑な取り回しの「ミドルアップ」とでも呼びたくなるマフラーは、1100ccを主張するような迫力がある。全体では軽快なイメージの『スクランブラー』が、マフラーの存在感によってマッスルイメージに書き換えられている感じだ。

グレードは3タイプ。スタンダードな『スクランブラー1100』、クローム仕上げのエキゾーストパイプに上質なアルミフェンダーなどを備えた豪華装備の『スクランブラー1100スペシャル』、そして走りを重視した『スクランブラー1100スポーツ』だ。

3モデルのフレームやエンジンは共通だが、大きな違いはサスペンションにある。『スクランブラー1100』と『スクランブラー1100スペシャル』は、フロントにマルゾッキ製45mm倒立フォーク、リアにKYB製ショック。『スクランブラー1100スポーツ』には、フロントに48mm倒立フォーク、前後ともオーリンズ製のフルアジャスタブル式が採用された。

ディメンション的には3モデルともに変わらず、ボディサイズやキャスターアングルも同じ。ただし、スタンダードモデルだけがやや高さのあるハンドルバーを備えている。ライディングポジションとしてはこちらのほうがスクランブラーらしいかもしれない。

また、『スクランブラー1100スペシャル』のみにワイヤースポークが採用されているのも面白いが、この辺りはユーザーの選択肢を広げる配慮だろう。

ワイルドな美女が『スクランブラー1100』で銀行強盗するスペシャルムービーも必見

ドゥカティは『スクランブラー1100』の発表に際し、『The Getaway』というタイトルの手の込んだPVを製作している(下のリンクの動画)。

アメリカ国内と思われる場所を舞台に、ワイルドな美女2人と男が『スクランブラー1100』とシボレー『カマロ』を駆って銀行強盗らしきことを行い、パトカーに追われる──というストーリー性のある動画だ。

「To be continued(続く)」とあるので続編があるのかもしれないが、それはさておき、『スクランブラー1100』の走行フィールやコンパクトさは伝わってくる。特に、加速時にドライブチェーンが暴れる音などは、なかなかの臨場感だ。ネイキッドバイクのひとつの方向性が示されているようにも思える。

車両価格は、『スクランブラー1100』が158万4000円、『スクランブラー1100スペシャル』が174万8000円、『スクランブラー1100スポーツ』183万5000円(いずれも税込み)。日本には2018年7月に導入される予定だ。

Text by Koji Okamura

Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A

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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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